モノづくりスタートアップが世界中から集まった「Hardware Cup」——日本からQDレーザ・PLENGoer Robotics・VAQSOが参加【ゲスト寄稿】

本稿は、大阪を拠点に活動するマーケティング PR プロデューサーの西山裕子氏による寄稿を THE BRIDGE が編集したものである。

2月9日に大阪で開催された Monozukuri Hardware Cup 2017 の上位入賞者が、アメリカ・ピッツバーグで4月19日に開催された International Hardware Cup 2017 に参加した模様を記録した。

なお、当該の入賞者は、ニューヨークのハードウェア・アクセラレータ FabFoundry が4月17日〜18日に開催した Monozukuri Demo Day にも参加している(関連記事


Hardware Cup 2017に参加したファイナリストたち
Photo credit: Foo Conner | Jekko

ピッツバーグ開催の意義

Hardware Cup は、モノづくりに関わるスタートアップのビジネスコンテストです。過去3年アメリカ国内で行われ、今年は海外に拡大されました。2017年4月19日、アメリカの7都市、カナダ・インド・イスラエル・韓国・日本の予選を勝ち抜いた起業家12人が、この街にやって来ました。

主催するのは、全米トップランクのアクセラレータ AlphaLab のハードウェア部門である AlphaLab Gear。決勝のイベント会場も提供しています。ハードウェアとソフトウェアのスタートアップがアクセラレータ・プログラムの開催期間中、働くだけでなく交流する場として、使いやすくお洒落なオフィスが提供されています。

スタートアップ各社は個別の部屋をもっています
Photo credit: モノづくり起業推進協議会
交流を促すために共有スペースも用意されています
Photo credit: モノづくり起業推進協議会

AlphaLab Gear は、大学・産業界・行政・投資家などと連携し、ピッツバーグにスタートアップのエコシステムを創出しています。代表の Ilana Diamond 氏は、次のようにオープニングの挨拶をしました。

開催にあたり、多くの支援が得られたことに深く感謝します。財政的な基盤がないと、このようなイベントはできません。資金や会場を援助いただき、顧客となってもらうことがスタートアップの成長にとって、大変重要です。

今回のピッチコンテストは、企業や地域コミュニティをはじめ、多くのスポンサーが支えています。一位の賞金は、5万ドルの出資になります。

AlphaLab Gear 代表の Ilana Diamond 氏
Photo credit: Foo Conner | Jekko

ピッツバーグはかつて鉄鋼の街として栄えていましたが、1970年代、安価な鉄鋼の輸入が増え大打撃を受けました。しかしその後、ハイテク・保険・教育・金融へと産業基盤を転換し、カーネギーメロン大学など全米トップクラスの大学が研究を進め人材輩出をしてきました。今や Google や Apple、Uber などの先端企業がオフィスを開き、成長を続ける、注目の地方都市です。

次世代を創るか? スタートアップ12社のビジネスプラン

コンテストの審査員7名は、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家で、スタートアップとビジネス経験が豊富な目利き達。そして、メディアや投資家、事業会社などから100名以上の聴衆が集い、その前で12社が自社のビジネスを4分プレゼンし、3分間の審査員の質問に答えました。

事業内容はモノづくりに関わるものの、業界も分野も多岐にわたり、「スーパーのレジで並ばないよう、スマホで精算をするシステム」「床ずれを早期に見つける器具」「乳幼児が息をしているか、熱はないか、モニタリングする器具」など、様々なビジネスのアイデアや将来性が、熱い思いで語られました。

床ずれの早期発見を目指すRubitection
Photo credit: Foo Conner | Jekko
乳幼児をモニターし乳幼児突然死症候群(SIDS)を未然に防ぐAllb
Photo credit: モノづくり起業推進協議会
多くの聴衆が固唾を呑んでピッチを聞くなか、審査員(手前)の緊張感は相当なもの
Photo credit: Foo Conner | Jekko

日本からは、網膜走査型レーザアイウェアの製造販売をする「QDレーザ」が参加し、英語で発表しました。このようなコンテストでは、アメリカ人のプレゼン力・表現力はかなり高く、日本人は英語力のなさもあり圧倒されがちです。

しかしQDレーザの事業開発マネジャー宮内洋宜氏は、ユーモアを交えた、なめらかな発表で聴衆を沸かせ、審査員からの質問に対し的確に回答しました。その技術力の高さや独自性は、高く評価されていました。

QDレーザの渡米に際しては、全日空がスポンサーとして、東京 – ニューヨークの往復航空券を手配していただきました。

QDレーザの事業開発マネジャー宮内洋宜氏
Photo credit: Foo Conner | Jekko
審査員からは矢継ぎ早に質問が飛ぶ。いかに3分で多くの疑問を解決するかが重要になる
Photo credit: モノづくり起業推進協議会

コンテストを制したのは?

12社それぞれ独自のアイデアを持っていましたが、優勝したのは、出産後の女性の骨盤底筋を鍛える器具とトレーニングソフトを提供する VaGenie。2人の子どもの母親である Julia Rose 氏が、ロスアンジェルスで2年前に作った会社です。元々女優をしていたという彼女の発表は、表情豊かで、産後の女性の体の衰えやタブーになっている問題の解決を目指すという、意欲に満ちたものでした。賞金の出資金5万ドルと、2017年5月末に台北で開催されるテクノロジーの展示会 COMPUTEX に参加する切符、トロフィーが贈られました。

優勝した Julia Rose 氏(左)と、審査員の Josh McElhattan 氏。彼の所属する Startbot VC が5万ドルを出資する
Photo credit: Foo Conner | Jekko

2位は、リストバンド型のウェアラブル・デバイスを使って健康管理を提供する Atlas で、賞金5,000ドルを獲得しました。3位は、ペットの飼い主が留守中に、スマートフォンを使ってボール型のおもちゃで遊ばせるサービスを提供する PlayDate です。

左から2位の Atlas の Peter Li 氏、優勝した VaGinieのJulia Rose 氏、3位の PlayDate の Kevin Li 氏
Photo credit: モノづくり起業推進協議会

ネットワーキングの夜は続く

コンテストの発表が終わった後は、ブース展示や交流の時が持たれました。日本予選を勝ち抜いた上位3社が出展しました。QDレーザに加え、パーソナルアシスタントロボットを開発している PLENGoer Robotics と、VR(バーチャル・リアリティ)のコンテンツと連動して複数の香りを表現する VAQSO です。それぞれが、自社の製品を展示ブースでデモンストレーションし、その魅力や可能性を訴えました。

QDレーザのブース
Photo credit: モノづくり起業推進協議会
PLENGoer Robotics のブース
Photo credit: Foo Conner | Jekko

VAQSO のブース
Photo credit: モノづくり起業推進協議会

スタートアップとそれを支える人々との熱気は、まだまだ冷めないようでした
Photo credit: モノづくり起業推進協議会

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