家事代行マーケットプレイスのHelplingが1,100万米ドルを調達

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Image credit: Helpling

オンラインマーケットプレイスという業態は、スタートアップに最も人気のあるアイデアの一つだ。Uber、Airbnb、Grab などもすべてマーケットプレイスに含まれる。そのアイデアは驚くほどシンプルで、いま流行りのアルゴリズムを使って需要と供給を一致させるというものだ。とはいえ、うまくいかないこともよくある。

Helpling もまたオンラインマーケットプレイスの一つで、住宅所有者と家事代行サービスのマッチングを行っている。自宅の掃除が必要なら、Helpling で頼んでみたらどうだろう?同社は、野望の実現に向けて新たに1,100万米ドルを調達し、資金総額が7,100万米ドルになったことを発表した。

Helpling は有名企業 Rocket Internet から派生したスタートアップだ。最新の資金調達ラウンドをリードしたのは、ドイツのスタートアップ投資家 Rocket Internet とカタールの通信事業者 Ooredoo の合弁会社である APACIG。APACIG は多数のスタートアップを支援しており、Helpling もその中の一つというわけだ。

Helpling の調子が落ち込んでいると TechCrunch が報じている理由は、前回の資金調達ラウンドと比較して市場価値が下がっていることにある。あまり良い兆候ではない。

Helpling の市場価値は、2015年3月に4,500万米ドルを調達したシリーズ B の時と比べて大幅に低下した。

多くのベンチャー企業と同様に、何百万ドル注ぎ込んだとしても、Helpling が危機を乗り越え、企業として生き残ることができるのかは不透明だ。米国でも Homejoy というスタートアップが同じように話題になったが、結局失敗に終わった。我々は Helpling に連絡を取ってコメントを求めたが、現在は返事を待っている状態だ。

Helpling の名誉のために言っておくが、同社のビジネスモデルはアセットライトであり、共同設立者の Benedikt Franke 氏もプレスリリースにおいて、「コアビジネスモデルは、来年中の黒字化が確実な軌道に乗っています」と述べている。

しかし、アセットライトなモデルは真似されてしまうことがよくあり、特にネットワーク効果を活用して支配的なプレイヤーになるまでは注意が必要だ。

重要なのは、それぞれの地域における熾烈な競争を勝ち抜き、Helpling が最後まで生き残ることは可能だろうか、ということだ。ネットで「cleaning services Singapore(シンガポールの清掃サービス)」と検索してみると、Helpling と似たようなマーケットプレイスや直接窓口を設けている業者など、非常に多くの選択肢が提供されていることがわかる。

資金調達の発表とともに、Helpling は、窓清掃、家具の組み立て、塗装作業を新たにマーケットプレイスに追加することを発表した。つまり、Kaodim などのスタートアップのように、あらゆるサービスにも対応したマーケットプレイスを始めようとしているのだ。

価値の固定化

Helpling は価値を固定化し、仲介機能の低下(つまり、買い手と売り手がマーケットプレイスを離れて直接取引すること)を防ぐ方法を見つける必要がある。

仲介プラットフォームに対するクライアントのロイヤリティが高くないので、難しいモデルだと思います。

そう語るのは、サービス提供業者と不動産物件とを結ぶ B2B プラットフォーム Pegaxis の設立者 Poh Chen Wei 氏。

顧客にとっては、清掃サービスならどの業者でも構わない、というわけではない。そこが Helpling の課題だ。たとえば Uber では、顧客はどの車に乗るかあまり気にしないので Uber を使い続ける。ところが清掃業者となると、一度信頼できる人を見つけたら、ずっとその人に依頼したいと思うはずだ。そうすると、仲介業者抜きで当事者同士で取引をしようということになりかねない。

Alibaba、Amazon、Carousell などのプラットフォームの場合だと、その解決手段はわかりやすい。売り手を増やせば商品が増え、それによって買い手が増えるようになる。見事な好循環。しかし、Helpling の場合、こうしたネットワーク効果はあまり強くないようだ。

プラットフォームにできることは、高いロイヤリティを持っているユーザに対して見返りを与えることだけです。プラットフォーム上で入手できるモノを彼らに与え、それを利用してくれたことに対して見返りを与える。その繰り返しです。そのため、プラットフォームのゲーム化が効果的なのです。

「Uber のカーレンタル版」とも言える Beep a Ride を運営するスタートアップの設立者 Angeline Viray 氏は指摘する。

家庭教師のマーケットプレイス Learnly の設立者 Joel Khoo 氏の場合、ソーシャル要素を追加することが解決につながる可能性があると考えている。

Joel 氏はこう語る。

清掃業者には、ソーシャルメディアのフィードのように、その結果を記録するチャネルやフィードを提供した方が良いと思います。これは、ClassDojo のような類似の教育プラットフォームが行っていることです。教師が子供のために何をしているのか親に見てもらうのです。マーケットプレイスの多くは書き込まれたレビューに重点を置いており、ソーシャルフィードのパワーを見落としています。清掃スタッフはもう少しソーシャル通な方が良いのではないかと考えています。

究極的には、等式の両辺に価値を提供することが重要なのだ。業者と顧客が Helpling を利用することで得をし、かつ彼らにとって Helpling が必要不可欠な存在となるような戦略とはどんなものだろうか?

私は以前に Helpling を利用したことがあり、自動支払い機能が便利だと思った。また、他のユーザにも感想を聞いたところ、その人は Helpling が保険(清掃業者が家の中でケガをした時のためのもの)を提供していることを評価していた。しかし、おそらく他にもすべきことが多く残っているだろう。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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