Oculus Riftに新たなライバルが出現か?——上海発のHypereal、363米ドルで一式が揃う低価格HMD製品群「Pano」を発表

by Tech in Asia Tech in Asia on 2017.4.6

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Hypereal 設立者 Huang Chaiming(黄柴銘)氏(29歳)
Photo credit: Hypereal

昨年の中国の VR 市場は3億米ドルと推定されているが、ほとんどのスタートアップは海外進出していない。国内では格安、低品質のヘッドセットが浸透しており、一方で国際的なマーケットを賑わすのは Oculus Rift や Google Daydream など欧米の VR 企業による製品だ。

Huang Chaiming(黄柴銘)氏はここに革命をもたらしたいという。彼のスタートアップ Hypereal は、ハードウェア、ソフトウェア、コンテンツなど、VR(仮想現実)のあらゆる分野に取り組んでいる。

彼は Tech in Asia にこう語った。

ある意味で Oculus と似ているかもしれません。私たちは、彼らの持つあらゆるテクノロジーを持っています。また、彼らが現在開発中のあらゆる技術を私たちも開発しています。

しかし Chaiming 氏によると、Oculus の市場はずっと小さく、事業化のメソッドも持ち合わせていないという。

彼らが持っているのは、Facebook から得た資金だけです。彼らがしているのは研究です—彼らは研究所のようなものなのです。VR を真の意味で世界に持ち込むことは彼らには難しいでしょう。

大胆な挑戦として、Hypereal は自身の強みとなる強力な基礎を築きつつある。同社は昨日(3月27日)、ヘッドセット、ワイヤレスコントローラ、位置追跡用カメラなど、仮想現実のハードウェア製品群を発表した。同社によれば、Pano と呼ばれるヘッドセットは 2K の OLED スクリーン、120度の視野、11ミリ秒の反応速度を備え、競合他社に匹敵するかそれ以上の性能を有しているという。なお、一般的に理想とされる反応速度は20ミリ秒以下だ。

また、Oculus Rift や HTC Vive などのハイエンド機器とは異なり、Hypereal のヘッドセットは363米ドルという低価格で販売される。

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北京で開かれた Hypereal の記者会見にて語る Chaiming 氏
Photo credit: Hypereal

上海拠点の同社は独自の社内 SDK を開発し、サードパーティ開発者やコンテンツ制作者に公開した。また、位置追跡に使用される Valve の Lighthouse に似たレーザー測位技術もオープンソース化している。

同社のスタイルはハードウェアだけに特化した多くの中国のスタートアップとは対照的だ。Niko Partners によると、2015年と2016年、中国国内の VR 関連投資の78%がハードウェアに集中した。

Chaiming 氏は言う。

ハードウェアを売るのは難しいでしょう。そんなものは誰も欲しくないのです。

そのため、同社はソフトウェアに大きく投資している。具体的には VR のコンテンツ作成ツールだ。Cast と呼ばれるプログラムでは、例えば宇宙船などの3D モデルを手早く簡単に作ることができる。Google の Tilt Brush と似ているものの、若干動作がぎこちなく、スムースさには欠ける。

目標は、コンテンツ制作者がアイデアのプロトタイプやスケッチを素早く作成し、他の人とシェアできるようにすることだ。今後 Cast では、複数のユーザが同じ仮想空間を共有することができるようになる。

また、Directool というアニメーション作成プログラムも開発中である。Hypereal の2つのワイヤレスコントローラを使用すると、あらかじめ用意された風景(または自作のもの)にキャラクタをドラッグアンドドロップで配置し、シーンごとに背景を切り替えることが可能だ。Cast と Directool は、どちらも5月末に一般公開が予定されている。現在ベータテストの段階だ。

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Hypereal のコンテンツ作成ツール「Directool」を使えば、ドラッグアンドドロップでキャラクタをアニメの背景上に配置することができる
Photo credit: Tech in Asia

筆者が Hypereal のヘッドセットとコントローラを使って試したところ、慣れるのはかなり簡単だった。木々を空中に飛ばし、主人公の少年にあたりを駆け回らせた。これらはわずか数回のアクションで制作可能だった。

これは Google のアニメーションツールである Daydream に近いが、もっと洗練されている。アプリ内でビデオシーケンスを編集し、カメラの角度を調整することもできる。あらゆるフレームに新しい行動を加えたりオブジェクトを切り替えたりすることが可能だ。例えば、走っている少年を歩きに変更するという具合に。筆者は山奥の森の中というあらかじめ用意された世界で作業したが、経験豊富なアニメーターならば、自分で作ったシーンを Directool にロードすることもできる。

私たちにはきちんとしたコンテンツチームがいません。同じソフトウェアといっても、私たちが注力するのはゲームではなく、VR 制作ソフトウェアなのです。メディア制作を目指してしまうと、開発は難しくなります。(Chaiming 氏)

しかし、同社はサードパーティのゲームを販売する独自の VR コンテンツプラットフォームを計画している。ちょうど Steam や Oculus Store のようなものだ。

Hypereal のコンテンツパートナーのほとんどは海外の企業になると彼は言う。

中国にはそもそもコンテンツクリエーターがあまりいないのです。

例えば、Assassin’s Creed で知られる Ubisoft は、Hypereal のコンテンツパートナーの1社だ。ハードウェア面では、グラフィックチップメーカーである NVIDIA と AMD をパートナーとしている。

コピーキャットの烙印

2015年の設立以来、Chaiming 氏は長い道のりを歩んできた。

最初は大きな目標はありませんでした。予算がないので夢を描けなかったのです。

同氏はイングランドの高校に通い、オックスフォード大学のコンピュータサイエンスプログラムへの入学を断ってから、中国に帰国した経歴を持つ。Oculus の初期の開発キット DK2に触発され、彼は英国の数学オリンピックで競い合っていた昔からの友人を集めて Hypereal を設立した。現在、29歳。

Chaiming 氏はアジアを皮切りに、世界市場を視野に入れている。今年の主な目標は、約2年間かけて開発してきた Hypereal の製品を販売にこぎつけることだ。

しかし、Hypereal のヘッドセットやコントローラといったハードウェアの形状や外装デザインについては、中国の他のメーカーと同様、他社のコピーに過ぎないという強い批判がある。この点について筆者が尋ねたところ、同氏は「さあね」というジェスチャーを返した。

Oculus と HTC Vive について同氏はこう語った。

私たちがやったことがコピーであると思うなら、それぞれの製品の特許を示すべきでしょう。Vive を見てください。彼らはヘッドセットを作りましたが、デザインを模倣してはいけないとは言っていないでしょう?

現在、Hypereal は上海本社に約130人の従業員を抱えている。2015年には、SIG China(海納亜洲創投から600万米ドルのシリーズ A 資金を調達した。また、昨年9月には Qiming Ventures(啓明創投) から1,050万米ドルのシリーズ B 資金を調達している。

(訂正:記事内で、Hypereal のシリーズ B の日付を2017年3月から2016年9月に訂正した。Pano の視野も110から120に訂正している。)

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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