「ガジェットの黙示録」なんてどこ吹く風、今年のCESでは家電メーカーやスタートアップ各社が計2万種以上のプロダクトをローンチ予定

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CC BY-ND 2.0: via Flickr by Jon Fingas

今月はじめ(原文掲載日:12月29日)、New York Times は、来週開催される世界最大の家電トレードショーに参加するため、ラスベガスを襲撃する18万人超の人々に対して、悪いニュースを放った。

ガジェットは死んだ。

このニュースは、1月5日にスタートする Consumer Electronics Show 2017(CES 2017)で、おそらく合計で2万件に及ぶ新しいガジェットをローンチさせようとしている企業にとっては大きなショックとなるだろう。New York Times のコラムニスト Farhad Manjoo 氏が「ガジェットの黙示録」と題した記事について、CES の主催者である Consumer Technology Association(コンシューマ技術協会)のチーフエコノミスト Shawn Dubravac 氏に電話で話を聞いてみた。

我々は2016年、これまでに世界でこれまでに売られたよりも多くのガジェットを販売した。そして、2017年も、これまでよりもさらに多くのガジェットを販売することになるだろう。(Dubravac 氏)

毎年 CES 前日には、Dubravac 氏と彼のチームは、世界の家電市場の統計分析の詰まった綿密な報告書を公開している。詳細なデータを見るまでには、あと数日待つ必要があるが、そのリリースを待たずに、我々は New York Times の分析には欠陥があること、また、ガジェット市場が進化を続けているについて話してみたい。

Majoo 氏のコラムの内容を要約すると、彼は Pebble や GoPro など多くのハードウェア・メーカーが経験した問題を取り上げ、それらを「大規模なガジェット危機」としてまとめてみせた。彼は、新しいガジェットがスマートフォンに Shazam のようなインパクトをもたらしていないと嘆き、我々の日常を積極的に変えようとしているガジェット一つの話を繰り返した。

Majoo 氏の語ったうち前者の意見については、Dubravac 氏は以前引用した売上高をもとにして、全面的に否定している。しかし、それよりも重要なのは、仮にソフトウェアがより大事であるにせよ、我々は、Google や Amazon や Snap のような大企業がハードウェア分野に進出しようとしていることを知っている。Manjoo 氏が言及しているように、会社全体の集中をハードウェアに振り向けることは難しいかもしれないが、Dubravac 氏は、それは(今に限らず)今までいつでもそうだったと指摘した。

Manjoo 氏が指摘した他の点については、Dubarac 氏は、マス市場にアピールできるガジェット、特に、iPhone のようなスケールのものを作るのは、今までよりも困難な時代に向かっていると語った。2016年に紹介されたガジェットの多くは、すぐにお陀仏になっている。今あるものが、マス市場プロダクトになることはまず無いのだ。

それ以外のカテゴリ(マス市場プロダクト以外のカテゴリ)では、普及率が低くなる傾向にある。(Dubravac 氏)

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CC BY-SA 2.0: via Flickr by Tech.co

Amazon Echo がよい例だ。Amazon は Echo が驚異的なヒットになると考えていたが、多くは休暇期間中に売り切れとなった。Echo を買う可能性がある人、入手するかもしれない人の市場規模が小さいままであることも事実だ。しかし、Amazon Echo を世界中で販売されている何百万台というスマートフォンと比較すれば、Amazon Echo 単体では失敗作という評価になる。

対照的に、Dubravac 氏は、根幹を築きつつあるようなガジェットがあることにも注目している。消費者たちは、それぞれ自分の生活にあった異なるガジェットを選び始めるだろう。人々がデバイスを持てば持つほど、それらはスマートホームのようなものの基礎プラットフォームになり始める。

壁にたくさんのケーブルを這わせる、高価な家電品を同時購入する必要のあったスマートホームの考え方は、もはや過去のものだ。今では、人々は堅牢な Wi-Fi のしくみに助けられ、事をステップ・バイ・ステップで進めることできる。Dubravac 氏は今回の CES で、パワウルな Wi-Fi の選択肢について多くの発表があることを期待していると語った。これは大きなヘッドラインに掲げられるほどのことではないが、ガジェットの接続性をさらに高めることになるだろう。

これらのネットワークでつながったガジェットは、音声認識技術の迅速な進歩によって、さらに進化を遂げている。Dubravac 氏によれば、2013年に音声認識における標準的な単語認識誤りが約25%にまで低下した。ごく最近では、Microsoft がそれをさらに約5%にまで下げられたと発表している。

我々は直近の30ヶ月の間に、過去30年間で見られたよりも多くの進歩を見てきた。それは、これらの(Google Home や Amazon Echo のような)ハブデバイスをも可能にした。(Dubravac 氏)

ガジェットのネットワークが増えるにつれ、現時点では予想さえできないユースケースをもサポートし始めるだろう。Dobravac 氏は、この最近の例として iPhone を取り上げた。

Apple の創業者 Steve Jobs 氏が初めて iPhone を発表したとき、彼は iPhone が iPod、電話、インターネット通信デバイスの3つのガジェットを組み合わせたものだと語っていた。このとき、Jobs 氏が指摘できていなかった機能が一つある。カメラだ。

現在では、iPhone の機能アップグレードやマーケティングキャンペーンの隆盛の多くは、以前にも増して、パワフルなカメラ機能に集中している。これを契機に、我々は爆発的な枚数の写真を撮影することになり、Facebook や Twitter 上でシェアすることにつながり、モバイル動画が急成長する源となった。前面カメラが備わったことで、Snap が生まれ、自撮り写真のブームが生まれた。

iPhone が多数のユーザのデフォルトカメラになるなど、発表された当時には誰しも予想だにしなかったことだ。我々は、イノベーションの流れを甘く見ている。ガジェットの世界では、驚異的な数の実験が行われている。我々がユースケースとして目にしているものは、その実験が終わった後のものに過ぎない。(Dubravac 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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