ソーシャルカスタマーサービスとは、ソーシャルメディアを使ったカスタマーサービスを意味し、今日の物言う消費者に対する特効薬として歓迎されている。このシステムでは自動化されたチャットボットがツイートや投稿を送信し、顧客と実際の顧客相談窓口をつないでいる。
このアイデアは単純に思えるかもしれないが、モバイルインターネット利用がアジア太平洋各国において急速に人気となったため、カスタマーサービスは、オンラインで寄せられた複雑な内容のフィードバックに返答するために企業全体の努力が必要になっている。
ブランドに関する無数のやり取りがオンラインのあちこちで行われている。これまでは公の意見が突発的に巻き起こったとしても束の間で、ブランドセーフティはちょっとした懸念材料という程度だった。デジタルカスタマーサービスチームは、カスタマーエクスペリエンスがすべての部門にわたって問題の中心とならない限りは、一度巻き起こってしまった問題にうまく対処したり未然に防いだりするために単独でスケールすることはできないだろう。
成熟した企業においては特に、オンラインカスタマーサービスのエコシステムに素早く対応するためソーシャルメディア部門は分散化する必要がある。各役割は以下のように分けられるだろう。意見を聞く、適切な部署へフィードバックを転送する、顧客関係の管理、問題拡大に対する広報、従業員教育、そしてデータやメールの分析である。
全員の問題にする
ブランドからの返答が遅かったり、他のチャネルへ回されたりすることはカスタマーエクスペリエンスとしては最も好ましくないものであり、誰も良しとしないだろう。正しい返答と顧客をつなぐ鍵となるのは、現時点では社内ソーシャルツールを使って問い合わせや問題を社内にいる適切な部署に転送することである。
これは例えばエンジニア、カスタマーサービス、広報、営業、マーケティングあるいは IT 部門などに当てはまる。そのためにはソーシャルカスタマーサービスのやり取りに各部門で決められたメンバーが関わることが求められる。
ソーシャルプラットフォームマネジメントツールによって企業全体がカスタマーサービスを統合すれば比較的費用を抑えることができるため、この統合は時間を投資する価値が確実にある。
非常に優れたカスタマーサービスはこれまで常に収益要素としては見落とされてきた。新たな顧客の獲得は、現在の顧客の維持よりも5倍~25倍程度コストがかかる。ブランド認知が積極的に高まるため、顧客維持は収益を見込める要素となっている。
さらに、ソーシャルメディアを使って一つのチャネルから複数のチャネルへ顧客の問題に対応することによって、企業側は電話や e メールといったチャネルよりもコストを抑えることができる。事実、Nielson の調査によると、「30%の顧客が企業から電話で連絡をもらうよりもソーシャルメディアを使ったカスタマーサービスの方を好む」という。
オープンにする
シームレスなコミュニケーションはすべて消費者の立場に立って考えるかどうかにかかっている。例えばオムニチャネルのサービスはエンゲージメントをシンプルなものにしている。担当者と早く話すことができると、Twitter でサービスの不満が投稿され拡散してしまう可能性は少なくなる。現在は「自分が一番、早く自分を見て」世代のため、顧客はポジティブかネガティブかどうか関係なく、ともかく自分の経験をソーシャルメディアを使って共有することをためらわない。
しかし、問題の火消しをしたりテンプレートとして用意した返答をしたりするためだけにソーシャルメディアを利用すべきではない。問題を未然に防ぐためにはソーシャルメディアのやり取りに常に耳を傾けるべきである。
ソーシャルの利点は、既存の顧客とやり取りするためにシームレスなチャネルであるということだ。キャンペーンメッセージやプロモーション、あるいは製品を顧客向けに改良するため常に洗練させていくことができるソーシャルメディアのデータを利用する価値を考えてみよう。
世論の動きに注意する
Herschel のケースを見てみよう。トレンドを常に取り入れたバックパックブランドである同社は、カスタマーサービスをソーシャルメディアに移行することによってカスタマーサービス満足度を60%向上させた。また、API を備えたソーシャルツールを使ってカスタマーサービスを管理し、CRM プラットフォームに統合することができた。
マルチチャネルを使ったアプローチで非常に優れたカスタマーサービスに関するニュースが素早く伝わった。
同様に Instagram、Twitter、Pinterest や Facebook の Herschel フォロワーらの意見を聞くことによって、スタッフはビジュアルコンテンツをファン好みのものに変えることができた。
Brandwatch のような消費者インサイトツールによって、価値あるカスタマーフィードバックを集めたり、マーケットプレイスに影響を与えるようなトレンドを発見したりできる。この方法によって、企業は単純に製品情報を投稿する代わりに消費者のニーズに応えることができるようになる。良質なカスタマーサービスは強力なコンテンツマーケティングツールとなり得る。
バリアをなくして機敏なシステムを構築
IT、エンジニアリング、教育、広報のスペシャリストをカスタマーリレーションプラットフォームに組み入れることで、顧客が望む魅力的な対応をしたらベストだろう。
企業内で業務を独立化させるのではなく、ソーシャルメディアおよびサービスを企業全体のビジネスにすることによって、競合企業を押しのける機敏なシステムを持ち合わせた企業となるだろう。リソースを最大限活用し、ハッピーな顧客と長期的な関係を築いていこう。
【via Tech in Asia】 @TechinAsia
BRIDGE Members
BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。- 会員限定記事・毎月3本
- コミュニティDiscord招待