沖縄をスマートにする「Cloud ON OKINAWA」発足、BASEやfreeeなどクラウドスタートアップたちが地方創生に集結

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CPIやTwilio、Jimdoなどクラウド関連サービスを提供するKDDIウェブコミュニケーションズ(以下、KWC)は4月18日、沖縄県内の課題を情報技術(IT)で解決するためのプロジェクト「Cloud ON OKINAWA」の発足を発表した。

プロジェクトに参加するのは沖縄県内の糸満市、沖縄市、竹富町、宮古島市の4市町村とKWC、沖縄セルラー電話、CAMPFIRE、Square、freee、ライフイズテック、ラクスル、Ryukyufrogsの9社。プロジェクトに参加する4市町村9企業は連携協定を締結し、県内中小事業者へのITサービス導入、地域の課題解決、地域の人材育成を三つの柱として取り組む。

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具体的には県内小売事業者の情報サイトやネットショップの開設、スマートフォンに対応したオンラインカード決済などの提供、一次産業のIoT化、若年層へのプログラミング学習によるIT関連人材の育成などを実施する。

「沖縄観光の中心地でクレジットカードが使えない」を解決したい

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KDDIウェブコミュニケーションズ代表取締役の山崎雅人氏

発起人となったKWC代表取締役の山崎雅人氏は、沖縄で増加する観光客への対応や県民所得の向上、中小企業のIT化などの課題をヒアリングし、これを解決することが沖縄、ひいては全国の地域の創生につながると語る。

「日本企業の99%が中小企業で、労働人口の70%が(こういった中小企業の)雇用対象になっている。一方でこれらの企業が抱える課題は2013年から変わっていない。IT投資は導入効果がわかりにくく時間がかかるため人も育たない。結果として販路も拡大できない」(山崎氏)。

また、プロジェクトの中心的な存在である同社代表取締役副社長の高畑哲平氏は、実際に出くわした宮古島でのこんな体験を共有し、具体的な立ち上げのきっかけになったと語った。

「宮古島に行った時に沖縄そばを食べたんですが、そこに中国の観光客がいらっしゃったんです。彼らはどうやら空港から直接やって来たらしく、支払いタイミングで現金を持っていなかった。そこでカードを使おうとしたんですがお店側は使えないという。結果的に私が通訳して一緒にATMに行って現金決済したんです。こんな観光の中心地でもクレジットカード決済ができないということに驚愕しました」。

地元小売店や企業のPR不足など、地域にはテクノロジーで解決できる問題がある。そう感じた高畑氏らは地域が抱える問題を整理し、対応するソリューションを提供するクラウド系のスタートアップに声をかけることで今回の取り組みが実現したのだそうだ。現在は4市町村との連携だが、今年中には沖縄中の3分の1との締結を目指すという。

税金に頼らず、クラウドと地元の力で地域を活性化する

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KDDIウェブコミュニケーションズ代表取締役副社長の高畑哲平氏

今回の取り組みは「できる限り税金に頼らない方法で」(高畑氏)プロジェクトを推進する方針なのだそうだ。いわゆる補助金狙いの「ITゼネコン」方式の取り組みとは違う。

具体的な活動として沖縄の地元でよく読まれているフリーペーパーと連携し、設置している加盟店に対してウェブサイト作成のレクチャーが受けられるセミナーを提供する。今回ウェブサイト開設ツールとして提供されているBASEやJimdoなどは無料で開始できるのでハードルは低い。同様にクレジットカード決済を導入したいのであればSquareの利用方法をここで知る、という具合だ。

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Cloud on OKINAWAサイト。問い合わせ窓口として設置される

一方でやはり画像を作ったり素材写真を撮影したりという作業は、多少の知識が必要になる。こういうITリテラシが必要な作業については、現在、竹富町で取り組みが始まっているテレワーカーの移住者に対して直接事業者が仕事を発注し、制作サービスを提供してもらうような連携も始まっているということだった。

地域における教育とクラウドファンディングの可能性

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CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏

沖縄市と既に取り組みを開始していたのがCAMPFIREだ。沖縄市創業支援拠点「STARTUP CAFE KOZA」とローカルパートナーを組み、ギークハウスなどのプロジェクトをクラウドファンディングで支援している。同社代表取締役の家入一真氏は最近話題の別府温泉などの取り組みを披露しつつ、地域創生には誰もが声を上げる場所が必要と語る。

「CAMPFIREローカルという取り組みで全国35エリアとパートナーと一緒にプロジェクトに取り組んでいます。テクノロジーで地域に住む一般の人の声を拾い、小さなものでもいいので積み重ねることが地域創生の本質ではないかと考えています」。

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また、プログラミング教育を提供するライフイズテック代表取締役の水野雄介氏は教育の観点から地域創生に取り組むと、具体的な宮古島での官民の仕組み作りに期待を寄せていた。

「プログラミング教育は世界20カ国で必修化されており、日本でも2020年以降にその流れがやってきます。宮古島では秋に開催を計画していて、中学生や高校生にアプリやゲームを作ってみようというようなプログラムを提供予定です。地元で働ける産業を作り出すことが地方創生に必要。教育委員会や地元企業と連携し、教育のエコシステムを作りたい」(水野氏)。

こうしたスタートアップやテクノロジーを活用した地域活性の取り組みは福岡市の活動が話題になっている。沖縄でも地元企業や個人事業者とクラウドを活用したエコシステムを構築することができれば、これに続く流れが生まれるかもしれない。

こういう取り組みに求められるのは具体的な成果だ。また何か結果が出てきた段階でお伝えしたい。

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