月額基本料金45円ーーソラコムが新たな低額料金プランを公開、「モノのサービス化」を実現するインフラを提供へ

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資料提供:ソラコム

ソラコムのニュースはいつも頭を悩ませる。広がる世界観をどうやって言葉にすればいいか分からなくなるからだ。ひとつ言えることは間違い彼らは世界を変えつつある、ということだ。

…ということでニュースから見ていくことにしよう。

Internet of Things(以下、IoT)向けの通信プラットフォーム「SORACOM」を展開するソラコムは5月10日、データ通信サービス「SORACOM Air for セルラー」で少量のデータ送受信専用の料金プラン「Low Data Volume」を発表した。5月16日から日本および米国で提供開始される。国や地域によらず固定となっており、基本料金は月額0.4ドル、データ通信量は1MBあたり0.5ドル(共に米ドル)で利用可能。1KB単位で課金される。

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新料金プランの提供エリア

通常のSORACOM Air for セルラーは国によって料金は変動するが、例えば米国の場合、データ通信料は1MBあたり0.08ドルだったので割高となる。一方で通信開始後の月額の基本料金は1.8ドル(中断中はディスカウント)だったので今回の新プランの方が安くなる。

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資料提供:ソラコム

これは移動体の位置情報追跡やインフラ監視など月次におけるデータ利用量がごくごく少量の場合に適したプランとなっており、月に1MB程度の利用であれば従来プランでSIM1枚あたり1ドルを切るコストで運用が可能(SIMカード購入にかかる初期費用5ドルは別途必要)となる。ソラコム代表取締役の玉川憲氏によればこういった少量データでの利用は設置数量も多く、千や万といった単位になることから相応に負担コストも大きくなりがちで、対応するプランの提供が待ち望まれていたそうだ。

同社は今回のリリースに合わせ、SORACOM Funnelの機能拡張認定パートナー追加LoRaWANデバイスのオープン化などについても新たな動きを公表している。

あらゆる「モノがネットにつながる」本格的なIoT時代のインフラ

さて、ではこの新たなプランが指し示す意味、本格的なIoT時代についてほんの少しだけ考察してみたい。

ソラコムが提供しているのは、セルラー事業者が提供するモバイル通信網のMVNO(仮想移動体通信事業者)だ。このMVNOは格安SIMという言葉を生み出し、主要キャリアとの差別化を図ることに成功している。しかしソラコムはこのモバイル通信を人ではなく「モノ」が利用する用途に特化して展開した。いわば、主要キャリアが大動脈であれば、格安SIMを提供する一般的なMVNOはその他の血管、ソラコムはさらに細かい毛細血管のような存在、と言えばいいだろうか。ここでの同社の差別化ついては過去の記事を参照いただきたい。

人よりもモノの通信の方が当然数が多くなる。今回の利用用途として挙げられている死活監視はわかりやすい例になるかもしれない。

工場にあるロボットが動いているかどうかといったことから、最近の自動運転技術の躍進に伴って、今後は工場ではなく一般の生活フィールドで活躍する自動運転車や無人機(ドローン)も増加することが想像できる。農業耕作地で何台もの機械が刈り取りをしている状況を遠隔で監視するようなシーンだ。もしかしたら1台につき、トラッキングする情報が複数に分かれる場合もあるかもしれない。

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資料提供:ソラコム

1つのモノに対して数枚のSIMを刺して小さな通信を大量に管理する。当然、事業者として考えるのはコストの問題だ。ソラコムが今回提供したプランはほとんどデータが飛んでこないような場合、前述の通り、数十円での運用を可能にしている。これが可能にすること、それは本当にありとあらゆるモノに通信を埋め込める環境が現実的になった、ということなのだ。

自分の持っている衣服やペン。こういうものにモバイル通信が入る世界を想像できるだろうか?

モノがある程度揃って便利になった世界のその次、モノそのものがサービスになる世界観。インクがなくなったら自動的に補充されるペン、自分の健康管理をしてくれる衣服、これを実現してくれるのが彼らのインフラなのである。

もちろん通信だけでなくバッテリーの問題やデバイス、ビッグデータ収集や処理の課題もあるので、こういう世界が今すぐやってくるわけではない。

今回、同時のタイミングで発表されたLoRaWANデバイスのオープン化も実は大変興味深い動きなのだがそれも併せて考えると、このソラコムの深い森から帰ってこれない気がするので今回の考察はここまでとして、また次回、機会があればまたまとめてお伝えしたいと思う。

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