日本の楽天は、いかにして中国市場向けの売上を3倍にできたのか?

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2016年、中国の消費者は越境 e コマースプラットフォームの買い物で、1兆円以上という惜しみない金額を日本の商品に支払った。また、東京のリサーチ会社、富士経済によると、この金額は2019年には2倍以上の2.1兆円に達するという。

日本最大のオンラインショッピングモールである楽天市場も、この現象の恩恵を受けた幸運な企業の一つだ。B2B2Cの e コマースプラットフォームを持つインターネットサービス会社の楽天は、2017年に前年同期比の3倍となる売上を記録した。同社は Rakuten Global Market という人気の越境 EC サイトも運営している。

楽天は JD.com(京東商場)とNetease Kaola(網易考拉)に旗艦店を出店しているが、それら店舗の取引額は2016年に比べて20〜30倍に成長した。楽天市場は越境セールスにおける主要プラットフォームであり、様々な e コマースプラットフォームを通じて行われる国際的なセールスの半数以上を占める。

楽天の EC カンパニーの越境取引部門でシニアマネージャーを務める Mitch Takahashi(高橋宙生)氏は TechNode(動点科技)に次のように語った。

中国で複数の e コマースパートナーのサイト上に出店していますが、互いに直接的な競合関係にはありません。楽天市場での国際的な取引は、大きく将来有望な可能性によってさらに成長する余地があります。日本の小売パートナー各社は世界中の消費者に高品質な日本の商品を販売していますが、こうした店舗が国際取引の成長を実現できるよう、私たちは努力を重ねています。

海外から購入したいという顧客ニーズの高まりを感じているのは、中国の e コマース各社も同じだ。JD.com は越境 EC プラットフォームである JD Worldwide(京東全球購)をローンチした。また、中国のゲーム会社である NetEase(網易)も2015年初めに Kaola(考拉)という越境プラットフォームを立ち上げている。楽天市場の JD Worldwide への旗艦店出店は早く、同プラットフォームの公開と同じ年に進出した。次いで2016年に Netease Kaola にも公式旗艦店をオープンしている。

中国のeコマースアプリの中で、Netease Kaola はトップ10入りしていない。しかし、オーストラリアと日本から多岐にわたるブランドが出店している。同社の取引量に占める割合は日本が1番で、次いでアメリカ、ドイツ、韓国、オーストラリアとなっている。

高橋氏は続ける。

Netease Kaola と JD の双方で、顧客層の強いシナジー効果が起きています。最もアクティブな購入者層はテクノロジーとSNSを使いこなす若い女性たちですが、成人男性とその購買行動をターゲットにした商品やプロモーションでも大きな成功を収めています。

広まりを見せる越境購買

Rakuten Global Market の売れ筋6品から:Natural Health Standard(スムージー)、アネロのバックパック、クッキー「白い恋人」、パール優美の真珠アクセサリー
Image credit: 楽天

Rakuten Global Market の売れ筋6品:Natural Health Standard(スムージー)、アネロのバックパック、クッキー「白い恋人」、パール優美の真珠アクセサリー

現在では越境は非常に一般的なものになってきています。2014年には、一部の中国人消費者だけが越境購買に興味を示していました。JD Worldwide はまだ存在せず、当時は Rakuten Global Market だけが日本からの越境ショッピングを楽しめる場所だったのです。

楽天市場は非常に幅広い種類の日本の商品を取り揃えているが、JD と Netease Kaola の旗艦店で販売されているのはそのうち一部の商品に留まっている。日本のファッションのトレンドの変化に対して、中国の消費者は敏感に反応する、と高橋氏は述べた。

中国の消費者はとてもスマートです。今日では、日本のどの商品やファッションが人気でトレンドなのかを分かっています。こうしたトレンドを追うことにとても熱心なのです。e コマースの世界では変化がとても速く起こります。今では、中国だけでなく世界中の人々がオンラインでモノを買うことに慣れています。JD、Kaola、Rakuten Global Market などの安全でセキュアなオンラインeコマースプラットフォームで流行りの日本製品を買うことに関して、彼らは熱心で前向きです。

中国における楽天の事業拡大に学ぶ

中国市場に全力投球するというよりは、楽天は段階的なアプローチを試みた。最初の一歩として、2008年、ビジネス向けの越境プラットフォームを簡体中国語など4言語で立ち上げた。

次に、中国のサードパーティ各社の決済方法を導入した。2014年になって、楽天は Alipay(支付宝)とパートナーシップを締結した。特別なコラボとして、Alipay ユーザには購入時にディスカウントが適用された。

3つ目の段階として、2015年、日本の製品の中でもベストなものを中国のオンラインショッピング利用者に届けるというミッションに基づき、楽天市場は上海にオフィスを開設した。ここではパートナーの e コマースプラットフォームに出店している旗艦店のサポートを行う。高橋氏によると楽天市場の運営拠点は依然東京にあるが、カスタマーサービスの電話対応が一部中国、一部東京で行われる。

チャネル、プロダクト、ブランド

楽天の EC カンパニーの越境取引部門でシニアマネージャーを務める高橋宙生氏
Image credit: 楽天

今や Rakuten Global Market は、約200ヶ国に商品を出荷する。売り上げとしては、中国、香港、アメリカ、台湾、韓国向けが大きい。高橋氏は、楽天が中国で成長できた重要な要素として、チャネル、プロダクト、ブランドの3つを挙げる。

チャネルとは、消費者がプロダクトを見ることのできる場所です。市場と顧客を熟知している地元の有力店とは張り合いたくないですよね。

JD.com と Kaola とのコラボレーションはとてもうまくいっています。次はパートナーシップをメディアとコンテンツ会社にも拡げて、チャネルの知名度を上げようとしているところです。(高橋氏)

次にプロダクトだが、これが楽天を差別化している要因である。楽天市場は、同社のeコマースサイトに参入するブランドに対して非常に深く注意を払っている。ブランドの商品品質をチェックし、厳しい出店基準を満たしたブランドだけがオンラインストアである楽天市場への出店を許される。グローバルなブランドだけでなく、低コストで高品質なオリジナルのブランドも名を連ねる。楽天市場への出店を認められた店舗は4万4,000店以上に上る。

Taobao(淘宝)のマーケットプレイスのやり方と、JD の直販モデルの、どこか中間のようなものです。

Taobao との最大の違いは、楽天のオンラインストアの運営主体は個人だけでなく、実店舗を運営している大企業も含まれていることです。彼らはオンラインでの販売については楽天を利用しています。(高橋氏)

国内販売と越境販売のどちらでも、各ブランドは中国の倉庫から在庫を引き当てることができる。販売先が中国の場合、倉庫は出荷処理と配送の手配を行う。楽天市場は商品とセールスを管理する専用ツール Rakuten Merchant Server(RMS)を提供しており、各店舗はこのツールで、商品在庫、倉庫への配送、出荷、カスタマーサポート、商品のプロモーション管理を行うことができる。

楽天市場では多くのオンラインストアが主な都市部への当日配送に対応しており、都市部以外へも翌日配送を行っている。海外への顧客向けには Rakuten Global Express が北京と上海に3日以内の配送を行う。

【via Technode】 @technodechina

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