2017年、フィンテックは新興国マーケットでどう成長するか? 二つのトレンドを予想

SHARE:

著者のTomas Likar氏は、個人事業主を対象にしたグローバルな決済プロバイダーであるHyperwalletの戦略事業部署のバイスプレジデントを務める。新興国マーケットの戦略、モバイル決済、企業戦略、M&Aについて決済企業にコンサルティングを提供していたマッキンゼー・アンド・カンパニーに6年在籍後、Hyperwalletに参画した。

 via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “M M“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

モバイル決済、デジタルウォレットなど、フィンテックは欧米で幅広く取り入れられているが、発展途上国においてはまた新たな意味をもつ。

銀行口座をもたない人が多いため、新興国マーケットにおいては、フィンテック企業はユニークでチャレンジングな機会に直面する。銀行やクレジットカードといった金融サービスを通り越して、決済のエコシステム全体を再考するという機会だ。

たとえば、アフリカを見てみよう。アフリカ大陸の80パーセントが銀行口座を有さず、リテールの決済の90パーセントが現金で行われる。つまり、フィンテックスタートアップがディスラプトできるチャンスは巨大だということだ。

以下は、2017年に特に新興国で見られるであろう、フィンテック業界の主要なトレンドだ。

中国に続いて、インドでフィンテックが盛り上がる

過去5年間において、中国は迅速なフィンテック業界の成長が見られた最初の新興国マーケットだ。たとえば、『KPMGのグローバルフィンテックイノベーター100選・2015年度(100 Leading Global Fintech Innovators Report 2015)』は、上位5社のうち2社を中国企業から選んでいる。AlibabaとTencentから出資を受けている革新的なオンライン保険会社であるZhongAnと、分割支払いプランのオンラインプロバイダーQufenqiだ。

インドは、数年前の中国と同様のポジションに現在いると思われる。同国のeコマースマーケットは、Amazonとローカルのライバル間の競争が大きく影響して、世界でもっとも速い成長を示している(年間51パーセントの成長)。金融サービスに対する潜在的な需要は間違いなく大きいし、金融統合を推し進める上で中央政府は大きな支援をするだろう。2011年から2014年で銀行口座の普及率は35パーセントから53パーセントに伸びたのだ。今後数年でさらに大きく伸びるだろう。

もしインドが中国のイノベーションのパターンに追随するのであれば、次のような分野で大きな成功が見られるだろう。

  • モバイル決済(例:Alipayのような広範囲で受け入れられたソリューション)
  • 資産管理(例:グローバルな株式市場に低コストでアクセスできるサービス)
  • オンラインカスタマーと中小企業への融資

フィンテックの成長によって、「Regtech」のイノベーションが加速する

新興国マーケットで事業を展開する上での主なチャレンジの一つが、フィンテック企業は先進国のマーケットに存在するような決済・銀行インフラに頼ることができないという事実だ。たとえば、新興国のフィンテック企業は、クレジットスコアや統合された銀行インフラ、さらにより基本的な条件である身元証明のためのIDや信頼できる住所データベースに頼ることができない。

クラウドコンピューティング、マシーンラーニング、ビッグデータのサービスが広く普及することによって、企業は以前よりもずっと低コストで効率的にこうした問題に取り組むことができるようになった。多くの人がこうしたサービスの分野を「Regtech(編集部注:規制に関するテクノロジーのこと)」と呼んでいる。

フィンテック企業がRegtechサービスを頼ることは明らかだ。フィンテック企業は、カスタマーのオンボーディングとモニタリングだけでなく、継続的に規制やコンプライアンスのプロセスを改善し、自動化する必要がある。Regtechの最初の波は、米国や欧州の企業がより効率的になりコストを下げる上で役に立ったが、私はそれ以上の機会が、インド、ナイジェリア、エジプトといったフィンテック企業がそうしたツールを本気で求めている場所にあるのではないかと思う。

同時に、Regtech企業は、フィンテック企業や金融機関がもつ充実したデータセットなしにこうしたツールやモデルを開発することはできない。こうして、フィンテック、Regtech、さらには政府も巻き込んで、幅広いパートナーシップが築かれる例が生まれるのではないだろうか。

新興国マーケットにおけるRegtechの本当の機会は、コスト削減をさらに先にいくものだ。現在の金融機関が無視してきた新しい顧客集団の役に立つような新しいソリューションやプロダクトを、Regtechが生み出す可能性は大きい。

Accentureの調査によれば、グローバルでフィンテック企業への投資は2015年に75パーセント成長し、220億ドルを超えた。新興国マーケットに引き続きフォーカスし、Regtech企業と密なコラボレーションを実現することによって、2017年もさらにフィンテック業界は成功を遂げることだろう。

(本記事は抄訳です。)
【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する