通信クラウドのソラコムがKDDIにコアシステム開放で「KDDI IoT コネクトAir」を提供開始へ、その他キャリアやMVNOへの展開は「未定」

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モバイル通信のクラウド化サービスを展開するソラコムとKDDIは10月19日、両社で共同開発したInternet of Things(以下、IoT)向けのモバイル通信回線サービス「KDDI IoT コネクトAir」を2016年12月以降に開始すると発表した。

「KDDI IoT コネクトAir」は通信用SIMカード単体での提供サービスで、IoT関連デバイス、M2M(機械通信)などへの利用を主目的として提供される。また、通信SIMの管理用サービスコントロールパネルも提供されるので、運用者が通信の速度変更や監視、SIMの開始や停止などの操作をすることができるようになる。これらのコントロールシステムはソラコムがこれまで提供してきたサービスのコアエンジン「SORACOM vConnec」をKDDIに対して提供することで実現した。

基本料金は1日あたり10円の基本料(SIM停止時は5円)がかかる他、データ通信速度に応じて1MBあたり0.2円から0.8円までの通信料が発生する。その他にも契約時に事務手数料としてSIM1枚あたり1500円(SIM込み)がかかる。なお、音声通話には対応していない。

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ソラコムが開始1年で整備したIoT向け通信プラットフォーム

ソラコムが驚きの展開を開始した。

元々、SORACOM Airが提供開始された際、彼らをMVNOとして契約(L2卸契約)したのがNTTドコモだった。なので、ソラコムの提供サービスを使う場合は国内ではドコモ回線がそのベースとなっている。ただ、ソラコムのシステムは全てAWS上で稼働しているということもあり、理論上は世界のどこでもサービス展開が可能な状態になっている。事実、海外展開についてはどのキャリアと契約しているのかは開示されていないものの、既に開始されている状況だ。

ただ、それをまさか国内の別キャリアで開始するとは。さすがソラコム。

同社代表取締役の玉川憲氏によれば、今回の展開はソラコムのコアエンジンである「SORACOM vConnec」をKDDIに提供することで実現したもので、ややユーザーからの見え方が変わるという。どういうことかというと、これまではNTTドコモ回線を「借りて」ソラコムがIoT向け回線サービスを提供してきたが、今回はKDDIがサービス提供者として前面に出てくることになる。

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こういったIoTデバイス提供事業者はサービスによってKDDIを選択可能になる

これにより、提供サービスの内容が変更になる可能性がでてくる。通信料についても独自の料金体系を設定することもできるし、KDDIのアセットを活用して各種サービスと連携させることも可能になる。例えば既に事例のある橋や道路といった公共設備の監視パッケージを作って、専業の事業者に対して特別な通信プランを組むことも考えられる。

ひとつ気になるのがソラコムとのバッティングだ。玉川氏の話では最終的にはソラコムのコアを使っていることには変わりがなく、サービス提供者としてのソラコムかKDDIかを選択するだけで、特に問題になるようなことはないと説明していた。

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ソラコムがKDDIに提供した虎の子の「vCoonec Core」

であれば、だ。ソラコムはもう一つのキャリア、いや、MVNO事業者にだってこのコアを提供できるはずである。そもそもモバイル通信のクラウド化、つまりモバイル回線をAWSのように偏在的に使えるようにしようというコンセプトが彼らなのである。全キャリア、MVNO事業者にこれを提供し、多種多様なサービスを独自に提供してもらった方が理念にあっている。

しかしこの件の回答は「現時点では携帯通信事業者様およびMVNO事業者への展開は未定」で、さらにKDDIとの契約が独占かどうかについても「個別契約内容については回答できない」ということだった。

もしかしたら両社には一定期間の協力体制があるのかもしれない(そもそもドコモとは卸契約があるのでそこについても複雑ではある)が、ここまでたった1年で一気に突っ走ってきたソラコムだから油断はできない。

 

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