三菱東京UFJ銀行がMUFG DIGITALアクセラレータの第2期デモデイを開催——参加7チームはMUFG金融サービス各社と協業を開始

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三菱東京UFJ銀行は28日、都内で MUFG DIGITAL アクセラレータ のデモデイを開催した。同行は昨年、第1期目となる FinTech アクセラレータを運営したが、今年は対象スタートアップのスコープを拡大し、MUFG DIGITAL アクセラレータとして3月から4ヶ月間にわたってプログラムを運用してきた。

選考を経て7チームがプログラムに参加。彼らは2017年3月からの4ヶ月間、東京・日本橋兜町に新設されたコワーキングスペース「The Garage」などを中心に、担当メンターらの指導を受けながら、サービスの改善やブラッシュアップに努めてきた。デモデイでは、彼らの4ヶ月間の成果が、MUFG グループ各社担当者、ベンチャーキャピタル、メディアなどに初めて披露され、イノベーションの度合い、利用者ベネフィット、事業性、MUFG とのシナジーの4つの評価項目に基づき審査され、上位評価が得られたチームには、事業奨励金などの副賞が与えられた。

デモデイでの審査員を務めたのは、

  • 三菱 UFJ フィナンシャル・グループ(MUFG)Chief Digital Transformation Officer 亀澤宏規氏
  • グロービス・キャピタル・パートナーズ マネージングパートナー 仮屋薗聡一氏
  • 東京大学エッジキャピタル(U-TEC) 代表取締役社長マネージングパートナー 郷治友孝氏
  • 三菱UFJキャピタル 代表取締役社長 半田宗樹氏
  • 三菱総合研究所 常務研究理事 村上清明氏

…以上の方々。また、今回参加した全スタートアップ7社に、PR Times 賞(副賞:2017年8月〜2018年7月まで、プレスリリース配信サービス「PR Times」を一定回数無償で利用できる権利)が授与された。

【グランプリ】クラウドリアルティ

  • 担当メンター:D4V 伊藤健吾氏、インクルージョン・ジャパン 吉沢康弘氏
  • MUFG メンター:三菱東京 UFJ 銀行 融資企画部、三菱東京 UFJ 銀行 法人企画部、三菱 UFJ リース、カブドットコム証券、三菱 UFJ キャピタル
  • 副賞:事業奨励金 200万円

クラウドリアルティは、不動産特化型クラウドファンディング・サービス「Crowd Realty」を運営している。採算が合わないことから証券化によるエクイティファイナンスができない、担保が無いため金融機関から借り入れができないなどの理由で、手つかずとなっている不動産物件に、低コストの証券化スキームとオンライン公募のしくみでファイナンス手段を提供する。先ごろ実施した国内第一号案件である京町家再生プロジェクトでは予定通り7,200万円を集め、投資家にも10%という高い想定利回りを実現した。

MUFG との協業では、カブドットコム証券とは投資家基盤の連携、三菱 UFJ リースとは地方創生案件で協力し、地域で資金が循環するしくみを構築する。これまで証券化されてこなかった不動産のロングテールマーケットに狙いを定め、将来的には、P2P の非中央集権型の不動産向け直接金融システムを創設したいと意気込む。不動産特定共同事業法、貸金業法、金融商品取引法など、不動産クラウドファンディングは法規制の隙間を縫う必要のある難しい事業だが、チームメンバーの専門知識を活かしてサービスを実現した点について、金融庁の担当者らからも評価が高かったとのことだ。

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【準グランプリ】Nayuta

  • 担当メンター:アーキタイプ 代表取締役/マネージングパートナー 中嶋淳氏
  • MUFG メンター:三菱 UFJ リース、三菱 UFJ キャピタル
  • 副賞:事業奨励金 50万円

非中央集権化されたしくみを構築する上で注目を集めるブロックチェーンだが、取引確定までに平均10分を要する、マイクロペイメントを実施する上では手数料をさらに安くする必要がある、1秒間に7取引しかできない、などの欠点がある。このような問題を解決しないかぎり、ブロックチェーンは大規模な IoT インフラや社会インフラにはなりにくく、ライトニングネットワークの技術確立に注目が集まっている。

ブロックチェーンの基盤の上の層に、例えば、ペイメント専用の層を作ることで処理を簡素化し高速化しようというもので、世界では Blockstream、MIT Media Lab、ACINQ、Lightning Labs などが主要なプレーヤーだが、Nayuta は特に IoT に適した、デバイスが小メモリでも対応できるライト二ングネットワークを開発し、アプリケーション毎に必要なツールをパートナー企業と共同開発し提供していく。アプリケーションの共同開発とトランザクション手数料が収入源で、現在、ファーストカスタマーとなるパートナー企業と交渉中。

【準グランプリ】AnyPay

  • 担当メンター:伊藤忠テクノロジーベンチャーズ 代表取締役 中野慎三氏
  • MUFG メンター:アコム、じぶん銀行、三菱東京 UFJ 銀行 法人決済ビジネス部、三菱東京 UFJ 銀行 リテール事業部、三菱UFJキャピタル
  • 副賞:事業奨励金 50万円

AnyPay が提供する、店舗向けの決済受入サービス AnyPay と、個人ユーザ向けの支払/割り勘アプリ paymo については、これまでも THE BRIDGE で何度か取り上げた。AnyPay は店舗などを中心に全国展開が図られる一方、paymo は特に都市部の20〜30代の脱クレカ世代に人気だという。割り勘というテーマを掲げることで、ユーザがユーザを呼び込むネットワーク効果もうまく機能しているとのこと。

AnyPay からは購買データと位置情報が、また、paymo からは割り勘データと割り勘した者同士の繋がりの関係性データを集積でき、これらを掛け合わせることで、お店がマーケティングを行う際、より関心を持ってもらえそうな新規顧客に対してリーチすることが可能になる。今後はより多様な入金方法や利用可能場所を確保するため、じぶん銀行との連携で口座振替サービス、アコムとの連携で後払いサービスなども検討中だ。

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【AWS 賞】ロボット投信

  • 担当メンター:東京大学エッジキャピタル プリンシパル 坂本教晃氏
  • MUFG メンター:カブドットコム証券、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券
  • 副賞:Amazon Web Services 利用権

ロボット投信は、投資信託のコールセンター業務を自動化する仕組みを開発しており、証券会社や銀行が導入することで、投信の分配金や騰落率などの情報を顧客は電話ごしに自動音声で確認できるようになる。発信者番号通知により電話をかけてきた顧客を自動認証し、保有している投資信託の情報を伝えられるのが特徴だ。インターネットやスマートフォンの操作に不慣れで、ウェブサービスやアプリで情報を確認しづらい高齢の投資家などへのサービス向上が可能になる。

投資信託の運用会社/販売会社にとって、オペレーションコストが運用利益に占める割合は、海外では約10%なのに対し、日本では約40%と割高。日本の運用会社にとって、オペレーションコストがは高く、運用収益に対する営業利益率は、欧州では約40%前後なのに対し、日本では約10%台後半と大きな差があるLINE や Amazon Echo などをインターフェースとして、金融機関に「読む・書く・話す」のソリューションを提供し、業務の効率化と売上向上を支援する。MUFG との協業では、カブドットコム証券、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券と連携し、信託報酬・損益シミュレーションの実額開示を、SMS や LINE での連絡手段を提供するようにした。今後はソリューションを証券会社に OEM 提供しつつ、自らも金融庁から免許を取得しロボアドバイザー業務に参入する。

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シマント

  • 担当メンター:Draper Nexus Venture Partners マネージングディレクター 倉林陽氏
  • MUFG メンター:三菱 UFJ リース、日立キャピタル

先ごろ、マルチバリューデータベースのソリューションプロバイダとして紹介したシマントだが、MUFG との協業では新たな金融商品の開発に着手するようだ。企業がさまざまな資金調達を模索する中で、資産を有効活用してファイナンスを確保する手段として ABL(動産担保融資)があるが、この ABL の中で手つかずの未開領域が、販売前の商品在庫を担保とした在庫ファイナンスだ。

これまで在庫ファイナンスだったのは、データ量が膨大で取扱が煩雑であり、リアルタイムに正確な情報を把握できなかったためだ。シマントではマルチバリューデータベースを武器に、企業における物流会社との配送データ、受発注データをもとにリアルタイムの在庫データを把握。この情報を資産管理事業者に在庫ファイナンスデータとしてフィードバックすることで、在庫ファイナンスを実現する。現在、三菱 UFJ リースとサービスを構築中だ。

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Good Moneyger

  • 担当メンター:電通ベンチャーズ マネージングパートナー 笹本康太郎氏
  • MUFG メンター:三菱東京 UFJ 銀行リテール事業部、三菱 UFJ 国際投信、三菱 UFJ 信託銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券

401K プラン(選択制確定拠出年金)による資産形成の機会が与えられている人は日本に600万人いるとされるが、そのうちの69.6%の人々が運用に困っているという。金融機関は個別銘柄の推奨を禁止されているためアドバイスを提供することは許されず、一方、自己責任で運用するには知識が乏しい。Good Moneyger では Big5 理論をもとに、ユーザがどこに迷いを生じているかを解析し、それをもとに金融リテラシーを高めるための教育をゲーム形式受けられるサービス(ゲーミフィケーション)を提供する。

Good Moneyger が提供するチャットボット「VESTA」はいわゆるロボアドバイザーではあるが、Good Moneyger が投資信託を販売することはなく、あくまで独立系のフィナンシャルアドバイザーとして機能し、提携関係にある楽天証券、マネックス証券でユーザが投資信託を購入すると Good Moneyger に報酬が還元されるしくみだ。MUFG との連携では、カブドットコム証券と API 連携を開始。今後、さらに 401K プランを運用している企業の社員向けに、投資教育の一環として VESTA を積極展開していきたいという。

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OLTA

  • 担当メンター:インクルージョン・ジャパン 吉沢健弘氏
  • MUFG メンター:三菱 UFJ 東京銀行 法人企画部、三菱 UFJ ファクター、三菱 UFJ キャピタル

今年2月に開催された「資産運用ハッカソン」で taxy として最優秀賞を獲得したサービスが「OLTA」と名前を変えて登場。OLTA は中小企業に特化したファクタリングサービスだ。大企業と違って、成長余力はあるのに資金が少ないことで頭を抱える中小企業は少なくない。彼らにとっては、会社の業歴が浅い、売上規模が小さい、担保が無いとなどの理由から資金調達の手段も限定的だ。

OLTA では事務コストを圧縮しスピーディーなファクタリングサービスを提供するため、人工知能を活用した売掛金の与信審査の効率化・高度化モデルの確立を検討。MUFG からサンプルデータをもらって与信のスコアリングモデルを開発、このモデルを活用したところ、資金を貸し出した場合の想定デフォルト率(貸し倒れ率)は3〜5%程度までに抑えられることがわかった。この数値はファクタリングサービスを事業展開する上で十分に採算が取れるものなのだという。

今後は API 連携、CRM や MA ツールとの連携、独自集積のデータ活用などにより、スコアリングモデルの制度を向上を狙う。また、6月に試験的にオンライン広告を展開したところ3週間で20社前後の申込があったものの、デフォルトリスクの高い企業が多かったため、当初は銀行紹介による顧客開拓を中心に据える考え。8月からは、MUFG の持つ顧客ネットワークと資金、OLTA が開発するオンライン完結型手続システムと人工知能による審査を掛け合わせ、実用試験を開始するとしている。

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