フランスは「グローバルAIハブ都市」になれるか? 人材と資金を自国に集めるための挑戦

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Image Credit: ISAI/Paul Strachman
Image Credit: ISAI/Paul Strachman

人工知能・機械学習のスタートアップの規模と資金調達の状況に関しては、米国が圧倒的にトップを走っている。欧州に関していえば、ロンドンがAIのハブであるという見方がされている。

2014年の1月から2016年の10月まで、英国の111の人工知能関連のスタートアップが合計で3億4200万ドルをベンチャーキャピタルから資金調達している。AI関連のエグジットは8件で、その額の規模は合わせて9億ドルであるという。

2014年1月にはGoogleがロンドン拠点のDeepMindを買収した。この大ニュースは英国の機械学習・AIシーンに光を当てた。DeepMindのAIテクノロジーは、既にGoogleの多くの製品に取り込まれている。

フランスの同様の数字を比較してみると、同期間でフランスでは33のAI関連の会社が1億800万ドルを調達した。2200万ドル相当の3件のエグジットもある。だが、資金調達とエグジットの90パーセントが米国で起きている。

とはいえ、フランスは完全に見えない存在というわけではない。昨年、FacebookはパリにAI研究所をオープンすることを発表した。「フランスは世界でも最強レベルののAI研究コミュニティを有しています。私たちの新チームの拠点として理想だと考えました」とマーク・ザッカーバーグは当時述べている。

Facebookはそれ以前にも、2013年にAI研究グループのディレクターにフランス育ちのニューヨーク大学教授、Yann LeCunを採用している。また、2015年にパロアルト拠点のWit.aiを買収したが、この自然言語処理スタートアップはパリのエコール・ポリテクニークを卒業した3人のフランス人によって立ち上げられ、のちにFacebookのMessenger上のチャットボットプラットフォームの核となる部分を築いた。

こうした事実は、フランスのチャンスと挑戦を描いている。つまり、優秀な人材は豊富であるものの、多くが米国や英国へとわたってしまうという点だ。パリの多くのスタートアップもまた、本社を国外に移しはじめている。

だからこそ、フランスのAIと機械学習シーンに関してはまだ十分に理解されていないとPaul Strachman氏はいう。ベンチャーキャピタルのパートナーで、フランス生まれ、現在はニューヨークに拠点を置くStrachman氏は、先日「フランスはAI」という2日間のカンファレンスとワークショップをパリで開催した。

Paul Strachman of ISAI presents at the France Is AI conference.
上:カンファレンス「France Is AI」でプレゼンをするPaul Strachman氏

そのイベントで、Strachman氏はフランスの強みを並べた。

数多くのフランスの大学や研究機関がすばらしい成果と卒業生を出していること、たとえばフランス国立情報学自動制御研究所では、8つの研究センターにわたって160ものプロジェクトがAIに重点をおいていることなどだ。

その結果大企業の注目も集まり、たとえば、日本の楽天はフランスでAI研究センターをオープンした。4000名ものメンバーを有する「パリ機械学習グループ」というミートアップも生まれている。

とはいえ、アカデミア以外の場所では、そこまで多くのことが起きていない。多くのフランスの学術界のコミュニティは産業界と距離を置きたがる。シリコンバレーとスタンフォード大学の密接なつながりは、ここでは生まれにくいのだ。産業界で働きたい卒業生は、Google、Twitter、Salesforceといった場所に採用される。

とはいえ、この点に関しても変化が起きているという。Strachman氏は、フランスの医療、自律走行車、コンシューマの分野といった多様な業界で180ものAI関連スタートアップが事業をつくっているという。

Strachman氏は、こうした変化が少しずつフランスの評判の確立につながることを期待している。それはエゴや母国に対するプライドによるものではないと彼はいう。より多くの国際的なVCが、フランスがAIのポテンシャルが高いとみなせば、より多くの資金がグローバルレベルで勝負をするために必要なリソースを得るのに必死になっているスタートアップに注がれるだろうと期待するからだ。

「私が話したこの領域の起業家たちは、みんな本当に大きな夢を描いています。もっと多くのVCがフランスとAIの強みを理解してくれれば、彼らの資金調達も楽になるでしょう。外部による認識を少しずつ変えていく必要があるのです」。

こちらの記事は抄訳です。全文はこちらからご覧ください。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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