スマホアプリ向けキャラクタースタンプ制作のクオン、東宝と資本業務提携——動画やライブコマースへのキャラクタ活用など、新業態にも進出へ

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東京を拠点に、日本内外向けにスマートフォンアプリ向けキャラクタースタンプの制作・流通を展開するクオンは24日、東宝(東証:9602)と資本業務提携したことを発表した。調達額は明らかになっていないが、関係者によれば、数千万円程度の規模とみられる(日経の報道によると、約5,000万円)。東宝にとっては、映画関連ビジネス以外の分野への事業開発を、また、クオンにとっては、東宝のコンテンツ IP を活用した中国を含む日本内外の市場への営業強化を念頭に置いているようだ。

クオンは2011年の設立。設立当初は「LOUNGE」という名前のメッセージアプリでアジア市場を席巻しようとしたが、うまくいかなかったようだ。2012年、モバイルアプリ向けのキャタクタースタンプ制作の分野にピボットし、LINE、Facebook、WeChat、KakaoTalk など主要メッセージアプリに配信を始めた独自制作のキャラクタースタンプが人気を獲得した。これまでに全世界のスタンプダウンロード数は19億件、うち無料スタンプのダウンロードは99%超が日本国外からとのことだ。

クオンの主要スタンプキャラクター
(C) Copyright 2017 Quan, Inc. All rights reserved.

今後は、キャラクターのマーチャンダイズにも力を入れ、タイ法人や今月設立した中国法人とあわせ、アジアでのライセンス展開を加速。スタンプだけでなく、動画メディアや VR/AR メディアへのキャラクター挿入などの新たなビジネスを始める。

しばらく会っていなかったクオンの創業者で CEO の水野和寛氏に、これまでの軌跡と最近の動向を聞いてみた。

ビジネスはすでに黒字化しているが、ここからさらにマネタイズを増やして、おそらく、IT を活用したディー・エル・イー(東証:3686)やサンリオ(東証:8136)のような姿を目指すことになると思う。今後展開していくのは、動画やライブコマースの MC をクオンのキャラクタに置き換えて、3D で動かしてみるとか、そのような分野ですね。

チャットサービスは(市場を席巻するのは)難しかったけど、スタンプの世界ではほぼ取ることができた。世界のどこの国のユーザでも、だいたい、クオンのスタンプを10個くらい提示すると、そのうちの何個かは知ってもらっているという状態だ。Facebook のアメリカ本社に行ったとき、自分たちのキャラクターの名前がつけられたミーティングルームがあって、こんなところにもファンがいるんだということを知って感動した。

世界市場を見ていると、問題解決型のビジネスはアメリカや中国のスタートアップが持って行ってしまっているように思える。日本のスタートアップが世界に出るなら、問題解決型ではない分野で戦っていくことに意味があるのではないか、と思っている。「全然ロジカルではないけれど、現象が起きてしまう」的なサービスを提供できる分野だ。

水野和寛氏

東宝は、同社の中期経営戦略において「キャラクタービジネス展開」「海外市場開拓」を重点投資領域に定めており、クオンのキャラクター事業における斬新なビジネスモデルや、海外を含めた世界中にユーザーを持つ SNS プラットフォームとのパイプに注目した。
クオンとの提携によって、キャラクタービジネス全般に関するノウハウの獲得に加え、両社による新規キャラクターの共同開発、共同所有、及び双方の持つマーケティング資産、手法を活用した海外展開を含めた共同事業など、シナジー創出を進めるとしている。

クオンは2012年に、Netprice.com(現在の BEENOS)と East Ventures からシード資金を調達。2014年に、大和企業投資East Ventures電通デジタルホールディングスIMJインベストメントパートナーズ三井住友海上キャピタル池田泉州キャピタルから数億円を資金調達している。

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