ポータブル3D録音デバイスの「Lolly」、Indiegogoで3万米ドルの目標額を達成——71億米ドル規模のオーディオ市場を狙う

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Image credit: MeloAudio(美楽音頻)

Lolly を表現するに相応しい一言は 「これ以上、IoT 製品を作ってくれなくてありがとう」だ。接続しなくても気軽に使えるイヤホンのように、3Dマイクの Lolly はアプリのダウンロードや充電の必要がなく、高品質な録音ができる。中国・清華大学の卒業生が開発した Lolly の価格は45米ドル。この会社は Indiegogo のクラウドファンディング目標額3万米ドルの70%分をキャンペーン終了まで残り1か月あるにもかかわらず確保している(編注:本稿翻訳時点で目標額を達成済)。

Lolly の開発元 MeloAudio(美楽音頻)の CEO である Powell Li(李岩)氏は、次のように述べている。

私たちは、中国にいる多くのネット市民が携帯電話を使ってライブストリーミング、カラオケ、シェアオーディオショー、ストーリーのオーディオストリーミングで楽しむ様子を見てきました。ただし、それら携帯電話の録音品質は限られています。

当社では、B2C の顧客向けに優れた録音機能を持つ製品で対応したいと思いました。そうすれば、より多くの人がハイクオリティのサウンドを楽しめるようになります。

NAMM(アメリカ音楽事業者協会)による2016年のグローバルレポートによると、アメリカと中国の音楽市規模はそれぞれ71億米ドルと14億米ドルだった。アメリカにある上位15位までの音楽関連製品のうち59%は中国からの輸入品だという。

スマートデバイスの普及に伴い、消費者向けオーディオ製品市場は堅調な成長を続けています。プロ向けのオーディオ市場は相対的に安定しており、メインとなる消費者向け製品は国外、とりわけアメリカに集中しています。当社がアメリカを拠点としているのはそのためです。中国は、携帯電話でのライブストリーミングやポッドキャスト、カラオケなどで今最も急速に成長している市場です。(Powell 氏)

MeloAudio(美楽音頻)共同創業者の3人。最右が Powell Li(李岩)氏
Image credit: MeloAudio(美楽音頻)

2015年における中国の関連製品の生産規模は、2,808億人民元(407億米ドル)だったが、オーディオ機器の販売は2008〜2015年にかけて54%の成長をみせた。

オーディオ機器市場は2016年も急伸しており、ヘッドフォンとスピーカーが全体の40%を占める(JD.com=京東調べ)。

競合製品の Shure(舒尔)MV88 と比較すると、Lollyにはサウンドに空間的な深さを感じさせる反響音機能がついていて、人間の耳で聴く自然なリスニングのスタイルに合わせて防音ステージ仕様に調整できる適応的な録音仕様技術を活用している。

そのため、たとえユーザの手持ちが  iPhone であったとしても、電話の音軸はユーザの耳と等しくなる。

Shure の MV88 は149米ドルでアプリもダウンロードしなくてはならないが、Lolly はその必要がない。

当社で調査をしたとき、自社製品を IoT に限定しないと決めました。ユーザにとって、アプリのダウンロードは負担になります。そのため、録音アプリ、ライブストリーミングアプリなど、どのようなアプリでも使っていただけるようにしたのです。(Powell 氏)

3人の設立者は以前、北京にある Texas Instruments で勤務していた。現社長の Wilson Zuo 博士と CTO の Yves Shi 氏はアプリケーションとコンピュータチップの研究開発部門勤務、Powell Li 氏は流通管理者だった。3人は同社でオーディオ製品の開発に携わっていたが、会社を立ち上げて自分たちで作ることにしたのだ。

Lolly、中国のライブストリーミング市場をターゲットに

TechNode とのインタビューでも Lolly を使用した
Image credit: TechNode

Lolly はコンパクトで楽し気なデザインをしている。女性への訴求力がありそうだ。

私たちは顧客のことを考えました。Taobao(淘宝)で売られているマイクを見ると、製品はすべて似通った限定的なデザインです。女性ユーザがライブストリーミングする際に当社製品を使っていただければと思いました。だから、当社のものは小さくて可愛く、女性の心をつかむデザインです。(Powell 氏)

同社は現在、中国のライブストリーミング企業と協力に向けた話し合いを進めている。ライブストリーミング市場は2016年に180%の成長を果たしたが、市場が統合されて規制が厳しくなる中で、今年の市場成長率は鈍化するとみられている。

昨年、あらゆる市場が関心を持ったのはライブストリーミングでした。今年の成長は少し緩やかなものになるでしょう。しかし長期的に見れば、この分野は中国人ユーザにとって有望なエンターテイメント手段になると思います。こうしたプラットフォームがよりスマートに、そして成熟するにつれて、さらに多くのユーザを惹きつけるでしょう。だからこそ今この仕事をする価値があると信じています。Lollyを使えば、ライブストリーミングの体験と顧客の期待はともに高まるでしょう。(Powell 氏)

北京拠点の Lolly は、TusSeed(啓迪種子)、Taiyou Fund(泰有投資)、Winhub Fund(強合基金)、そして著名な中国人投資家の Li Chi 氏から、エンジェル投資で300万人民元を調達している。

今回のクラウドファンディングが終われば、価格99米ドルの Lolly をアメリカ、中国、日本、ドイツの店頭で目にすることができるだろう。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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