ANRIが60億円新ファンド、ネット・テクノロジー領域のシードを支援ーーICO活用も視野

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2017.8.31

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佐俣アンリ氏が代表パートナーを務める独立系のベンチャーファンド「ANRI」は8月31日、同ファンド3号となる「ANRI3号投資事業有限責任組合」を設立したことを公表した。出資者として参加するのはミクシィ、グリー、アドウェイズ、VOYAGE GROUPの既存LP(リミテッド・パートナー)に加え、ヤフー、中小企業基盤整備機構、みずほ銀行、西武信用金庫など。ファンド規模は60億円となっている。

また米アンドリーセン・ホロウィッツなどに見られるような、ファンド内に法務や知財、組織、PR・マーケティングといった事業・企業構築に必要なノウハウを持つチームを組成し、出資先企業のフォローオンを重視する姿勢を目指す。現在のオフィスは渋谷と本郷の2拠点で、それぞれにインキュベーション中のチームが在籍している。今後も拠点は拡大する予定で、1人から3人程度のシード期企業を支援する。

佐俣氏の説明では、これまでの1号、2号ファンドで出資した支援企業の数は47社。代表的な出資先としてYouTuber、ヒカキン氏の在籍するMCN「UUUM」やラクスル、コインチェック、コイニー、スマートドライブ、スクー、カンム、CLUE、ハコスコなどがある。なお、1号ファンドでのエグジット(株式の譲渡)は5社で、公表されているものとしてはMERY、ママリ、ユーノート、エニドアがある。

「手のかかる」シード期企業を積極的に支援

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8月30日に東証マザーズに上場したUUUM

1号ファンドを設立して6年目のANRIが大きく注目されたのは、昨日マザーズへの上場を果たしたUUUMだろう。YouTuber熱の盛り上がりがまだ顕在化する前の4年前にシード投資を実施し、一気に市場を牽引することになった。上場承認時の有価証券報告書を確認するとANRIが保有する同社株は約17%となっている。

佐俣氏の説明だと今後もスタイルは崩さず、シード時に10%、15%を保有してリードインベスターとしてその事業にコミットし、その後もフォローオン(追加投資)することで最終的な株式保有率を25%程度に抑えるようなイメージを持っているという。積極的に事業関与はするが、企業の重大な決定事項に関わるような支配はしない、という考え方だ。

一方でこの方法は非常に手がかかる。周囲のファンドの投資スタイルを見ても、IPO(マザーズ)で100億円から200億円規模、買収となると数十億円のレンジが目立つ。企業に対して大きくコミットすることでエグジット時に大きなリターンを期待するか、もしくは数多く投資してハンズオフしてしまうかどちらかに振れやすい。

ただ、佐俣氏はまだ33歳という若さもあり、起業家にチャレンジしている姿を見せたいということでこの茨の道を選んだそうだ。今回はファンドサイズも大きくなったことから、支援先には最大で5億円までのフォローオンが可能という。

ICOとのコラボレーションの可能性

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Sapeet代表取締役の築山英治氏は東大で流体力学を研究

テクノロジー領域のシード企業に積極的な投資を考えているのもANRIの特徴だ。VRソリューションのハコスコやスマートドライブ、先般取材したSapeetも東大で流体力学を研究していた学生起業家が立ち上げている。佐俣氏の説明だと、こういったテクノロジー・研究領域のシード企業には行政による資金支援などがあるものの、シリーズAラウンド(事業化フェーズ)までに深い「死の谷」が待っていることが多いのだという。

ANRIに参加しているパートナー、鮫島昌弘氏は元々東京大学エッジキャピタル出身で技術分野の造詣が深い。とはいえ100発100中といくはずがないのがこのシード投資の難しさでもある。

私は佐俣氏に一つの可能性として最近話題が顕在化しつつあるICO(新規コイン公開)の活用について尋ねてみた。米ではユニオンスクエアベンチャーズやウィンクルボス・キャピタルなどがVCファンディングとの「ハイブリッド」を模索しているという情報もある。

これについて佐俣氏は発達障がい児と専門家のマッチングサービス「Branch」への出資を引き合いにこんな考え方を披露してくれた。

「ファンドというのはベンチャーキャピタルにとって一つのプロダクトだと思うんです。例えば私は個人で年間に1000万円を寄付しているのですが、非営利・営利の両セクターで解決できる問題というのは違います。しかし一見すると寄付でしか解決できなさそうなものも、VCファンディングが活用できるかもしれない。現在は寄付をすることでこういった情報が多く寄せられている状況です」(佐俣氏)。

トークンセールスという手法は資金調達でもあり、また同時に投融資している支援者にとってはそこがエグジット(起業家によるMBOや、場合によっては配当という道)の可能性にも繋がる。

これは私見だが、株式市場は常に株主たちから「上げ」の圧力を受ける運命にあると思う。しかし前述のBranchのような社会活動もしかり、特定領域の高度な技術などの全てが「上がり続ける」事業に確変できるかと言えば難しい。事業がごまんというバラエティに富んでいるのであれば、資金調達やエグジットのスタイルにもオプションが増えてしかるべきなのだ。

現時点で具体的な何か、という動きの話を聞くことはなかったが、佐俣氏は確実にトークンセールスに関する知見を深めていることは間違いなかった。ANRIは3号ファンドで100社への支援を目指す。

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