経験なし、わずか100米ドルの元手でロボティクスのスタートアップを設立し、主要なネット販売業者との取引を複数獲得したiFuture Robotics

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Image Credit: iFuture Robotics
Ark Robot
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彼がこの道に足を踏み入れたのはグローバル経済の減速がピークに達した2008年だった。当時わずか23歳だった彼は情熱とアドレナリンにあふれていた。世界経済が崩壊する中、彼は iFuture Systems を共同設立し、視覚システム、オートメーション、画像処理の機械を作ったが、成功を収めたとは言い難かった。

Rajesh Manpat 氏が初めて成果をあげたのは、競技射撃・防衛用にワイヤレスのエレクトロニックターゲットシステム、Elite Scorer を作った2013年だった。予想を上回る成功を収め、28ヶ国で販売された。

だが、起業に対する Manpat 氏の意欲がそれで満たされることはなかった。

次の挑戦として、自分自身を超える何かに取り組みたいと考えました。眠れなくなるような大きな課題を解決したかったのです。(Manpat 氏)

しかし、2014年12月までは彼の頭脳がその威力を発揮することはなかった。

ある晩、夜中の3時に、彼はオフィスに座って自分の熱意にこたえるようなアイデアを探し求めていた。

iFuture Robotics を思いついたのはこの時です。世界中で実施されている方法と比べれば、これは大きな躍進になると感じました。ひらめきの瞬間でした。

彼は笑顔を浮かべこう語った。

翌日から彼は何日もかけて世界中のどこにも同じようなロボットは存在しないか、また他の誰かのアイデアを真似ていないかどうかをチェックした。

iFuture Robotics が生み出した Ark Robot は、2016年に正式に誕生した。自律型のモバイルロボットで、既知の環境であればどんな場所にも移動できる。商品を載せたパレットや木箱を持ち上げどんな場所にも運ぶ。また大型の倉庫で、自動的に物を保管したり取り出したりするタスクもこなせる。

導入は1施設につき10体から数百体のロボットで構成される。

ロボットはインテリジェントで相互コミュニケーションが可能

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ロボットは、互いのワークフローを管理するワイヤレスサーバ経由で相互コミュニケーションが可能です。サーバは指示を受けるため顧客側のアプリケーションに接続され、在庫状況を管理します。Ark Robot は最速4km で移動することが可能で、最大120kg の荷物を運ぶことができます。(Manpat 氏)

Ark Robot のセールスポイントは、もっともアクセスが頻繁な商品は梱包台の近くに動的に保管されるというように、計算力とデータ解析を組み合わせることにある。トレンドが変化し、顧客の購買習慣が週ごと、月ごと、あるいは年ごとに変わる場合は特に役立つ。

ある時点を超えると、倉庫のロボットは人間ほど移動せずに済むようになる。こうなると急激に効率が向上する。オペレーションに影響を与えることなく、売れ行きが良くない商品や消費期限の迫った商品を簡単に排除できる。

Ark Robot はすでに、e コマース上位10社の大手顧客を何社か獲得しており、さらに多くの企業と話を進めている。しかし Manpat 氏は、各社と結んだ NDA(機密保持契約)を理由に詳細を公開していない。

Manpat 氏によると、この業界ではスケーリングが重要であり、人材が不足しているという。

彼はこう語る。

ローンチ後の最初の数ヶ月は、どちらかというとカスタム化されたソリューションと言えるプロジェクトを手がけました。チームを向上させるスキルは見出せませんでした。利益はあったものの、スケールはなかったのです。私たちはブートストラップ企業ですから、稼いだお金は研究開発に投資し続け、得た知識は製品開発に役立てました。

時には失敗し、次のリスクを負う前に1年かけて予算を蓄積しなければならないこともありました。重要なのは、失敗に耐え再度挑戦することでした。Ark Robot は2014年の終わり頃から手がけていました。今振り返ると、持ち金のわずか5,000インドルピー(100米ドル以下)で 、しかも経験なしで私たちがやり遂げたことは、かなりすごいことだったと思います。

Manpat 氏は微笑しながら語った。

ロボティクスはアメリカやヨーロッパといった先進地域では参入を遂げているが、まだインドではあまり受け入れられているとは言えない。とは言え国内には、世界有数のロボティクス企業のオフィスがすでにかなり進出してきている。

その理由について彼は次のように語った。

ロボティクスはほとんどが海外で製造され完全に組み立てられたユニットとして輸入されるため、インドではまだ主流となっておらず、広く受け入れられているとは言えないのが実情です。輸入税、出荷費用、メンテナンス費用などがかかるため、業界の大半がさまざまなアプリケーションにロボティクスを採用するのを躊躇しています。コストに敏感なインド市場に参入を果たしているのは、ロボティクスが必須とされるアプリケーションに限られています。また、こういったメーカーはロボットをプラットフォームとして売るだけですから、地元のシステムインテグレーターがロボティクスアプリケーションを構築する必要があります。

その上、自覚も足りない、と彼は付け加える。インドはロジスティクスや倉庫管理がほとんど体系化されていない。オペレーションでは非効率的な部分があまりにも多い。オートメーション化の必要性を理解するには、いくつかの大規模な小売業者や e コマース企業がビジネスボリュームでクリティカルマスに達する必要がある。ある時点を超えると、問題への対処に人数を多く投入すればするほど損失が増えるようになる。

ロボティクステクノロジーを利用してこの問題を解決しようとするには、企業側でさえ革新的な考え方をする必要が出てきます。そして取り入れた企業は、利益を得て一歩先を行くことになります。ロボティクスを受け入れた世界各地の企業が、市場シェアを伸ばしマーケットリーダーへと成長しているのは明らかです。(Manpat 氏)

ロボティクス業界が年平均成長率12%で拡大し、2022年までに1,000億米ドル規模に達するとする予想もいくつかある。ロボティクスの売上は2015年には15%の売上増を記録し過去最高に達した。こういった数値はすべて強気配を明確に示している。

Amazon は、すでに4万体の規模でロボットによる労働力を投入している。

Manpat 氏は、ドローンがビジネスに影響をもたらしたように、ロボティクスもまた近い将来 e コマース企業の倉庫作業を取って代わるようになるだろうと言う。

機械はより安価な電子機器でさらに賢くなりつつあり、今では複雑なアルゴリズムを実行する力を備えています。私たちは今後数年の間に、その傾向がますます強くなり、さまざまなアプリケーションで採用されるロボットの数が過去にない勢いで増大するのを目にするでしょう。これが今後の発展の方向であり、問題はそうなるかどうかではなく、いつそうなるかなのです。近い将来ロボティクスアプリケーションは効率性や生活の質を向上させ、日常的な仕事や危険な仕事を代わりに処理するようになるでしょう。

諦めるなら最初からやらない方がいい

Ark RobotチームImage Credit: iFuture Robotics
Ark Robotチーム
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私が学んだことの中でもっとも重要なのは、すばらしい製品を構築するにはすばらしいチームが必要だということだ。イノベーションも大事だが、すばらしい製品を作るには適切な人材が必要だ。夢に向けて全力を注ぎ、夢の大きさにかかわらずそれを追い求めるのは大事なことである。

諦めようと思ったことは一度もありません。私は何かを使命ととらえたら、諦めるようなことは絶対にしません。私は諦めることは悪い習慣だと思います。それなら最初から手をつけない方がいいのです。もちろん、目的に疑問を抱くような非常につらい時期もありましたが、それももう一度目的を見直せばいいだけのことでした。家族は私を支えてくれました。夜遅くまでかけて今後の計画を相談したことも幾度となくありましたがそれにも付き合ってくれました。

うまく事が運ばない日は、やる気を与えてくれる映画やドキュメンタリーを見ることもあります。そのやる気を翌日まで持ち越し、気持ちを奮い立たせます。起業家精神とは孤独な道のりです。なぜ起業するのかを理解してくれる人は少ないですが、それは仕方ありません。最初はそれと戦いますが、やがて成長し、起業はすべての人がやってのけられることではないと気づくのです。(Manpat 氏)

iFuture は Qualcomm の支援を受けている。チップ業界を先導する Qualcomm は、iFuture に対し「QPrize-Make in India」コンテスト経由で30万米ドルの投資を行っている。「当社は世界有数のベンチャーキャピタルと連絡をとっており、近々シリーズ A ラウンドを実施する予定です」と Manpat 氏は締めくくった。

【via e27】 @E27co

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