2017年、アジアで注目すべきクリーンテクノロジーのスタートアップ13社

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Image credit: Pixabay

アジアはクリーンテクノロジーを必要としている。というのも、アジアに居住する44億人のうち、7億人が電気を使用することができず、17億人近くが安全な飲み水を有していない。また、森林伐採は地球上のどこよりも早い速度で進んでいる上、ほとんどの国が自然災害の影響を大いに受けやすい地域に位置していることからも、アジアの環境問題は深刻だ。

問題は電気と水だけではない。アジア開発銀行による研究では、2030年までに農業分野は、減少し続ける水資源を使いながら食料を100%増で生産する必要があり、10億台以上の車やバイクからアジア都市全体の大気汚染の80%を排出し、さらに2035年までに世界の二酸化炭素排出量の46%を排出することになると予測している。

しかし幸いなことに、アジアのスタートアップ企業が問題解決に向けて乗り出し始めている。以下、13社をご紹介しよう。

Husk Power Systems

電力を主力とした包括的な農村開発へのフォーカス

Husk Power Systems は、バイオマスガス化器で籾殻を処理して発電する特許技術を開発した。ビジネスモデルは農村地の電化であり、地域の資源や小型発電機を利用して、住民たちが充分に管理可能な分散型発電および送電をベースにしている。現在、Husk Power Systems は84箇所のローカル発電所を設置済みで、インドのビハール州全土における300以上の村で、20万人以上に電力を供給している。

Transkinetic

自動車の動きを利用し電力化および収益化

2013年に設立されたシンガポール拠点のスタートアップ Transkinetic は、Movnetic と呼ばれる特許技術の創案者および管理者である。この技術の中核をなしているのは、スマートスピード防止帯だ。これは、上を通る自動車の運動エネルギーを吸収してクリーン電力に変換するというもので、Movnetic システムによって送電および管理を行う。Transkinetic は主にシンガポール国立大学工学部などの研究パートナーと協力関係を結んでおり、複数の政府機関や国内ベンチャーキャピタルから出資を受けている。

HiGi Energy

より身近なクリーンエネルギーを創出

HiGi Energy はフィリピンを拠点とするスタートアップで、ホテイアオイ(別名ウォーターヒヤシンス)を、調理用の代替エネルギーとなる豆炭へと変換している。人口1億人のうち65%が未だ薪や木炭を使用しているフィリピンで、同社は繁殖力の強いホテイアオイを使って木々の伐採を削減すると共に、川や湖の浄化を目指している。同社はシリコンバレーで開催された2016 Global Entrepreneurship Summit にて表彰されている。

Karma Recycling

地球を救い、良いカルマを得よ

2013年に設立されたモバイル機器下取り再分配業者である Karma Recycling は、ガジェットや電子機器の再販、リサイクル、修理調整および適切な廃棄を通して、電子廃棄物による悪影響を最小限に留めることを目指している。現在、9億5,000万台以上のデバイスが使用されているインドを拠点とする同社は、クリーンエネルギーのベンチャーキャピタルである Infuse Ventures の出資を受けている。

EcoWorth Tech

革新的な水の浄化技術

EcoWorth Tech はシンガポールを拠点とするスタートアップで、Carbon Fiber Aerogel(CFA:炭素繊維エアロゲル)と呼ばれる物質を開発した。これは、様々な産業から排出される液状の産業廃棄物を浄化し、下水管へと流すことを可能にする物質である。同社はそのプロセスと商品が環境に優しいことを売りにしている。CFA は古紙などの自然素材から作られており、再利用可能な上、生ゴミの再生利用や工業用水の処理、石油流出時の汚染除去などに利用される。同社はシンガポールの南洋理工大学のスピンアウトとして2016年に設立された。

RAD Green Solutions

バイオメディカル廃棄物処分のための、革命的な非焼却システムを開発

フィリピン南部の都市ダバオに拠点を置く RAD Green Solutions は、数名のエンジニアからなるチームによって設立され、Pyroclave と呼ばれる環境に優しく低コストな廃棄物管理システムを開発した。このシステムは、Pyrolysis と呼ばれるプロセスにより、酸素を使わず極度の高温を用いて医療廃棄物を分解する。副産物が少なく、二酸化炭素を50%にまで抑えつつ効率的にすべての固形物質を炭素化するのが、焼却処理とは異なる点だ。同社はこの技術で多数の賞を受賞しており、直近ではフィリピンの科学技術省による2016 National Invention Contest and Exhibit にて次点者として表彰された。

BlueRen

プラスチック廃棄物を建設的に用いる最良案

旧社名 Karboneum として知られる BlueRen は、プラスチック製のボトルや袋などのゴミから、カーボンナノチューブを生み出す処理プロセスを開発した。鋼と比べ100%増の強度を持ち、優れた電気伝導体でもあるカーボンナノチューブは、光学機器、電子機器、エネルギー蓄積、そしてナノテクノロジーに利用可能だ。同社によると、プラスチックの再利用を除き、ナノチューブの生産プロセスでは事実上二酸化炭素は一切排出されず、有毒ガスを発生させることもない。同社は2016年9月にシンガポールで開催された CleanEnviro Summit にも参加している。

Zenatix

エネルギー消費を極限まで最適化

2013年に設立されたインド拠点のスタートアップである Zenatix は、エネルギーの監視および制御のための IoT 商品を提供している。同社はセンサーやスマートエネルギー計器を使ったシステムを開発しており、これを用いてデータ収集を行い、クラウドサーバを通して分析エンジンにフィードする。そして分析エンジンによって発せられたコマンドを元に、アラートを発したり電子機器を制御したりできる。同社は B2B での事業を行っており、エンジェル投資家や Blume Ventures によって出資されている。

Cleverheat

エネルギー消費を分析、コストを削減

Cleverheat は、太陽熱を利用した代替的冷却システムを開発している企業だ。同社が提供するサービスには、冷却のニーズを評価した上でコスト削減につながる代替案の提案や、冷却コスト削減のための再生可能エネルギーの融合、さらにはモニタリングやエネルギー最適化のためのデータ収集および分析などがある。フィリピンを拠点とする同社は最近、持続可能エネルギーソリューションに焦点を当てた Impact Hub によるフェローシッププログラムへの参加企業に選ばれた。

Avant Garde Innovations

電力を持たない10億人に電力を

2013年に設立された Avant Garde Innovations は、2015年になってようやく正式に事業を開始したばかりだ。同社は、代替エネルギーの提供を通して、インドの国家電力網への依存を減らすことを目標に掲げており、住居用、商業用、農業用などに使用可能な小型の風力タービンを手の届く価格で提供している。100%再生可能なエネルギーに特化する世界初のスタートアップだとする同社は国際的な知名度を得ており、国連のクリーンエネルギーリストにも記載されている。

Intraix

エネルギー消費データを理解する

2012年に設立された Intraix は、エネルギー効率を改善し消費コストを削減するためのソリューションを提案することに焦点を当てている。同社は大企業から飲食料品関連企業、さらには住宅まで様々なユーザのために幅広い商品を展開しており、エネルギー消費のモニターや報告などのサービスを提供している。2016年、同社は Wi-Fi ルーターをスマートホームのハブへと変える、スマートホーム技術を搭載した USB サイズの商品 KLUG を発表した。

BMB Solutions

持続可能かつ豊かな生活環境への道を切り拓く、インパクトある社会的革新を提供する

アテネオ・デ・マニラ大学の卒業生らによって設立された BMB Solutions はコミュニティ主導型の企業で、様々な工夫が凝らされた低コスト多機能組み立て式自転車、Big Mike Bike を開発した。この自転車は様々な部品を組み合わせることで、発電機、蓄電器、送水ポンプ、浄水システム、シュレッダー、フードプロセッサー、洗濯機など幅広い役割をこなす。現在同社は The Spark Project のスタートアップコミュニティの一部である。

Eco2 Green Data Center

不可能なデータセンターが現実に

マレーシアで設立された Eco2 Green Data Center は、グリーンデータセンター機器を製造している。同社は IT 機材を沈めることができる冷却材を開発することで、環境に悪影響を及ぼすデータセンター技術の問題に関して警鐘を鳴らしている。この冷却材の使用により、エネルギーコストを50%削減、二酸化炭素排出量を50%削減、そしてサーバーの信頼度および寿命を30%増加することが可能となる。同社は最近 Global ICT Excellence Awards 2016において Chairman’s Award を受賞したばかりで、現在 Eco2認定ハードウェアにポートフォリオを拡大中だ。

【via e27】 @E27co

【原文】

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