ファンであるということはつまり、大好きな相手に興味をそそぎ、その周囲にコンテクスト（状況や関係）を与えるということだ。韓国のスタートアップ VREX は、ファン・パワーと AR 技術を組み合わせ、ファンと彼らが愛するスターをデジタルでつなごうと試みている。

K-POP は単なる文化的現象ではない。経済的および社会的な影響を持つ。EXO のメンバー Lu Han（鹿晗）氏が上海の外灘にある郵便ポストの前で自撮り写真を撮影し Weibo（微博）に投稿すると、その晩、EXO のファン2万人が同じ場所で自撮り写真を撮ろうと列をなした。また EXO の別のメンバー Yixing（張芸興）氏のファンは、ニューヨークのタイムズスクエアにある巨大ビルボードで彼に誕生日を祝うメッセージを送っている。

VREX の CEO で設立者である Rudy Lee（이루디）氏はこう語る。

ファンは K-POP を見るために中国や韓国に出向きますが、それによる収益は60億にもなります。ですがファンの88％はスターとつながっていないと感じています。

韓国国際交流財団がまとめた世界的な韓流ブームの2015年版データによると、世界には3,500万人以上の K-POP ファンがいるという。YG Entertainment でもっとも人気のあるバンドグループ Big Bang は、2015年にコンサートで約1億5,000万米ドルの収益をあげている。

コンテンツは大量にあっても、コンテクストがない

2016年の Instagram 上のインタラクション率は世界的に40％落ち込んだが、より没入感ある写真共有エクスペリエンスを求める声は高まっている。

写真によるコンテント（情報）は大量にあり、私たちは Instagram やその他のアプリを使って写真に目を通しはしますが、ファンが本当に共感できるようなコンテクストはありません。コンテントは大量にあるけれども、コンテクストは少ないのです。（Rudy 氏）

そこで VREX はコンテントとコンテクストを組み合わせ、ファンとスターをつなぐアプリ「Rush（貼了）」を開発した。このアプリを使えば、ファンが指定の場所を訪れると、宙に浮かぶスターからの AR メッセージを見ることができる。彼らはアプリで提供される特別な K-POP スタンプ付きの自撮り写真を撮影してそのメッセージに応じる。同社は現在、ボーイバンドの BTS と EXO の Zhang Yixing（張芸興）氏のスタンプを提供しており、LOEN Entertainment（로엔엔터테인먼트）とも提携を結んでいる。

Rudy 氏は以前、ミュージックビデオやコマーシャルを制作する共同制作会社を共同設立している。自身も Big Bang のファンであり、また韓国の著名人と仕事をした経験を持つ同氏にとって、ファンのコミュニティに対するスターの影響を感じ取り観察するのは容易であった。

Rush は中国、韓国、インドネシア、フィリピン、インド、台湾、パキスタン、そしてアジア以外の多数の国のユーザの間で非常に高い人気を集めている。K-POP ファンは Rush 内の特別なスタンプを使い、お気に入りのスターにハッシュタグ入りのラブメッセージを投稿できる。Rush はハッシュタグ数を数え、K-POP ランキングを示したビルボードをウェブサイト上にリアルタイムで掲載している。

2週間ごとに、Rush のチャートで1位を獲得した K-POP スターのファンが作成した動画が上海の Henderson Metropolitan Mall（恒基名人購物中心）1階にある巨大 LED スクリーンに映し出される。初回は EXO の Zhang Yixing 氏が LED スクリーンを飾ったが、現在は GOT7 の Jackson Wang（王嘉爾）氏の動画が映し出されている。

【via Technode】 @technodechina

【原文】