テクノロジーを駆使して健康を提供するスタートアップ10選ーーStartupbootcamp デジタルヘルスのデモデイ@ベルリン

by Yuki Sato Yuki Sato on 2017.2.20

2月16日、ベルリンでコングレスセンターで開催されたStartupbootcamp デジタルヘルスケアのデモデイ。運営チームと参加スタートアップ。(著者撮影)

欧州発のアクセラレータStartupbootcamp のデジタルヘルスに特化したプログラムのデモデイが、2月16日にベルリンで開催された。

2010年にコペンハーゲンでローンチしたアクセラレータプログラム Startupbootcampは、2年ほど前からフィンテック、モビリティなど領域に特化したプログラムへと進化を遂げている。今回は、デジタルヘルスをテーマに世界各地から10のスタートアップが選出され、3ヶ月間のプログラムの後にデモデイを迎えた。

ベルリンは「多文化、安い、企業・研究機関パートナーが多い」

今回のプログラムの開催地としてベルリンが選ばれた理由は、いくつか挙げられる。まず、インターナショナルな環境であり生活費も他の欧州の大都市に比べると安いことから、世界各地から優秀なチームを惹きつけやすいことだ。実際、今回選抜された10チームの出身国は、ドイツ3チーム、アメリカ2チーム、イスラエル、ポーランド、ポルトガル、イタリア、エストニアと多様である。

二つ目の理由は、参加チームの成長を支援できるパートナーが数多く集まっていることだ。デジタルヘルスに特化したプログラムを開催するにあたって、産業・学術界のパートナーの存在が重要になるわけだが、その点においてもベルリンには欧州最大規模の医学研究機関のシャリテ・ベルリン医科大学があったり、政府機能が置かれていることもあって医療系の会社も多く集まっている。

もともと、数年前からStartupbootcampのプログラムがベルリンで定期的に開催されていたため、プログラムの拠点となる場所があったり(今回は、それまでの拠点だったRainmaking Loftではなく、ドイチェテレコムがスポンサーをしているインキュベート・コワーキングスペースのHubraumが拠点に選ばれた)、プログラムの卒業生や過去に関わったメンターなど、長年かけて成長していったコミュニティが大きいことも、ベルリンが選ばれた理由にもちろん挙げられるだろう。

こうしたメンターや卒業生のコミュニティの大きさとそのつながりの強さ、また「業界のエキスパートとスタートアップをつなぐこと」がStartupbootcampの強みであると今回のプログラムのマネジング・ディレクターを務めるジュリアナ・ツェロンカ氏はいう。今回のプログラムには100以上のメンターが参加しているのだが、その内訳は起業家、業界のエキスパート / 企業、投資家がそれぞれ同程度の人数とバランスよく構成されている。

なお、今回はローカルパートナーとして、製薬・バイオテクノロジー企業のサノフィやミュンヘン再保険などが参加している。

企業とスタートアップをいかにつなぐか?

企業とスタートアップをいかにしてつなぐのか。そのつながりかたには型があるわけではないが、よりお互いの求めているものや関心が分かりやすく明示し、対話の機会を多く設けることによって、建設的なマッチングが起こるように工夫されているように感じられた。

たとえば、今回の10チームが選ばれるプロセスは、500以上の応募チームから選ばれた23チームがベルリンに招待され「セレクション・デイ」でピッチやインタビューをするという流れになっているのだが、セレクション・デイの段階からパートナー企業が参加して、最終的にシナジーが生まれそうなチームとの対話が始まっている。

また、医療業界というととりわけ規制が大きく、その中身も複雑な業界であるが、そこは経験豊富な業界エキスパートたちがスタートアップに向けてワークショップをするようになっている。保険制度や医療機器のクラス分類、ドイツの医療市場といった業界知識がスタートアップに提供されたという。

デモデイの合間に行われたネットワーキングタイム。スタートアップと投資家・企業との対話が盛り上がる。(著者撮影)

メンタルヘルス、不妊、喘息など、さまざまな病気・症状に取り組むチーム

さて、そろそろ今回のプログラムに選抜された10チームを以下に紹介したい。

Coronect、ドイツ:心臓血管の疾患をもつ患者に、自宅で使え、簡単に入手できるデバイスを提供。アプリとデバイスを使って、自分で心電図を測定・モニターできる。これまで医師の診断や申請などで長期間かかっていたプロセスを短縮することが目標であるという。現在はプロトタイプ段階。

Couch、ポルトガル:メンタルヘルスの問題を抱える人に対して、心理士を紹介するウェブプラットフォーム。メンタルヘルスの問題を抱えていても、専門家の支援を求めることができない原因の一つが恥の意識を持ってしまうことであるという。オンラインで簡単に専門家にアクセスできるようにすることで解決することが目的。ブラジル、ポルトガルの5500万のポルトガル語圏をターゲットにする。

Dermtest、エストニア:皮膚ガンの早期発見のためのサービスを提供するPaaS(Platforms-as-a-Service)を開発。
地元の専門家にビデオを介して診断してもらうことで、シンプルかつスピーディなサービス提供を目指す。ドイツ国内でパイロットプログラムを展開中。

FindAir、ポーランド:喘息患者向けにアプリと薬剤注入器に付けるスマートデバイスを開発。環境や薬剤の摂取頻度・時間などのデータを集めて、喘息を引き起こす要因を分析。患者や医者に情報提供する。今はプロトタイプの段階。

Innovitas Vitae、イタリア:女性の不妊治療を目的に、バイオマーカー診断のための血液検査と免疫システムを改善するサプリメントを提供。これまで不妊と診断されるまでかかっていた期間を短縮することが目的。

iRewardHealth、米国:肥満の改善のために、ユーザーの行動習慣を変化させるプログラムを企業向けに提供。ユーザーの行動に合わせてフィードバックを行い、各個人の内在的な動機が維持されるようにする。

MediLad、ドイツ:女性向けに、性病やリプロダクティブヘルスに関する知識やアドバイスをチャットボットが提供するメッセージングプラットフォームを開発。昨年10月にローンチ後、英語圏の若い女性を中心に1万5000人が利用。機械学習と自然言語処理を活用することで、スマートなコミュニケーションツールを開発。

Memoria、イスラエル : アルツハイマー病患者が日々のルーティーン活動を実行できるように支援するソフトウェアを開発。日々のルーティーンとその進捗をアプリで表示・管理する。イスラエルで既にパイロットプログラムを実施。近日、シャリテ・ベルリン医科大学と協力してパイロットプログラムを開始する予定。

Paralign、米国:メンタルヘルスに問題をもつユーザー向けに、日々の考えや気分をトラッキングし、似たような思考パターンの人やコーチにつなぐ機能を提供するソフトウェアを開発。AIを活用して、データの増加とともにスマートにする。将来的に医師やセラピストなどの専門家のネットワークともつなぐことを計画。

YuScale、ドイツ: 糖尿病患者が、毎回の食事の炭水化物量をすぐに測定できるように、モバイル計量器とアプリを開発する。現在、パイロットプログラムを実施中。より簡単に食事の栄養情報が入手できるようにすることを目指す。

喘息患者向けに製品を開発するFindairのプロトタイプとアプリ。(著者撮影)

メンタルヘルス、不妊、リプロダクティブヘルス、喘息、糖尿病、肥満、皮膚ガン、心臓血管系の疾患など、各チームは特定の症状・病気の患者をターゲットに、ソリューションを開発している。多くのチームに共通していたのが、いかにユーザーにとって使いやすいUIを実現するか、関連データを収集するか、専門家ネットワークとつなげるかという課題だった。

取り組む対象の症状や病気によって、ユーザーが感じる心理的・物理的な壁は異なるため、それぞれに適したUIが求められる。各チームとも、ユーザーと向き合いながら開発を進めている印象が得られた。

このプログラムで築かれたネットワークと知見をベースに、今後各チームがどのような成長をしていくか。引き続き、レポートしたい。

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