クラウドの次に来る「不可避な」流れは、AI、IoT、そしてVR【特別寄稿】

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本稿は小島英揮氏によるもの。同氏はアマゾンウェブサービスジャパンの1人目の社員で、AWS のユーザーグループ「JAWS-UG(Japan Amazon Web Service User Group)」の生みの親として知られる人物。同社退社後には個人でマーケティング手法の共有をするCMC_Meetup (Community Marketing Community Meetup) 主催し、InstaVRやヌーラボなど数社のスタートアップに参画して支援にあたっている。6月12日に開催されるGoogle主催「INEVITABLE ja nightーーインターネットの次にくるもの」開催に併せ、小島氏が考える「クラウドの次」について寄稿してもらった。

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写真左から:ABEJAの岡田社長、InstaVRの芳賀社長、ソラコムの玉川社長、元グーグルの及川卓也氏

4月25日の夜、東京某所でAI、IoT、VRという伸び盛りのエリアで注目されている3人の起業家ーーソラコムの玉川(憲)社長、ABEJAの岡田(陽介)社長、そしてInstaVRの芳賀(洋行)社長が集結していた。6月12日に開催されるグーグル主催のデベロッパー向けイベント「INEVITABLE ja night」での目玉セッションである起業家パネルディスカッションの打ち合わせが目的だ。

クラウドが作り出したエコシステムが、AI、IoT、VRを後押し

クラウドコンピューティングが、誰もが使えるインフラとして世に出て既に10年以上、その間にアイデアをビジネスにするまでスピードは各段に進歩し、そのエコシステムはビックデータやモバイルビジネスを今の隆盛を生み出し(お手元にスマホにあるアイコン=アプリのほとんどがクラウド上で運用されているのを見れば、クラウド無くしてモバイルの隆盛無しということが分かるだろう)、さらにその次に来るAI、IoT、VRビジネスの爆発の兆しが見えてきている。

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昨年話題になった書「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」にもこういう一節がある。

「安価な並列処理機能とさらなるビックデータ、そして進化しつづけるアルゴリズムによるこの巨大な嵐によって、60年間もかかったAIが、あっという間に実現することになった。(中略)このクラウドベースのAIはわれわれの生活に深くかかわるものになるだろう」(P.56より抜粋引用)

クラウドの進化や普及が、過去のAIブームとは違いリアルなテクノロジーとしてのAI普及が進んでいることに触れている。この書ではIoT、そしてVRも同様の文脈で、これから来る「不可避な」テクノロジートレンドと記載しており、この夜に集まったスタートアップの代表たちがフォーカスしている分野がいかに重要なエリアなのかがわかる。

では、この新しい局面に私たちは何を考え、どのように行動すべきだろうか?ーーそこにはやはりスタートアップする力、特に技術者の叡智がますます重要視される世界がやってくると私は考えている。

国内のGDPをデジタルで押し上げる – 少子化時代の起業家の役割

ところでこの3人の起業家たちには、注目分野での起業という側面だけでなくいくつかの共通項がある。それは

  • 日本発で世界市場を狙っている
  • 創業者が技術者出身
  • サービスはクラウドで運用されている

の3点である。そしてこれこそが今回この3名が「ロールモデル」としてイベントに顔を揃えることになった大きな理由と言えるだろう。

昨今の少子化の傾向は、ここ数年(数十年)日本の人口が増加していかないという現実を示している。つまり、単純に計算すると国内市場が毎年シュリンクするということだ。この流れを変えていくには、インバウンドの顧客向けのビジネスへの取り組みに加え、デジタル経済で日本から世界に向けてビジネスを拡大していくしかない。

その意味でスタートアップというのは非常に重要なプレイヤーであるが、世界に通用している国産スタートアップはまだまだ少ないのが現状だ。世界で勝負するのであれば、これから大きくなるマーケットを狙うのが合理的であるが、まさにそこにチャレンジしているのがこの3人といえよう。

先日ドイツで開催されたCeBITではソラコムとABEJAが共に出展していたし、同じころ米国・オースティンで開催されていたSXSWではInstaVRがブース展示をして世界の顧客に向けてアピールをしていた。実際、InstaVR等では、国外顧客の比率が圧倒的に高く、グローバル視点でのビジネスを進めている。

このような成長も大きいが、変化のスピードも速いマーケットでグローバルで戦っていくには技術的な目利きが欠かせない。

この3社に「技術者出身」社長という共通項があるのもある意味必然と言えるだろう。日本のスタートアップではCEOとCTOのポジションに差があることが多く、CTO=技術の目利きが経営に関与できる余地が少ないということもよくみられるが、この3社はCEOがすなわちCTO的な視点も持っているわけだ。(実際、ABEJAの岡田氏の肩書はCEO兼CTOとなっている)

新しい時代は高度なレベルでの技術だけでなく、グローバルで勝ち残る「判断」も要求される。AIやIoT、VRという「クラウドの次」を担う起業家はこのようにハイブリッドな素養もますます必要になるのではないだろうか。

最後に

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クラウドの次を担う起業家たちのディスカッションは6月12日に開催する「INEVITABLE ja nightーーインターネットの次にくるもの」で実際にみることができる(筆者も登壇予定だ)。

クラウド世代の技術者に、ビジネスリーダーとしての視点を持ってもらうという意味でもこの企画は興味深いし、このパネルには元グーグルの及川卓也氏もモデレーターで参加するほか、「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」の翻訳者である服部桂氏が登壇するセッションもある。自らの手で、成長分野でのビジネスやスタートアップを生み出したり関わったりしたい人には多くのヒントが詰まったイベントになると確信している。

日中忙しい技術者の人でも参加しやすいナイトイベントの形式になっているほか、パネル登壇の3名の方と直接話しができるASK THE SPEAKERのコーナーも設置されるようなので、“クラウドの次“に興味のある技術者や起業に興味のある方はぜひ参加してみてはいかがだろうか?

情報開示:筆者の小島氏はInstaVRにCMOとして参画しているのでこちらに情報開示しておく

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