リフォームや新築施工現場の効率化アプリ「ANDPAD」1年で350社の成長ーー朝倉氏、柴田氏ら若手個人投資家が支援

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リフォームや新築、建設業界の施工現場を効率化するアプリ「ANDPAD」を提供するオクトは1月26日、サービス開始1年で導入件数が350社を突破したと発表した。また、これと同時にスポットライトなど数社を起業した連続起業家の柴田陽氏ら複数の個人投資家からの資金調達と、ミクシィの元代表も務めた朝倉祐介氏が戦略顧問に就任したことも公表している。同社によると調達した資金の詳細は非公開ながら数千万円規模ということだった。

オクトの提供する ANDPAD は「電話やFAXに変わる施工管理ツール」ということになるだろうか。現場の職人や現場監督などがスマホ上でのチャットや日報などを通じて現場の状況を共有、把握することができる。工事情報や図面などの資料、工程表、現場の写真情報をクラウド上で一括管理し、ここに現場作業員とのコミュニケーションも加えることで効率化を図る。

利用料金は発行する ID 数(利用アカウント数)によって変動する月額制で1万8000円から6万円(ID あたり600円)までのプランが用意されている。なお、初期費用として全てのプランに10万円が必要になる。対応している OS は iOS9.0以降と Android4.2以上。

またひとつ業界特化型(バーティカル)B2B SaaS サービスの有望株が現れたようだ。社内コミュニケーションに飲食業界の予約台帳、労務管理、最近では目標管理なんていう特化型も出現してきており、国内でも B2B SaaS 市場の可能性を感じることが多くなった。ANDPAD は先日紹介した施工現場の工事写真を効率化する「Photoruction」と同じく建設業界の効率化を目指している。

この特化型 SaaS の隆盛はやはりスマホの普及が大きく関与している。そもそも既存業界の「IT化」は長らく叫ばれており、それぞれの業界で専門性の高いシステム、ソフトウェアが提供されてきた。ただ、それらはどれもスタンドアロンでの稼働で情報の共有ができなかったり、大きな PC が必要でモバイル性に欠けるなど、使い勝手の面で大きな課題を抱えていた。これがスマホの普及により、今回のような建設現場の職人さんであっても使える、そういう環境が整ったことはこの分野を攻めるスタートアップたちに大きな追い風となっている。

サービス開始1年で350社の導入が進んだ

オクト代表取締役の稲田武夫氏は ANDPAD が業界に受け入れられつつある背景をこのように語る。

「施工現場の職人さんやリフォーム会社の営業の方とお話ししている感覚としては「IT リテラシー」の問題半分「PC と向き合う時間が少ない」という働き方も事情半分だと理解しています。業界の人が他の業界と比べて、極端に IT が嫌いなわけでも、めんどくさがるわけでもありません。

ただ、やはり IT アレルギーがある方に対しては「導入の勉強会やフォローアップ」の体制を重視しています。プロダクト力と同じぐらいの割合で、導入・定着のオペレーション設計が重要です。弊社は1年かけてこのオペレーションを磨いてきました。こちらは、業界出身のメンバーが、「自分が働いていたときにほしかったアプリ」ということを実感しながら職人さんや現場監督さんに使い方をご説明しています」(稲田氏)。

稲田氏のコメントにあるように、特化型 SaaS ではこういった丁寧なレクチャーが導入を左右する場面が多くある。少しサービスは違うが、同じく建設業界のマッチングを提供しているツクリンクは代表がそもそも鳶職出身で、導入企業の PC の設定までやりながら関係を構築して会員企業数を伸ばすことに成功している。

ただ、一件あたりの獲得単価が青天井になっては採算が合わない。この辺りの課題について稲田氏にアイデアを聞いてみたが、ANDPAD 自体がまだ立ち上がりフェーズであり、むしろこの段階では積極的にコストをかけていくという回答だった。

最後にビジネスモデルについてだが、稲田氏によると施工現場の効率化を図ることで、ANDPAD のコストは十分に捻出できるという。

「想定の粗利が30%で300万円の施工を請け負ったとします。これがクレーム対応や、工期遅れなどが重なり、例えば、4%の完工時の粗利の減少があるなどのケースはよくある話です。これが会社の案件全体で起こっているとしたらどうでしょうか。工期遅れを減らす、クレームを減らす、現地調査時の見積もりの正確性を上げるなどは、ダイレクトに粗利に影響を与える要因なんです」(稲田氏)。

またこういう直接的な粗利改善とは別に、オンラインで確認を可能にすることによってこれまで現場に通っていた移動時間を減らすという効果もあるという話だった。

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