James Dyson Award 2016国内審査上位5作品が発表——高齢者の外出のハードルを下げる〝魔法の杖〟「Communication Stick」が最優秀賞を獲得

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前列左から:田川欣哉氏(審査員)、三枝友仁氏(最優秀賞作品作者)、山田泰之氏(準優秀賞作品作者)、林信行氏(審査員) 後列左から:島影圭佑氏(国内審査3位作品作者)、川島直己氏(国内審査4位作品作者)、篠田幸雄氏(国内審査5位作品作者)

James Dyson Award(JDA)は、個性ある掃除機や空気清浄機メーカーとして知られる Dyson が提携する James Dyson Foundation(JDF)が年に一度、世界22カ国で展開するアワードだ。問題発見と問題解決を革新的なアイデアで表現することをテーマとし、エンジニアリングを専攻する現役学生や卒業生を対象に実施している。国際最優秀賞受賞者には3万ポンド(約540万円)、受賞者を輩出した学部には5,000ポンド(約89万円)、国内最優秀賞受賞者には2,000ポンド(約36万円)が贈られる。

8日、都内で JDA 2016 の国内表彰式が行われ、国内上位5作品の作者が集まり、プロトタイプとともに作品が披露された。JDA 2016 では、JDA 2013 の国際準優秀賞を受賞した筋電スタートアップの exiii がオフィシャルアンパサダーを務め、デザインエンジニアの田川欣哉氏(takram)とフリージャーナリストの林信行氏が審査員を務めた。

以下に、国内上位5作品を紹介したい。

【国内最優秀賞作品(国際トップ20入賞)】Communication Stick by 三枝友仁氏(プロダクトデザイナー、桑沢デザイン研究所デザイン専攻科プロダクトデザインコース卒業)

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Communication Stick は、通信機能と転倒検知機能を兼ね備えた〝魔法の杖〟だ。会議施設で生活を送る被介護者と介護スタッフにとって、迷子と転倒の不安が被介護者の単独での外出を妨げる原因となっている。このハードルを下げるため、Communication Stick には、音声入力・認識によるメール送信機能、メール受信時の自動読み上げ機能、転倒を重力センサーで検知し現在地とともに介護スタッフにメールする機能などが備わっている。

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【国内準優秀賞作品】TasKi by 山田泰之氏(中央大学理工学部精密機械工学科助教、慶應大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻)

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ぶどう畑での果実収穫などで、農家が長時間腕を上げたまま作業する際の負担を緩和するため、腕への必要最低限のアシスト力を提供するアイテム。バネやヒンジといったプリミティブな機構要素の組み合わせで実現され、バッテリーを使わず、1.2キログラムと軽量に作られていることが特徴。受賞した山田氏は昨年の JDA 2015 でも、快適な歩行とファッションを両立するハイヒール「YaCHAIKA」で国内準優秀賞を受賞している。

【国内審査3位作品】OTON GLASS by 島影圭佑氏(情報科学芸術大学院大学メディア表現研究科修了、OTON GLASS 代表取締役)

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父親が失読症に陥ったことを発端に開発を始めた OTON GLASS は、その後、文字を読むことが困難なディスレクシアの人々や弱視の人々の協力を得た開発により、9台目のプロトタイプが完成するに至った。OTON GLASS に備わったカメラでユーザの目が見ているものを視覚情報として捉え、それを文字認識し音声読み上げることで、ユーザは見ているものの意味を理解しやすくなる。非日本語話者向けの翻訳読み上げ機能、画像を遠隔転送し人に文字を読み上げてもらう JINRIKI GLASS なども開発している。

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【国内審査4位作品】Design for sound – Sound Microscope by 川島直己氏(東京造形大学造形学部デザイン学科卒業)

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視覚の世界では、小さくて見えないものを拡大して見る顕微鏡があるが、聴覚の世界では、可聴域外の音を音のまま人間が知覚できる音に変換して聞けるツールが存在しない。Sound Microscope はその名の通り〝音の顕微鏡で〟マイクで拾った可聴域外の音の中から聞きたい音を選び、デジタル変換を介して人が聞こえる可聴域内の音として捉えることができる。

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【国内審査5位作品】color2vibs by 篠田幸雄氏(情報科学芸術大学院大学メディア表現研究科)

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視覚障がい者が触っているものの色調の違いを、指先に感じられる識別ツール。色彩センサーで捉えた色を光の三原色(RGB)に分解し、ツールで触れている場所の色の構成要素を RGB それぞれの強さとして指に振動で伝える。障がい者の子供達を教えている特殊学校や特殊学級で使われる教には教員によるハンドメイドが多いためノウハウが体系的に継承されにくい。デジタルファブリケーションでこの問題を解決するとともに、color2vibs のようなツールの活用で、健常者が使う教材を障がい者の教育に取り入れることを目指している。

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