中国で人気を集め始めた無人営業コンビニの「BingoBox(繽果盒子)」、シリーズAラウンドで1億人民元(約16.6億円)を調達

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Amazon は昨年、レジのない実店舗を発表し、小売業界に夢を与えた。多様な商品を扱う Amazon だが、実店舗が一般向けにオープンするまでにはまだ課題がある。一方で、中国のスタートアップたちも努力を怠ってはいない。すでに数社は競合となり得る機能を開発し、オープン間近の段階に入っている。

自動化された店舗は「スタッフレス」とも呼ばれている。目新しいものではないが、インターネット企業らが最新のテクノロジーを導入したことで活気を取り戻しつつある。ちょうど自転車レンタルが再び脚光を浴びているのと同じ具合だ。無人店舗の最も原始的なタイプは自動販売機であり、今や世界中に広まっている。一例として、日本ではもはや自動化が崇拝されていると言っても良いレベルで、23人に1台の割合で自販機が設置されており、年間600億米ドルを超える売り上げを計上する。日本で無人ストアが流行する背景には、人件費が低く抑えられることや、不動産が高額なことなどを始め、複数の理由がある。

なぜ中国で? なぜ今?

中国は日本の隣にありながら、自販機はそれほど普及しているわけではない。しかし、日本で自販機が大変な人気を集めることになったのと同じ事象が、中国でも起きつつある。

すなわち、人口ボーナス(訳注:総人口中の労働者層の割合が増加し、経済成長を促すこと)による数十年に渡った経済成長が終わりを迎え、中国では今、労働力不足と労働コストの上昇が起きている。これは日本と非常によく似た状態だ。また、人口密度が高く、都市部の不動産価格も高い。そのため、高額な販売スペースを賃貸するよりも、販売機や店舗の無人化を進める動きが生まれている。

人口ピラミッドの変化の他にも、ここ最近の中国では技術を使ったイノベーションが熱を帯びており、「新しいもの」を取り入れようという気風が国全体に満ちている。さらにモバイル決済の普及と O2O サービスの存在もあり、中国小売事業に先端技術を導入する準備は万端と言えよう。

事実、過去数年に渡ってこのセクターで急激に成長してきた中国企業は何社も存在する。Amazon が昨年 Amazon Goをローンチする以前でさえもだ。自動販売機を販売する Ubox(友宝)Gump Come(甘来)などの企業は、インタラクティブな自販機を運営しており、O2O サービスのパイオニアとして知られる。これらの自販機ではモバイルアプリから商品を購入することができる。

もちろん自動化の波は食料日用品のショッピングに留まらず、「新しい小売」の業界全体に押し寄せている。コーヒーメーカー、フレッシュジュースマシン、ひいてはミニカラオケやミニフィットネススタンドなどが自動化されている。

初の大規模な資金調達、他社も追随

無人コンビニエンスストアを手がける中国の BingoBox(繽果盒子)は月曜(7月3日)、シリーズ A ラウンドで1億人民元(1,400万米ドル)の資金調達を行ったと発表した。同ラウンドは GGV Capital(紀源資本)がリードし、Qiming Venture Partners(啓明創投)、Source Code Capital(源碼資本)、Ventech China(銀泰資本)も参加した。この分野のベンチャーとしては初の大規模な資金調達となる。当サイトの姉妹サイトである TechNode Chinese(動点科技)が報じた

広東省の中山市で創業した BingoBox は、完全に自動化された年中無休のコンビニを完成させた。WeChat(微信)と全面的に統合しており、買い物客は入退店時に WeChat のスキャン機能を利用する。

上海のスーパーマーケット Auchan の近くに設置された BingoBox
Image credit: TechNode

グローバル小売事業の Auchan とパートナーシップを結び、飲料、食料、処方箋不要の薬など、日常生活の必需品を含む200種以上のアイテムを各店舗に取り揃えている。支払いは WeChat か Alipay(支付宝)で行う。何か不具合が起きたり助けが必要だったりという場合は、リモートで待機するスタッフとビデオ通話を行うこともできる。さらに同社は、独自のサプライチェーンブランド「Beibianli(倍便利)」を開発中だ。

BingoBox の入口に貼られた QR コード
Image credit: TechNode

商品の読み取りと支払いは携帯を使って手動で行う必要があるため、Amazon Go と比べると未来感に欠けるかもしれない。しかし、現時点でこのような店舗が実現したのだ。競争の激しい中国のこのセクターでは、スピードが命と言っても過言ではない。

設立者兼 CEO の Chen Zilin(陳子林)氏がが TechNode に語ったところによると、同社は2016年8月、広東省の中山市でパイロットテストをローンチした。続いて今月初めに上海に展開しており、年末までに5,000店舗へ拡大する計画があるという。

同社のデータによれば、15平米の広さの BingoBox の店舗には、通常のコンビニの40平米相当の商品数を置くことができる。これは運営コストの削減につながる。

自転車レンタルでは盗難や破損といった問題が起きているが、BingoBox の無人サービスも同じ被害に悩む可能性がある。BingoBox では RFID タグによるセキュリティシステムを導入し、未払いの商品が店外に持ち出されないようにしている。

同社が現地メディアに語ったところでは、これまで5万回を超える買い物が行われているが、商品の盗難や破損などは検出されなかったという。理由として、店舗が高級エリアに立地し、監視カメラが24時間稼働しており、オンラインサービスの利用に関して中国政府が実名登録を推進していることが幸いしていると見られる。

セクターが活発化していることは好材料だが、競合がいないわけではない。これまで自販機を手がけてきた中国企業の Gump Come もライバルの一社で、セルフのコンビニ業界へ進出しつつある。また、他の無人ストアの例として、Moby Martというレジ無し店舗がある。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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