Health 2.0 Asia-Japan 2016で注目を集めたスタートアップ、2016年のヘルステック・シーンの動き【ゲスト寄稿】

ゲストライター by ゲストライター on 2017.1.7

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら


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Image Credit: Health2.0 Asia-Japan

看護婦だった今は亡き祖母が、かつてこう言っていたものだ。

健康なくして、富も名声も意味が無い。

全くその通りだが、鳥インフルエンザに見舞われながらも酉年に入り、祖母の教えを新たに心に思うところだ。昨年末、アジアを視野に入れた健康と医療に特化したカンファレンスが開催され、日常生活における健康の精査の必要性を喚起した。アメリカで始まった Health 2.0 が、メドピア(東証:6095)の協力で初めて東京に来たのは2015年11月のことだが、名実ともに2回目となった「2.0」は以前の虎ノ門ヒルズではなく東京の2つの場所で開催され、前回に増しての努力が見受けられた。

スタートアップを支援する事例としては、Health 2.0 という概念の範疇で、他にもグリーベンチャーズが主催する Digital Health Meetups などの活動が存在する。日本のメドピアは Health 2.0 の東京チャプターを実施するという、素晴らしい仕事を実施してきた。同社はまた、医療業界における人工知能の役割を明らかにすべく、2016年9月に日本橋ライフサイエンスビルでセミナーを開催している。そこには、Abeja のようなスタートアップから多国籍企業の IBM のようなメジャープレーヤーのほか、日本各地や東京じゅうの多くの医療学校までもが参加していた。

東京で2回目となる Health2.0 Asia-Japan 2016 が12月6日〜7日、東京で開催された。シリコンバレーで始まった Health 2.0 は、日本を経由して健康やヘルスケア関連分野に起きている最先端のイノベーションをアジアにもたらした。このカンファレンスでは、スタートアップピッチの開催は言うまでもなく、世界中のテックが紹介された。ヘルスケア・テクノロジーに関わる人々に向けたプレゼンテーションやネットワーキングに加え、ロボットのライブデモや、起業、ブレイクアウトセッションが取り上げられた。今年のテーマは「The Future is Here – Most Advanced Technologies and Healthcare(未来はここにある——最先端のテクノロジーとヘルスケア)」だった。

1日目のセッションは、スタートアップの集積地である渋谷のヒカリエで開催された。ヒカリエには、デジタルヘルス情報を提供してきた DeNA が入居しており、DeNA の創業者兼現会長の南場智子氏は、病に伏した夫を看病するために CEO の職を辞めたことで知られる。残念なことに、Health 2.0 が東京で開催される直前、DeNA 現在の CEO 守安功氏のもとで作られた、ウェルネスに特化したキュレーションサイトの内容が疑わしいことが明らかになった。幸運にも、2日目のセッションは、製薬会社や医療機器メーカーが軒を連ねる日本橋で開催された。

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審査員の皆さん
Image credit: “Tex” Pomeroy

本題に戻ると、スタートアップ・ピッチでは、日本国外からの4チームを含む11チームが登壇した(2015年の登壇チームの2倍以上だ)。MSD 経営戦略部門 ビジネス・イノベーション・グループ ディレクターの樋渡勝彦氏、、スタンフォード大学医学部博士の池野文昭氏、ベンチャーキャピタリストの孫泰蔵氏の3人が審査員を務めた。審査の結果、優勝はカリフォルニアを拠点とする Neuroon が優勝した。Newroon は照明で人々の睡眠を制御するシステムを提供しており、飛行機で世界各地を飛び回っている人や睡眠障害を抱えている人に役に立つテクノロジーだ。Neuroon には、今年アメリカ西海岸で開催される Health 2.0 のアメリカチャプターへの無料参加権が贈呈された。

興味深いことに、Neuroon のアイマスクは、日本国内ではメガネショップの JINS を展開する JIN で購入することができる(ちなみに、Neuroon のプレゼンターは、JINS のメガネをかけていた)。Neuroon と JIN のマーケティング連携は、他のスタートアップにとっても参考になるだろう。さらに、睡眠障害についての関心を刺激するものとしては、筑波大学に本部を置く国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)が12月12日、和光純薬のワークショップとの併催で、東京で第5回年次シンポジウムを開いた。読者の利益のために言えば、このイベントでは、理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI)で神経回路機能を専門とする岡本仁博士が基調講演を務めた。

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Neuroon の Ryan Goh 氏
Image credit: “Tex” Pomeroy

Health 2.0 では、Neuroon の Ryan Goh 氏が最初にピッチを行なった。海外からのスタートアップで他にピッチしたのは、Medable の Kevin Chung 氏、GraftWorx の David Kuraguntia 氏、gripAble の Paul Rinne 氏だ。日本からは、医師紹介情報サービスや、メラノーマを誘発する紫外線の過剰照射をチェックするプロダクトなどが披露され、ピッチの前日には渋谷でライブデモが行われた。聴衆の中には、大手医療企業だけでなく、ヘルスケア業界に焦点を置く小規模ベンチャーらも参加していて、多方面から関心を呼んでいることを物語っていた。

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Medable の Kevin Chung 氏
Image credit: “Tex” Pomeroy

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GraftWorx の David Kuraguntia 氏
Image credit: “Tex” POmeroy

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gripAble の Paul Rinne 氏
Image credit: “Tex” Pomeroy

筆者が興味をそそられたのは、Axon や Cortex という魅惑的な名前のついた、Medable のヘルスケアアプリ向け開発支援製品群だ。そのほか、患者が抱えている問題を快方に向かわせてくれる gripAble の Rinne 氏は、イギリス人によく見られるように唇を固く引き締めて展示に臨んでいた(おそらく、Rinne 氏はドバイでスーツケースを無くしたので、東京の寒さにも関わらず T シャツを着てピッチしていたためか……失敬)。このセッションのトップバッターだった GraftWorx は、日本の医療シーンですぐにも採用されるよう、医院や病院での利用に最適化されたデザインのウエアラブルを紹介した。

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登壇したファイナリスト・チームら(中央は、Newroon の Ryan Goh 氏)
Image Credit: Health2.0 Asia-Japan

さらに特筆すべきは、Health 2.0 Asia-Japan の日本側オーガナイザーは、2015年の Health 2.0 が開催された虎ノ門会場からすぐ近くにある慈恵医科大学が協力していて(病院に詳しいアイ・メディックスの市田会長によれば、慈恵医科大学の病院は、日本のアスリートの間ではケガの手当に定評がある)、今回のイベント活動を見事にコーディネートしていた点だ。2017年の Health 2.0 Asia-Japan のスポンサーやボランティア募集に加え、ビジネス面での機会可能性についてもスポットを当てたい。スポンサーを務めた FRONTEO ヘルスケアの存在が、Health 2.0 という点で特許の重要性に気づかせてくれたからだ。同社は、特許データビジネスの雄として知られている。

他の先進国と異なり、日本の医療システムでは医療行為の特許取得が許されていないが、最近になって、サプリメント食品の特許には道が開かれた。東北でイノベーティブな進展を進める企業など、大学の支援を受けたスタートアップの最前線で注目すべき動きが生じている。筆者が最近気づいたので言えば、飲み会の後に来る二日酔いの「解毒薬」だ。このような消化剤を必要とするような〝災害〟は、一部のネイティブアメリカンには適用されないかもしれない。しかし、もし真面目に科学をとらえ適切なアプローチをとるなら、そのようなきっかけは、スタートアップにとってうまく作用するようだ。

世界のヘルスケアシステムは急速に変化しているが、日本でまだ電子カルテを使う医者がほとんどいないことを考えれば、医療業界を変化させる上で日本には大きな可能性がある。この国には将来取り除かれるかもしれない、〝医療版の Uber 規制〟が依然として多く存在するのだ。日本の技術基盤は先進的であるにもかからず、患者はデジタルヘルスについて情報を十分に知らされていない。

日本は、世界最大の国家医療制度を失うかもしれない前例の無い憂鬱に直面しており、前向きなパラダイムシフトを導入する上で、 Health 2.0 テックがターゲットとする最良の地と言えるだろう。

ゲストライター

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