新規就農者を支援する野菜販売スタートアップ・坂ノ途中、三井住友海上キャピタルや朝日放送など8社からシリーズAで総額2億円を資金調達

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2016.12.22

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Image credit: 坂ノ途中

京都を拠点に、新規就農者の農業参入支援と対面や直販での野菜販売を展開するスタートアップ・坂ノ途中は今週、シリーズAラウンドで総額2億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、三井住友海上キャピタル、朝日放送(東証:9405)の投資部門である ABC ドリームベンチャーズ、山陰合同銀行(東証:8381)傘下のごうぎんキャピタル、丸亀製麺で知られるトリドール(東証:3397)傘下の投資会社 TD インベストメントフューチャーベンチャーキャピタル(東証:8462)、京都中央信用金庫傘下の中信ベンチャーキャピタル、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC と略す)、キユーピー(東証:2809)の8社。坂ノ途中にとっては、2年前に行った関係者からの資金調達に続き、初の外部資本からの資金調達となる。

坂ノ途中の設立は2009年7月、創業者の小野邦彦氏が京都大学在学中に「環境×農業」分野での起業に興味を持ち、2006年のキャンパスベンチャーグランプリ大阪大会での特別賞受賞を経て事業を開始した。野菜が畑で作られてから消費者の食卓に並ぶまでの、生産・調達・流通・販売の一連のプロセスに関与し、有機野菜の取扱に特化していること、年間400種類を超えるバラエティに富んだ野菜を扱っていること、100軒ほどいる契約農家のうち9割が新規就農者で構成されていることが特徴だ。消費者サイドからは、どの農家が育てた作物かもわかるようになっている。

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坂ノ途中 Soil 京都・九条大宮店
Image credit: 坂ノ途中

坂ノ途中と契約する生産者の4割弱は京都に集中しており、関西圏全体で見れば全契約農家の8割ほど。一方、販売先の約半数は関東圏で、インターネットを通じた定期宅配サービスのによる需要が50%、ハイエンドのレストランや百貨店の食料品売場への卸販売が35%、残りの15%は、東京の代々木八幡と経堂・京都の九条大宮に展開する自社経営の八百屋で対面直販によるものなのだそうだ。

調達資金の使途は、カスタマーサポートとマーケティング強化

日本の農家は経営規模が小さく経営が自然要因に左右されやすいが、小野氏はかつて勤務した外資系金融機関での金融知識にヒントを得て、金融工学に基づいて栽培計画の全体最適化を図ることで、農作物の商品供給における総量不安定性を打ち消すことに注力している。

野菜の品質を高くした上で、バリエーションも高くするのは非常に難しい。

そして、野菜の定期宅配では、お客を飽きさせないのがミソ。野菜がさほど好きでない人には、定期的に野菜が届くのは苦痛でしかないが、好きな人には(坂ノ途中は)非常にウケている。

大手の食品デリバリ定期配送サービスでも、利用開始から5週間後の継続利用率は半数を下回るとのことだが、坂ノ途中では、季節や収穫状況に応じて届く野菜が変化するため、長期にわたって使い続けてくれる多くのユーザに助けられているとのこと。ただ、ここで「助けられている」と書いたように、坂ノ途中の会社としての経営努力よりも、サービスを愛してくれるユーザのおかげでビジネスが成立している側面が大きいようで(小野氏)、坂ノ途中では今回調達した資金を使って、カスタマーサポートやマーケティングを強化する考えだ。

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小野邦彦氏

プロダクトの質の高さは評価されているが、正直なところ、坂ノ途中はまだカスタマーサポートがイケてない。今は、お客さんが自発的に見つけてくれて、ファンになってくれて、買って行ってくれているという感じ。お客さんの好意に甘え過ぎていると思う。カスタマーサポートを充実させ、より多くのお客さんに使ってもらえるようにしたい。

先日は、(ロフトワークの)MTRL 京都(マテリアル京都)で、当社のローヤルカスタマー向けに食べ物の上映会を開催した。2017年は、そのような(ユーザエンゲージメントの)機会を充実させ、エネルギーを注いでいきたいと思っている。(小野氏)

今後は、「北欧、暮らしの道具店」のほか、2015年に審査員特別賞を受賞した「T-Venture Program」運営元 CCC の「T-SITE」を通じて、集客やウェブマーケティングにも注力する計画だ。

新規就農者を増やす努力

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坂ノ途中 Soil 京都・九条大宮店
Image credit: 坂ノ途中

手軽に農業が始められることを謳い文句にする企業もいる反面、坂ノ途中は現実的だ。農作物を育む土地を大事にし、自然の循環を重視し、効率や生産性優先ではなく、まずは〝考えられる農家〟を増やしていきたいと小野氏は語る。坂ノ途中では自社農場を持っており、そこには就農に興味を持った人々が定期的に集まってくるのだそうだ。

自社農場では、農業に興味を持った人が研修生になるまで一緒に並行伴走するような感じ。根性だけでは乗り切れないのが農業。その間にあきらめて戻っていく人もいるし、一方、成長して本格的に農業に入ってくる人も多い。今のところは、参加者個々人の頑張りに依存しているが、新規就農した農家や就農を目指す参加者をネットワーク化して、学びあえるような環境を作っていきたい。

今までは、収入が安定しない農業では、代々農業を営んでいる家庭を除けば、新規就農者が結婚し、子供を育てるというような生活は難しくさえあった。坂ノ途中が農業を儲かる事業に変えたとまでは言えないが、坂ノ途中が契約している新規就農者には、30代から40代の結婚して家庭を持つような人が増えている。ボロ儲けはできないけど、少しは未来を描けるようになっているのではないか。(小野氏)

農業従事者の人口減と高齢化が下げ止まらない中、坂ノ途中の前向きで果敢な挑戦にエールを送りたい。

この分野では、新規就農者プラットフォームの「LEAP」を運営する seak が今年9月、寺田倉庫や三菱UFJキャピタルから約6,000万円を調達している

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