CAMPFIREが6億円調達、クラウドファンディングから仮想通貨、個人間決済、投資領域に事業を拡大へ

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CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏

CAMPFIREは6月7日、ジャフコとSBIインベストメント傘下の投資事業組合を引受先とした第三者割当増資を実施したと発表した。調達した資金は総額6億円で払込日や出資比率などの詳細は非公開。同社はこれまでの調達額が総額で10億円に到達したことも合わせて公表している。

2011年の運営開始以来、掲載したプロジェクト数は6500件、クラウドファンディングに参加した支援者数は24万人、流通総額は24億円に到達している。特にここ1年の成長が目覚ましく、2016年の1月から3月期と比較して流通総額は2017年は12倍の伸びを示している。今回の資金調達をふまえ、同社はクラウドファンディング事業から仮想通貨、個人間決済、投資領域に拡大する。

家入氏の代表復帰から1年

クラウドファンディングというアイデアが出てきてしばらく経つ。

元祖的なポジションのkickstarterが出てきた2009年頃から数えると8年近く経過した。数字的には同社が毎年公表している年次レビューをみれば大体のイメージがつく。5万8000件近くの年間プロジェクトに対して投資された額は約5億8000万ドル、CAMPFIREが発表してる数字は累計なので比較するのも難しいほどだ。

家入一真氏がCAMPFIREの代表として復帰したのが昨年2月のこと。彼はその時こんな危機感を口にしている。

「クラウドファンディングという仕組みに惚れ込んでCAMPFIREを立ち上げてから5年が経ちますが、正直このままだとCAMPFIRE自体も、そしてクラウドファンディングという仕組みも浸透しないまま、縮小していくのではないかと個人的に危惧しています」。

彼がこの時取り組んだのが5%という手数料のカットだ。「5000万の大規模プロジェクトひとつより、5万円の個人プロジェクトを1000個立ち上げたい」ーーこの考え方は「資金集めの民主化」というコンセプトに昇華していくことになる。

この後も彼の動きは活発だった。

地域の取り組みを推進するローカル事業、継続課金を可能にしたファンクラブ、現在、大きな伸びを示している音楽事業と矢継ぎ早に施策を発表。

手数料カットに加え、プロジェクトが目標に達成しなくとも資金を受け取れる「All-In」の仕組みなど、より多くの人たちがクラウドファンディングに参加できるようハードルをどんどん下げていった。結果的に流通総額は大きく伸長し、外部資本による増資などを経て再び成長への道を歩み出すことになる。

クラウドファンディングからの脱却

では彼はクラウドファンディングにどのような未来を見つめているのだろうか?

まず今回発表されている新しい事業展開を整理すると理解がしやすい。既にオープンしている仮想通貨の取引所「FIREX」6月に公開予定の「polca」、今回初めて公表された投資領域の事業、そして全てのベースとなるクラウドファンディング事業のCAMPFIREだ。

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CAMPFIREが提示する全体像

全てに共通しているのは何かを始めようという意志のある人と、それを支援しようという存在のマッチングだ。仮想通貨は取引の面ももちろんあるが、それ以上に法定通貨に比較して手数料などのルールを独自に決めやすいという点が彼らの取り組む大きな理由だろう。

誕生日のお祝いのような極めて個人的な支援・資金提供はpolca、もう少し大きめのプロジェクトはCAMPFIRE、そこから生まれた可能性のある事業には投資や貸金の領域でフォローする。どこにもつきまとう手数料の問題については仮想通貨を活用することで無駄を排除する。

全てをつなげると、おぼろげながら彼らの考えるプラットフォーム像、この中で人と人が繋がり、支援という目的の元に独自のお金が流通する経済圏が見えてくる。

「資金集めの民主化」は次の段階へ

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神戸で開催中の招待制カンファレンスに参加していたので話を聞いた

昨年11月に実施したインタビューで、家入氏は事業範囲をクラウドファンディングからソーシャルレンディング、貸金事業に拡大しようという構想を教えてくれていた。その際、彼はこんなことも語っている。

「課題先進国って言われるくらい、僕たちの住む日本は課題だらけです。(中略)富の再分配っていうのかな、民間で持っている人が持っていない人に対してお金を回す仕組みを、何らか作っていく必要が出てくると思っています。ただそれを慈善活動などではなく、しっかりとビジネスのスキームに乗せてどうやって実現するか」。

クラウドファンディングは家入氏にとって理想的な民主化の方法になる「はず」だった。しかし、冒頭の数字にも現れている通り、これを更に大きく伸ばし、誰もがアクセスできる金融手法になるにはまだハードルが高い。今回のファイナンスはこの壁を乗り越えるための施策のように思える。

このニュースが出るタイミングで、家入氏に神戸で開催中の招待制カンファレンス、Infinity Ventures Summitでコンタクトが取れた。彼は今回のファイナンスについてこのようなコメントを送ってくれている。

「2016年2月にCAMPFIREに本格復帰してから約一年、社員は当時3人でしたが、今は70名近くに増えてオフィスも先日新しい場所に引っ越しをしました。ファイナンスについても今日、発表した通り累計で10億円近くの出資を得ることができました。

流通総額については今年は35億円ぐらいの見込みで、累計すると50億円という数値も見えています。 成長は実感していますが、まだまだこれからです。これまでは『クラウドファンディングのCAMPFIRE』でしたが、ここからクラウドファンディングも含め、あらゆる資金ニーズに応え、誰しもが声をあげられる世界を目指すCAMPFIREに大きく進化していきます。 新しい姿がクラウドファンディングという枠を超えて、資金集めの民主化を本当に進められる存在になれるよう、今回のファイナンスを通じて前進するつもりです」。

国内のクラウドファンディングというモデルがどのように進化するのか、引き続き動向をチェックしたい。

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