ベルリン発・世界53カ国でサービス展開するフードデリバリ大手Delivery Hero、4億5,000万米ドル規模のIPOを計画中

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近年のオンデマンド食品デリバリー業界では一部のスタートアップが淘汰によって事業縮小や倒産を余儀なくされた。その後、生き残ったスタートアップは株式公開によってウイニングランを飾ろうとしている。Blue Apron は先週(6月第1週)、ニューヨーク証券取引所に IPO を申請した。そして現在、Delivery Hero がフランクフルト証券取引所への IPO 申請計画を明らかにしている。

Delivery Hero は正式な目論見書は提出していなが、新株および既存の株主が保有する株式を売却することによって、4億5,000万米ドルもの資金を生み出す計画の概要を示す声明を発表した。ドイツのスタートアップインキュベータである Rocket Internet SE は Delivery Hero 株の35%を保有し、南アフリカのインターネットコングロマリットである Naspers は、これまでに Delivery Hero 株の10%を3億8,700万ユーロ(4億5,000万米ドル)で購入している

ベルリンに本社を置く Delivery Hero はアメリカではその名があまり知られていないが、IPO 後にはアメリカのライバルらを圧倒する可能性がある。先月の投資後のバリュエーションから考えると、株式が公開されればバリュエーションは約45億米ドルに達する見込みで、GrubHub の38億米ドルを上回り、ヨーロッパ最大のインターネットスタートアップとなる。

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Blue Apron の2015年時点でのバリュエーションは20億米ドルで、株式公開後にはこれを大幅に上回ることになるだろう。Blue Apron はフォーム S1において調達額を1億米ドルとしているが、これは引受証券会社が投資家の関心を測っている間だけの仮の数字にすぎず、実際にはそれ以上の額を調達する可能性もある。

Delivery Hero と Blue Apron が食品デリバリー市場において占める領域は異なっており、市場のリーダーとして台頭してきた両社は互いに興味深い視線を向けている。Blue Apron はアメリカで下ごしらえの済んだ(ready-to-cook)食材を提供し、Delivery Hero はヨーロッパ、アジア、中南米、中東の40ヶ国で出前の配達を行っている。

だが、両社には共通する点も多い。Delivery Hero は2011年設立、Blue Apron は2012年設立というように、IPO を目前に控えた企業としては両社とも比較的若い。従業員数はどちらも5,000~6,000人程度で、両社ともそれぞれの市場で大きなシェアを得るために多額の支出を行っている。

Delivery Hero の CEO である Niklas Östberg 氏は、IPO 計画に関する電話会議でこう語っている。

できるだけ早く事業を大きくしたいです。収益性は規模についてきます。

Östberg 氏によると、先月 Naspers から調達した資金の多くはすでに再投資されているという。

IPO によって得た資金は会社の成長を促進するために利用する予定で、有機的成長だけでなく買収なども検討していくつもりだ、と Östberg 氏は語る。Delivery Hero は先週(6月第1週)、クウェートに本社を置くライバル企業、Carriage を買収した。同社はそれ以前にも、東ヨーロッパやアジアで運営される Rocket 所有のスタートアップ Foodpanda やトルコの Yemeksepeti など複数の企業を買収している。

食品デリバリー業界で起きている再編や、Amazon のような資金力のあるライバルの参入を考えれば、Delivery Hero が急激な成長を求めるのも納得できる。Munchery は従業員のリストラを行い、SpoonRocket や Maple、Sprig は廃業した。

昨年、McKinsey Quarterly とのインタビューの中で Östberg 氏は、非効率的な食品デリバリー業界においても成長の機会を見出しているが、一方で、Amazon などの競合企業が参入してきていることを指摘し、こう語った。

革新的であり続け、ベストな状態を維持して、最速で最高の食品へのアクセスを提供することができなければ、将来的にはマズい状態に陥ります。なので、私たちは気を緩めません。

しかし、成長にはコストがかかる。Delivery Hero によると、同社の調整後 EBITDA は2015年には1億9,700万米ドルの損失であったが、2016年では1億3,000万米ドルの損失に改善した。Blue Apron の方は2016年の純損失が5,490万米ドルだったのに対し、採用活動と広告への支出が増加した影響で、2017年は初めの3ヶ月間だけで5,220万米ドルの純損失を出したと発表している

Delivery Hero よりも1年若い Blue Apron は、Delivery Heroよ りも売上が多く損失も少ないが、Delivery Hero の方は高い成長率を誇っている。前四半期における Blue Apron の売上は42%増の2億4,500万米ドルとなり、Delivery Hero の売上は68%増の1億3,600万米ドルとなった。

Delivery Hero の IPO 成功が Rocket にとっては救いとなるはずだ。というのも、3年近くのあいだ、Rocket のスタートアップからは株式公開を行う企業が1社も出ておらず、さらに株価は2014年後半から62%も下落しているのだ。今回の2社の IPO は、食品デリバリー市場の中でも高い成長率と高コスト体質を合わせ持つセクターに対して、投資家たちの投資意欲を測る試金石となりそうだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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