シンガポールのオンライン不動産情報サイト99.co、シリーズA+ラウンドで790万米ドルを調達——新たなライバルの登場で業界内の競争が激化

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Image credit: 99.co

シンガポールの不動産ポータルサイト99.co は本日(4月7日)、790万米ドルの新規資金調達を行ったと発表した。同社が「シリーズ A プラス」と呼ぶ今回のラウンドでは、同社の既存投資家であり役員メンバーでもある Sequoia India と、Facebook の共同設立者 Eduardo Saverin 氏がリードした。他にも、前回も投資した East Ventures と500 Startups もこのラウンドに参加した。

このスタートアップは2015年1月に160万米ドルを調達しており、当時の評価額は800万米ドルであった。今回のラウンド時点での評価額は公表されていない。

99.co は、販売または賃貸の不動産住居のリストを提供している。不動産業者はウェブサイト上のリストに物件を登録することができ、住居を探しているユーザは物件の閲覧や価格の比較、内見の予約をすることが可能だ。

現在、主にシンガポールおよびインドネシアのジャカルタとスラバヤで事業を展開している。これらの都市ではデータ解析や不動産開発者用ツールなどの追加サービスを提供し、物件探しに関して多面的にカバーしようとしている。

CEO の Darius Cheung 氏によると、今回調達した資金は主として「まだまだ成長の余地がある」この2か国でのビジネス構築に使われる予定だという。インタビューで同氏は「潜在的な市場の5%にやっと届いたかどうかといったところです」とジャーナリストに対して語った。計画では今年中にインドネシアの8都市に展開する予定だ。

同社はまた、東南アジアで2つのマーケットに追加展開するとしているが詳細は未定だ。ベトナム、タイ、フィリピンといった Cheung 氏の言うところの「よくある顔ぶれ」が候補となっている。彼はこう説明している。

不動産会社やデベロッパに関する多くの市場力学があり、理解しようと努めているところです。

調達資金の一部は、雇用、技術、研究開発に充てられる。約30名を追加雇用し、技術スタッフと、CFO や HR 役員のような上級管理職を確保したい考えだ。シンガポールの他の多くのスタートアップと同様、99.co もまた人材不足の影響を受けており、地元大手の Grab や、グローバル企業の Google や Facebook などと優秀な人材をめぐる競争にさらされている。

今回のラウンドの先にはシリーズ B が控えているものと見られ、同社は新規投資家に対して取引を今年中に終了できるよう求めている。

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共同設立者兼 CEO Darius Cheung 氏
Photo credit: 99.co

新たな挑戦者あらわる

シンガポールでは不動産リストや不動産会社の多くがオンラインに移行しており、スタートアップ各社はこの需要に応えようとしている。SimilarWeb によると、アクセス数の面では PropertyGuru が市場をリードしている。単なる不動産リストに留まらず、同社はマンションや家の内見をオンラインの仮想空間で行えるほか、不動産に関するメディアコンテンツや実験的試みを展開している。

iProperty はマレーシアでは市場をリードしているものの、シンガポールでは3位となっている。シンガポールに本拠を置く他のスタートアップとしては、公団住宅に特化する OhMyHome と、ブロックチェーン技術を使って不動産の更新を記録し、その価値をモニターする PopetyReidao がある。

Cheung 氏は、データ解析、位置データによる検索、ユーザエクスペリエンスなどの99.co の技術と機能が他社との差別化を実現し、シンガポール市場で2位を獲得するのに役立ったと感じている。

彼によると、同社が目下懸念するのは新興の小規模なライバルの出現だ。

彼らはより機敏で、革新的で、ディスラプティブな傾向があるので、私は新しいスタートアップを競争相手として捉えています。最終的には、おそらく5〜10年後、シンガポール市場で生き残っている大手はおそらく2社程度でしょう。それがどの企業になるのかまだ見当もつきません。(Cheung 氏)

99.co は、物件数、アクセス数、収益などの「すべての指標」が前年比で150%伸びたという。ただし今回の資金調達以降、収益などの具体的な数値は公表されていない。

サイトには常時15万件の不動産が掲載されており、毎週約8,000件が追加されているという。99.co はシンガポール全体の物件の約90〜95%をカバーしているそうだ。うち約10%は99.co にのみ掲載されており、他の不動産のサイトでは見ることができない。2016年、シンガポールのウェブサイト全体では170万人のユーザからアクセスがあった。

同社はコアとなる機能に注力したいことから、PropertyGuru のように買収によって機能を拡大するつもりはないと Cheung 氏は述べている。より現実味のある戦略としては、データや3D による物件の視覚化などの分野で他の企業と提携することだ。将来的な実現の可能性はあるとしているが、今日明日の段階で同社が仮想現実(VR)や拡張現実(AR)に手を出すことはありそうにない。

現時点では、空室状況や価格設定などの情報がユーザの意思決定において重要であると考えています。物件の購入や賃貸を希望するほとんどのユーザが物件を決める前に内見をします。したがって、好みの物件を探し当てられることにこれからも注力していく予定です。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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