野菜の生産流通・販売をディスラプトするアグリゲート、全農などから数千万円を資金調達——都市部で直営青果店・惣菜デリカ店の展開に注力

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2016.12.26

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アグリゲートのチームメンバー(前方右から二人目が、代表の左今克憲氏)

東京に拠点を置き、野菜の生産・流通・販売を一気通貫で提供するスタートアップ、アグリゲートは26日、JA 全農(全国農業協同組合連合会)などから資金調達を実施したことを明らかにした。調達規模は開示されていないが数千万円程度とみられる。このラウンドには、日本の個人投資家2名も参加しているが、氏名は開示されていない。今回の調達は、アグリゲートにとって、2016年8月に実施した、エス・エム・エス(東証:2175)創業者の諸藤周平氏や、エニグモ(東証:3665)やグルーポン・ジャパンの元 CFO 松田竹生氏らが運営するリープラからの数千万円の調達に続くものだ。JA 全農によるスタートアップへの投資としては、オフィス向け置き野菜サービス「OFFICE DE YASAI」を展開する KOMPEITO に続くものとなる。

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アグリゲートは、東京農工大学農学部、インテリジェンス出身の左今克憲(さこんよしのり)氏が2010年に設立。同社は、農業や野菜に関わる、販売・生産流通・教育・地域活性の4つの事業を経営の柱としている。アパレル業界の生産から販売まで一気通貫で提供する SPA(specialty store retailer of private label apparel)になぞらえ、そのコンセプトを食品流通業界へと移植した SPF(specialty store retailer of private label food)として自社の位置付けを説明している。

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旬八青果店

その名の通り、生産流通機能としては自社農場を運営するほか、仕入・卸・物流インテグレーション機能を持ち、販売機能としては、東京・品川区、港区、目黒区、渋谷区など全国的にも可処分所得が高いとされる城南エリアを中心に、直営の八百屋「旬八青果店」を展開している。これらの組み合わせにより、生産者の情報や食べ方の提案を含めた産地直送の〝こだわり野菜〟の接客販売のほか、通常は流通にの乗る前の段階で廃棄されてしまう、見た目はいびつでも味の良い規格外野菜の販売が可能になる。

日本国内で年間作られる農作物3兆円のうち、品質上何ら問題ないのに、規格外ということだけで破棄される野菜は 30% に上ると言われる。満額では計算できないにせよ、10% の金額で評価したとしても90億円900億円くらい捨てられている計算になる。(左今氏)

青果店以外の販売チャネルとしては、アグリゲートでは、バイヤーが仕入れた値打ち商品がオンラインで買える「旬八日替わりオンライン」を展開。来年1月下旬には、東京・天王洲アイルの駅前に惣菜デリカ専門店「旬八 kitchen」をオープンさせる。同社は2020年までに、「旬八青果店」を50店舗、「旬八 kitchen」を20店舗増やすとしているが、このペースの出店計画を実現するには今回の調達資金だけでは不足することが想定され、近い将来に増資を実施することが推測される。

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自社農場で収穫されたキュウリ

このほかにも、アグリゲートでは、「旬八大学」と呼ばれる教育事業と、自治体や生産法人などにコンサルティングを提供する地域活性事業を提供している。

「旬八大学」はもともと、社内でバイヤーらが講師を務める形で、自社青果店の店員らへの情報共有や社内教育を目的に始まったものだが、社外関係者からも講義を受けたいとの要望が多く寄せられ、事業化されることになった。現在のところ、就農や青果店経営を始めたい人に起業支援も行う基礎講座、農作物に価値を付加するノウハウを伝授するバイヤー講座、消費者向けに梅干や味噌づくりを大家Nするカルチャー講座の3講座が、五反田にあるアグリゲート本社で定期的に開催されているが、ウェブ配信での受講も可能だという。

地域活性事業における顧客は、主に農家が点在していて組織化がうまくいっていない地域の地方自治体など。JA の流通だけでは需要の賄えない産地のニーズを開拓し、その地域の農作物が消費者に良好な状況で届けられるよう支援する。すでに組織化がうまくいっている地域については、地域農産物のブランディング支援、「旬八青果店」店頭での直販イベントの開催やテストマーケティングなどを支援する。

左今氏の説明によれば、ここまで紹介してきた4つの事業に加え、アグリゲートは今後、IT 事業も5つ目の経営の柱に育てて生きたい考えだ。

生産者の作業効率を上げるツールを作りたい。現在は農家が使っているものは、ほとんどが手書き。それらを省力化していく。

農作物を全国から直接仕入れし販売しているので、アグリゲートは市場のような機能も持っている。つまり、どのような農作物をどこに売れば一番いい値で売れるか、当社だったらいくらで買えるか、みたいな情報を、農家に提供できるようになる。(左今氏)

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自社農場での収穫の風景

農薬や化学肥料などのデータを入力しての栽培管理、生産予測を交えた在庫管理など、将来アグリゲートが実現できるかもしれないアイデアは留まるところをしらない。農林中金などとは性格を異にした、データドリブンで柔軟な生産者向けの金融サービスも開発できるだろう。この分野には、アメリカでは、有機栽培農作物専門スーパー大手 Whole Foods Market(NASDAQ:WFM)が生産者向けのローンを展開しているほか、農業特化型の金融サービスを提供するスタートアップもいくつか現れている。

アグリゲートでは事業拡大に向け、ウェブエンジニア、店舗開発担当者、新規事業開発担当者などを募集している

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