フォトグラファー予約サービスでウェディング撮影を変える、Famarry代表・藤井悠夏氏に聞く【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2016.10.2

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Tim Romero 氏

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏、翻訳者の堀まどか氏、日本語訳初出のフジサンケイ ビジネスアイの許可を得て転載したものです。

Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


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ファマリー創業者の藤井悠夏氏

写真撮影の予約サービスを展開する「Famarry(ファマリー)」を、創業者である藤井悠夏氏は世界で最も幸せな企業と呼ぶ。顧客層が結婚を間近に控えたカップルであることを考えれば、本当にそうなのかもしれない。

幸せな企業の裏には、日本のウェディング業界を長年牛耳ってきた結婚式場とフォトスタジオの連合をディスラプトする攻撃的な計画がある。テクノロジーと人口構成の変化が高い壁に小さな割れ目を入れ、ファマリーはそれを足掛かりに写真撮影の業界全体を良い方向へ変革しようと意気込む。

どんなサービスですか。

一言でいえば、ウェディングフォトを撮影するフォトグラファーを検索して仕事を依頼できる、クラウドソーシングサービスです。日本では現在約65万組のカップルが結婚しますが、その約半数が、結婚式当日とは別に写真撮影をするいわゆる前撮りをおこなっています。それが、私たちが目を付けた市場です。

ロマンチックな場所に行って美しい風景を背に、写真を撮るんですね。

そうです。結婚式当日に撮影を担当するフォトグラファーは結婚式場によって手配され、カップルに選択肢はないのが普通です。しかし、前撮りに関しては友達からの紹介や口コミで決めたり、インターネットで検索したりする人が多くなっています。

結婚を控えたカップルに対するマーケティングの方法は。

インスタグラムを活用しています。写真共有専用のSNSアプリなので、私たちの用途に完璧に合っています。プロモーションももちろんおこないますが、ユーザーのほとんどが撮影した写真をみんなに見せたいと思っているので、インスタグラムが現代版口コミとして機能します。ファマリーのサービスを知ってもらいやすいですし、カップルが依頼したいフォトグラファーを見つけるのも簡単です。

ほとんどの人が人生に一度しか結婚しませんから、この事業モデルでは、リピーターになる顧客が極端に少ないことが心配ではありませんか。常に新規顧客を開拓しなければなりません。

それについては、計画があります。結婚式は家族としてのスタートラインですから、何年かすればユーザーは赤ちゃんの写真や家族の記念写真を撮りたいと思うのが自然です。将来的には、ウェディングフォト以外の写真撮影にも対応し、ユーザーの人生と共に育っていくサービスにしようと考えています。

国内の写真撮影業界は変化の時を迎えているとか。

はい。プロの写真撮影へのアクセスはかつてより容易になっています。高品質のカメラ機材は非常に高価なものでしたが、今はそれほどでもありません。機材を一通り揃えた、腕の良いフォトグラファーがこれまでとは比べ物にならないほど増えています。

また、最近まで、ウェディングフォトに関することはすべてフォトスタジオが決めるのが普通でした。標準的な背景のセットがいくつかあって、決められたポーズが何種類かあり、顧客であるカップルはほとんど言われる通りに撮影ポーズをとっていたのです。

しかし、写真を共有する機会が増えた今、人々の写真の捉え方は変わっています。自分たちの性格や好みに合う撮影スタイルや写真の出来上がりを求める人が増えています。

業界では独立傾向が強まっているのでしょうか。

そうなってくるはずです。フォトグラファーが独立して仕事をしやすい環境になってきているので、私たちはそうしたフォトグラファーと顧客がマッチできるようにしています。近い将来、フォトスタジオは今までと同じ事業モデルで存続することは難しくなってくると思います。フリーランスのフォトグラファーが、スタジオ撮影よりも安く、撮られる人の性格やペースに合った撮影体験と仕上がりの良い写真を提供できるようになっているからです。

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Image credit: Famarry

ブライダル市場をターゲットにしたのはなぜですか。高齢化の進む日本では特に魅力的な市場ではないと思いますが。

私はリクルートに入社後、結婚情報誌の営業を担当していたので、そこでウェディング業界・ブライダル市場について学ぶことができました。退社後ベトナムで、結婚情報サイトの立ち上げに携わった後、シンガポールで日系ブライダル企業の事業支援やコンサルティングをおこない、日本でのウェディングフォト撮影を希望するシンガポール人に提携企業を紹介するようになりました。私が一番良く知っている市場を最初のターゲットにしました。

高齢化によって全体的な市場規模は年々縮小しているかもしれませんが、それでも巨大な市場です。長年変化の少なかった市場ですので、私たちにはディスラプトのチャンスがあります。市場は成長していませんが、そのため多くの企業が海外に活路を見出そうとしています。国内でイノベーションを起こせば、私たちにとってはまだ大きな市場が残されていると思います。

女性起業家であることで仕事がやりやすく、あるいは難しくなると思いますか。

どちらも少しあると思います。広報の観点から言えば、人と違うことで注目を集めることはできますが、色々な契約締結がやりにくくなる可能性はあります。スタートアップでは、自分たちの持っている強みとも弱みとも付き合っていくしかありません。ですからあまり考えてはいませんね。でも、ファマリーの場合は顧客のほとんどが女性なので、彼女たちの気持ちに寄り添いやすいのは強みかもしれません。

顧客はカップルなのでは。

そうですが、結婚式や前撮りについて決定権を持つのは、一般的に女性です。その後、赤ちゃんや家族写真の撮影についても夫よりは妻が率先して決めることが多いと思います。

起業・経営してみて一番驚いたことは。

自分で事業を運営することがどれほど難しいか、そしてどれほど楽しいかということです。大変だろうとは思っていましたが、実際にやってみなければ本当の大変さは分からないということでしょうか。不平を言っているのではなくて、予想していたよりも大変だったのです。

同時に、スタッフやユーザーとの関わりを私自身がどれほど楽しんでいるかということにも気付き、驚きました。本当に幸せなビジネスです。毎日、幸せそうなユーザーの声が聞けて、私たちのサービスに満足していることを知ると励みになります。

人生で最も幸せな時を過ごしている人たちのための仕事ですから、そんなカップルと毎日関わることでスタッフの皆さんの雰囲気も良くなるのでしょうね。

その通りです。フォトグラファーと一緒に仕事ができるのもとても幸せなことです。彼らは芸術家であり、カップルが自分の写真を気に入って担当フォトグラファーとして選んだことを喜んでいます。才能あふれるフォトグラファーをもっと支援していきたいです。私たちはとても良いものを生み出していると感じています。

 


ファマリーは、破壊的なビジネスが、既存の事業モデルに対して有利なことを示す教科書的な事例だ。ファマリーによって、写真撮影の費用は低下し、典型的なこれまでのフォトスタジオよりも予約から撮影までのプロセスの柔軟性が格段に増した。かといって写真の質が落ちるわけではなく、出来上がりの満足度は高くなると考えられる。既存のビジネスはこれまでのやり方を素早く変えるか、撤退するかの選択を迫られることになるだろう。

藤井氏率いるファマリーには成長を期待するが、同時に幸せな企業であり続けてほしいものだ。

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