32億円調達のフロムスクラッチ、気象情報からアパレルのクロスセル確率向上もーービッグデータ統合と人工知能開発を促進へ

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マーケティングプラットフォーム「b→dash」を提供するフロムスクラッチは5月16日に産業革新機構、Rakuten Ventures Japan fund、既存株主を引受先とする第三者割当増資を実施したと発表している。調達金額は32億円で払込日程や株式比率、企業価値などの詳細は公開されていない。

主要な既存株主はDraper Nexus Venture Partners、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、電通デジタル·ホールディングス、グローバルブレインらで、前回前々回の調達額13億円と合わせ、同社は2014年10月の「b→dash」公開以降で累計45億円を調達したとも伝えている。同社は調達金額で「b→dash」に関連する人工知能技術やデータ統合基盤などの強化を目指す。

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「b→dash」は企業が所有する顧客の購買データなど、マーケティングに関するプロセスデータを一元管理し、担当レベルだけでなく、経営層にも判断しやすいダッシュボードなどを通じて定量的に材料を提供するソリューション。DMP(データマネジメントプラットフォーム)やレコメンド、ウェブ接客、解析、BIなど、各種ツールを一気通貫で提供するのが特徴。

前回取材時の情報では、価格帯も最低金額で月額50万円と毎月数百万円のマーケティング予算を立てている大型のクライアントが主なターゲットになっている。同社コンセプトについてはこちらの記事も参照いただきたい。

企業のビッグデータを活用するために必要な3つのポイント

「b→dash」については以前からお伝えしている通り、一気通貫のシステム設計は企業のマーケティング担当者や経営陣にとって魅力的である一方、どうしても人的なコンサルタントの存在感を大きく感じてしまう。今回の大型調達は当然、その人件費をどうこうするような類の規模ではなさそうだ。

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プロによるサポートフロー

では具体的に彼らはどこに向かうのか。

やはりキーは企業に眠るビッグデータの活用にあるようだ。同社代表取締役の安部泰洋氏によれば、今後のデータマーケティングを考える上でのポイントとして、データ統合の強化、処理の高速化、人工知能の開発、この三点を教えてくれた。

「1つ目はデータ統合基盤の開発強化です。テクノロジーの発展により、企業は想像を超えるほどのビッグデータを手にする機会を手にしました。そのビッグデータをクラウド上で統合し、管理するニーズはますます拡大していくことが予想されています。例えば、これまでエンジニアによるデータ要件定義や、それに伴うデータの紐づけ作業、繋ぎ込み、API連携など多大な工数がかかっていた統合作業を、今後は自動化していくシステム・アルゴリズムの研究開発に投資を集中させていくことを予定しています。

2つ目はデータの処理の高速化です。企業ごとにデータを保有していたため処理やパフォーマンスには問題がない一方、機能やスペックの拡張性がなく、構築費や保守費に莫大なコストがかかってしまいます」。

クラウド上でのデータ処理課題をクリアすれば柔軟性の高いデータ統合基盤が手に入ることになる。同社はこの部分の研究開発にトライするという。そして三点目となるのが人工知能の研究開発だ。

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「いくつかの実証研究で成果は出始めています。例えば、あるアパレル企業であれば、WEBやビジネスデータだけでなく、気象情報などの市場変数のデータも統合して、施策の予知・予測をしていますが、新規顧客のターゲティングの精度や既存顧客のクロスセリングの確率が大きく向上しています。他にもある不動産企業では、追客データや物件データ、そして担当者データや成約データなどを全て統合し、顧客属性とその顧客の興味物件から成約率の高い担当者を予測することもできるようになってきています。

今後はこのような成果を一般化していき、ソリューションとして確立させ、多くの企業に広く提供していくための開発や研究にコストを投下していきます」。

同社では現在、エンジニア100名体制で上記の研究開発を進めている。今回の調達をもとに、早いタイミングで2倍程度の増員を予定しているという。

 

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