「指摘は事実、管理体制が甘かった」ーー行政処分勧告を受けたソーシャルレンディング「みんなのクレジット」独占インタビュー

2017年3月24日(金曜日)に証券取引等監視委員会から金融庁に対する行政処分の勧告が出された株式会社みんなのクレジット(東京都渋谷区、代表取締役 白石伸生氏)。クラウドポートニュースは、3月29日(水曜日)夕方、同社の中核的な幹部であり投資運用部の責任者であるS氏にインタビューを実施した。

勧告において指摘されている全ての事項について回答を求めたため、インタビューは3時間以上に及んだが、まずは速報として要旨をお伝えしたい。

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みんなのクレジットウェブサイト

——行政処分がくだされる前ではあるが、現時点での率直な感想はあるか。

みんなのクレジット投資運用部責任者(以下、「」内はすべてS氏の回答)
「どんな理由であれ、投資家のみなさまを不安にさせたことは申し訳ないと思っています。私も白石も心から申し訳ないと思っております」

——貸出先について、投資家に誤解を生ぜしめる記載があった。

「投資の募集勧誘については金融商品取引法、資金の貸付に関しては貸金業法が対象法令になります。それぞれ管轄する規制当局が異なるため、都度、双方の確認をとりながらサービスの運営を進めていました。特に融資先情報の匿名化については、事前に厳しく指導されていたこともあり細心の注意を図り進めていました。主たる融資先であった親会社は不動産開発事業を行っており多様な案件を取り扱っていました。匿名性を高めるために、案件が異なる場合には、融資先が同一でも表現を変えていました。その結果、ほぼ同一の貸付先でありながら、複数の不動産事業者に貸付けをしているような見え方になってしまいました。現在は企業ごとにナンバリングを行い、しっかりと識別はできるように修正を行っています」

——行き過ぎた匿名性追求が原因とのことだが、他社を見ればだいたいの水準も分かるのではないか。匿名性を高めるというのを口実に、意図的に投資家を欺こうとしてたということはないか。

「あくまで意図的ではありません。他社の中には、融資先を具体化しすぎている会社もあるのではないかと考えていました。東京都に2,3回『これはOKなんですか』と相談したこともあります」

——貸付けの中には担保設定していないものが存在しているにもかかわらず、ファンドの貸付債権が保全されているかのような誤解を与える表示で募集したと指摘されている。

「特定のファンドが埋まりきらない際に、追加のファンドを募集することがありますが、内容的には一つ目のファンドと同じものであったため、追加ファンドについては担保の契約をしていないものがありました。これに関しては管理が杜撰であったと反省をしています。指摘を受け、現在は契約書をすべてまき直しています。また、担保について、未公開株であったとの指摘がありましたが、これについては秘匿性の観点から、あえて上場、非上場について明言をしておりませんでした」

——ファンドの償還資金に他のファンド出資金が充当されている状況があると指摘されている。もしそのような事態があればポンジ・スキームではないか。

「まず、指摘されていることは現象面としては100%認めます。事実としてはおっしゃる通りです。物件が売れたら、その売上が立ってから返済するのが原則ですが、過去には売上があがる前に返済していることがありました。これは融資先である甲社の管理が杜撰であったことが原因ですが、複数の融資や返済がある中、これではファンド出資金が循環しているととられても仕方ありません。しかしながら、これはポンジスキームではありません。もし、これがポンジ・スキームであれば刑事罰になってるはずです。あくまで、甲の管理が杜撰だったために起こったことです。現在は、融資と対象案件の対応関係をチェックし、問題がないことを確認しています」

——事務的な落ち度があったということだが、「未必の故意」という言葉もある。このままの体制では危ういという自覚はなかったのか。

「個人的には、このままの体制では危険だと思っていました。免許取得から1年後にあたる2017年3月くらいには検査があるだろう、という予想を立て、実は金融庁の検査が始まる2週間前に、内部で模擬検査を実施しようとしていた矢先でした。結果的にはその前に検査が入りこのような状況となってしまいました」

——金融二種業者としては、融資後も資金の活用状況などを追跡するなど貸出先をモニタリングしなくてはならないのではないか。貸出先がグループ企業だから、モニタリングが甘くなっていたのか。

「社内なので、フォーマルに報告を求めなくとも、インフォーマルに情報が入るという甘えがあったことは認めます。ただし貸出条件、審査、モニタリングに関しては、外部の弁護士も含めた融資審査会を設け、公平に行っています」

委員会の指摘において株式会社甲とされている企業は、債務超過の時期があるなど、借入過多であると指摘されている。

——甲社が借入過多といわれてるが、融資先としての健全性はどうなのか。

「検査基準日時点ではたしかに甲社が借入過多の状態にあったことは事実です。ただし甲社は、みんなのクレジットが募集を開始した16年春ころから不動産事業を拡大しており、不動産の事業は仕入れが先行するため、ある一時点だけを切り取って会社の経営状態を判断されてしまうと厳しいものがあります。現在は売上も立っており、単月黒字化を達成しているので、ファンドの返済が困難と指摘された検査時の状況は回避されていると考えています」

甲社が11月に増資するまで、甲社は債務超過と指摘されており、増資は債務超過を解消する目的もあったものと考えられる。

——グループ会社の増資についても、投資家から募集したファンド資金が流用されているとの指摘がある。

「みんなのクレジット社の増資をするために、まず親会社である甲社の増資を募りました。みんなのクレジット社が好調であったことから何人かの外部投資家に引受けを承諾していただきました。本来であれば、甲社への出資が完了した後に、みんなのクレジット社へ増資をするべきところ、見切り発車で外部投資家からの入金前に甲社からみんなのクレジット社への増資を実行してしまいました。結果的に、ファンドの出資金を増資に流用したと捉えられても仕方がない状況となってしまいました」

——今回の指摘を受けて、どのように対策をしていく予定か。

「勧告内容については粛々と対応していく予定ですが、すでに指摘された事項の80%程度は検査期間中に改善されており、金融庁検査官もそのことを理解してくれています。現在は、コンプライアンス態勢、内部管理態勢の強化を中心に進めています。検査期間中にコンプライアンス部門に1名、管理部門に2名、人員を追加しています。また、情報伝達や資金管理の仕組みについて、できる限りシステム化する方向で動いています」

同社のスタンスは、親会社である甲社の資金管理体制が杜撰であることが、今回の指摘の大きな原因の1つであるという立場である。インタビューでは、みんなのクレジットと甲社を含めたグループは、管理部をグループで共通化していることが判明した。

——グループとはいえ、融資元と融資先がそもそも管理人員を共有していることは問題ではないか。

「問題だったと思います。利益相反が起きないよう、意思決定の段階では第三者が参加する融資委員会を作るなどしていたが、その後の経理の作業は同じ人がやっていました。今後は体制を変えて参ります」

最後に、結局投資家の資金がどうなるのかについて聞いた。

——投資家の資金は今後どうなるのか。

「実績を積み重ねることでしか、失った信頼は取り戻せないと思っています。指摘の通りの不備等はありましたが、それは書類上のことであり、ファンドには実態があり、実際に昨日も分配を行っています。預り金については払い戻しに応じていますが、既に運用中のものは貸付済みであり、途中で返金をすることは難しくなってしまいます。また、信用不安が無いということについて、証拠として、情報開示の制約がある中でどのように表現したら良いか、また、何らかのものが出せないかということは考えております」

同社の姿勢はあくまで、今回の指摘は「現象面では100%正しい」ものの、その理由を行き過ぎた匿名化や、自社および親会社である甲社の管理体制の不備からくるとし、悪意はなかったという立場をとっている。

しかしながら、ある投資家は「代表である白石氏の経歴や、アグレッシブな性格を考えると、単なる体制不備の問題と言い切れるのか疑問が残る」と語る。意図的であったかどうか検証することは困難だが、投資家の信頼を回復するためには、企業体質を抜本的に改善することが必要と言えよう。いずれにせよ、現在運用中のファンドがすべて償還されるまでこの事件は決着したとはいえず、幕引きまでには十数ヶ月かかることになる。

クラウドポートニュースでは、引き続き本件について注視し伝えていく。

転載元記事:みんなのクレジット独占インタビュー「指摘は事実。管理体制が甘かった」

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