ブリストル/東京拠点のARエンジン開発スタートアップKudan、博報堂と業務提携——独自技術の広告分野への適用を強化

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イギリスのブリストルと東京に拠点を置き、AR(拡張現実)エンジンの開発・販売を行うスタートアップ Kudan は18日、博報堂および博報堂プロダクツと業務提携すると発表した。これを受けて、博報堂および博報堂プロダクツ(以下、博報堂と略す)は、VR(仮想現実)と AR に特化した専門ファクトリ「hakuhodo-VRAR」を設立、両社のクライアントに対して、VR/AR を活用した広告を提案していく。

Kudan は2011年の設立。「SLAM(simultaneous localization and mapping)」という、独自の位置測距技術を開発している。一般的な AR では、AR アプリがカメラから取り込んだ映像の中で位置関係を認識するために、マーカーが使われることが多い。マーカーを使わない場合であっても、被写体との距離や位置関係を測るためには、人間の眼の構造や 3D カメラがそうであるように複数の視点が必要になる。しかし、Kudan の開発した SLAM のエンジンは、映像内の複数の特定点をマッピングすることにより、単眼カメラで空間の位置関係を把握するため、カメラが一方向に一つした備わっていないスマートフォンやタブレットでも、さまざまな AR アプリケーションの実装が可能になる。

Kudan は今年7月に、香港やシンガポールの個人投資家(香港やシンガポール在住の日本人投資家を含む)から、総額約2.03億円を調達している。同社の中長期的な視点で技術開発を進めたいとの意図から、今のところ、VC は彼らの Kudan の株主に連ねていない。

今回の博報堂との業務提携においても一切の資本関係は発生せず、Kudan が技術を提供し、それを使った広告における応用例の企画や営業を博報堂が担う、というスキームのようだ。Kudan では、同社の AR 技術や SLAM エンジンを活用してもらえる主要な業界としてゲーム・教育産業などを挙げているが、広告分野で博報堂と組むことにより、日本の内外でのパブリック・アウェアネスを一気に高めたいと考えている。

我々の技術を、お客さんはまだどう使っていいかわからない。どう使えるのかを目に見える形にしていくことが重要。(Kudan 取締役 CFO の飯塚健氏)

とはいえ、いったい、Kudan の SLAM エンジンを使って何ができるのか、ということなのだが、百聞は一見にしかずということで、東京のオフィスで飯塚氏らに、SLAM エンジンを採用した、いくつかのアプリをデモしてもらったので、その模様のビデオを以下に貼っておく。

今年8月に東京の上智大学で開催された AdTech International では、創業者で CEO の大野智弘氏がスタートアップのグローバル化をテーマにしたパネルディスカッションに登壇。スタートアップをする上で必ずしも日本が最適の場所ということはなく、Kudan の場合は、研究開発を推進する場所としてイギリスのブリストルを選んだ経緯を語っていた。

同社は、バックオフィスと営業機能を担う拠点として東京にオフィスを持っているが、ターゲットとする市場は、日本のみならず、北米・欧州・東南アジアなど多岐にわたる。マーカー不要、単眼カメラで使える AR という強みを武器に、特に需要が大きく競合技術との差別化がしやすい自動車業界での利用に期待を持っているようだ。

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Kudan 創業者で CEO の大野智弘氏(2016年8月、上智大学で開催された AdTech International で撮影)

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