IMJ Investment PartnersがSpiral Venturesに社名を変更——MBOにより、名実ともに機動力のある日本・アジアの独立VCへ

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Spiral Ventures Pte Ltd / Spiral Ventures Asia Ltd 代表の堀口雄二氏(右)、Spiral Ventures Japan LLP 代表の奥野友和氏(左)

IMJ Investment Partners(IMJ-IP)は23日、Spiral Ventures に社名変更したことを明らかにした。正式にはシンガポール法人の Spiral Ventures Pte Ltd(旧 IMJ-IP)のもとに、東南アジアやインドを中心に投資活動を実施する Spiral Ventures Asia Ltd(新設)と、日本と東アジアに投資活動を実施する Spiral Ventures Japan LLP(旧 IMJ-IP Japan)から構成される企業グループとなる。

Spiral Ventures Pte Ltd および Spiral Ventures Asia Ltd の代表には、これまで 旧 IMJ-IP の代表パートナーを務めた堀口雄二氏が、また、Spiral Ventures Japan LLP の代表には、旧 IMJ-IP Japan の代表パートナーを務めた奥野友和氏が就任する。

Spiral Ventures グループ会社の資本関係

これとあわせて、社名変更および新会社設立にあたり、MBO(マネジメントバイアウト)が実施されたことも明らかになった。Spiral Ventures Pte Ltd において主要株主であったカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の持分株式の多くを、堀口氏と他株主らが買い取り。また、Spiral Ventures Japan LLP については、Spiral Ventures Pte Ltd と奥野氏の共同出資という資本構成に落ち着いた。

IMJ-IP は堀口氏が IMJ で海外投資業務を従事していた際、2012年に設立した会社に端を発する。その名前から IMJ の CVC のように思われることがあるが、実のところは多数の LP を抱える純然たる独立系 VC だった。そこへ来て、昨年4月にはアクセンチュアが CCC から IMJ を買収。それまでも IMJ と IMJ-IP の間に直接的な資本関係は無かったものの、もはや、IMJ-IP は IMJ という名前を冠し続ける必要が無くなってしまったわけだ。

今回の名称変更(リブランド)の背景には、CVC ではない、独立性の高い純 VC であることを、既存および潜在の LP や投資先に明確に訴求する意図があるようだ。

新体制のもと、新しいファンドも目下セットアップしている。堀口氏によれば、Spiral Ventures Asia では、東南アジアとインド向けのファンド「Spiral Asia Global Fund」を組成中で、東南アジアのグロースステージ(旧体制ではアーリーステージが対象だった)とインドのアーリーステージのスタートアップを投資対象とする。

Spiral Ventures の東南アジアでの有望スタートアップの発掘には、従来から定評があるようだ。その顕著な例の一つであるが、大阪で毎年開かれるスタートアップ・カンファレンス HackOsaka では、McClinica、PawnHero、Docquity と Spiral Ventures 一押しのポートフォリオ・スタートアップが、過去3年にわたり連続して優勝の座を手にしている。

現在、ジャカルタに1名、シンガポールに4名体制で回している。インドでのディールソースには、ニューデリーにある、スタートアップのグロースハックを支援する Technology 9 Labs とのパートナーシップを活用している。Asia Global Fund の投資地域は、ASEAN 7カ国、インド、ミャンマー、バングラデシュと幅広い。(堀口氏)

一方、Spiral Ventures Japan では、これまでの IMJ-IP Japan Fund を名称変更し Spiral Ventures Japan Fund として運用を続ける。60億円の募集規模に対して既に50億円以上の出資金が集まっており、最終的には70億円規模に着地させたいと、奥野氏は意気込みを語った。Japan Fund の LP には、日本の大手企業のほか、中小企業基盤整備機構なども名前を連ねているという。

(モバイル特化とかよりも)最近では、リアルビジネスとの融合やリアル事業の変革などが投資のホットトピックになっているので、日本での投資領域は X-Tech が多い。CCC や東急電鉄のオープンイノベーションもお手伝いしてきたので、そういうリアルテックとスタートアップの協業支援にも、強みが出せると思う。

ただ、オープンイノベーションに特に注力するということはない。ファンドなので、LP にそういうニーズがあれば、お手伝いすることもあるということ。(奥野氏)

Japan Fund の投資対象には韓国や中国も含まれるが、現在のところは人的リソースの問題から日本国内にとどまっているようだ。Spiral Ventures Japan では年内に7人体制にまでチームを増強する予定とのことで、マッキンゼーやカーライルの日本代表を歴任した平野正雄氏がシニア・アドバイザーとして、奥野氏のドイツ証券時代の後輩にあたる千葉貴史氏がプリンシパルとしてメンバーに加わる。

IMJ-IP 時代からの出資を含め、これまでに、Spiral Ventures Asia は39社、Spiral Ventures Japan は10社に出資をしている。新ファンドの組成や機動力の向上により、今後は Spiral Ventures の名前を資金調達のニュースで目にする機会も増えることだろう。

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