買取アプリCASH、毎日1000万円までの「ノールック買取」再開ーー光本氏が「9割の取引成功」で手にした勝機

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「事業としてやっていけるという確信ができました。戻ってきました」(光本氏)。

ーー6月28日の狂ったサービス公開から約2カ月、ついにCASHが戻ってきた。

買取アプリ「CASH」を運営するバンクは8月24日、査定業務を一時中断していたCASHのサービス提供と、バージョンアップしたアプリの配信を再開した。リリース時からの主な変更点としては特に設定のなかった買取金額が毎日1000万円に設定され、画像認識によるカテゴリ外出品の抑止や、悪質な出品者に対して運営側が評価できるシステムが導入された。iOS対応でダウンロードは無料。

また、開始当初に話題となった「買取キャンセル」による返金と手数料(15%)のスキームが廃止され、取引のキャンセルは無料になっている。取引に設定されていた期限は2カ月から2週間に短縮され、リユース品の買取に最適化されたサービスとして復活することとなった。

同サービスは「買い取る商品が送られる前に支払う」という画期的なノールック買取で爆発的な流通を生み出し、開始から僅か16時間で3.6億円の流通に成功した。なお、サービスについての細かい説明や経緯についてはこちらの記事をご覧いただきたい。

<参考記事>

3.6億円をバラ撒いた結果ーー取引の8割が既に商品を発送済み

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初日の取引で7500個の商品が送られてきて青ざめるバンク代表取締役の光本勇介氏

さて、CASHを大変興味深く見てる方も多いのではないだろうか。

結論から言うと、相当高い確度で光本氏らはこの事業に確信を抱くことができた、というのが話を聞いた率直な感想だ。ビジネスモデルのコアの箇所はさすがに非開示だったが、それでも言葉の端々に初月からの具体的な数字の手応えを感じさせる強さがあった。

まずは前回分も含め彼らの公開した数字(7月26日集計)から見てみよう。注目したのは次の数字だ。

  • 全体アクセスの20%が取引を希望し、98%が買取を希望
  • キャッシュ化された回数、約7万3000回(6月29日時点)
  • キャッシュ化したユーザーの81%がアイテムを送付済み

キャッシュにするを選んだ、つまり実際に取引を希望して現金を振り込まれた回数が「キャッシュにする」アクセス全体の2割で約7万3000回(査定は16時間時点で停止したのでこれがほぼ全数)。その内、ほぼ全員がアイテムを送る買取依頼を選択し、8割以上がアイテムを送付済み、ということになる。

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6月29日時点で集荷依頼があったのは7500個程度、つまりざっくり1割程度しか回収ができていなかった。もしこの回収率が3割とか低い数字に止まれば光本氏は「金をバラ撒いて持ち逃げされたバカ」として歴史に名を刻むことになっただろう。

しかし事実はそうでなかった。彼はこの勝負に勝ったのだ。

ビジネスモデルはキャンセル手数料ではなく買取モデルへ

ゴミが大量に送られてくるとか金を持ち逃げされるということはなかった一方、当初の想定と少し違った形になったのがビジネスモデルだ。

CASHは質屋のモデルを参考にした買取サービスだった。

商品を査定して即金してもらったお金は、2カ月後の取引期限までに商品を送って買取してもらうか、もしくは商品を送らず「取引を辞退した機会損失補填」として15%の手数料を上乗せし、返金するかのいずれかを選択できるようになっていた。

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公開当初のコンセプトは買取か返金キャンセルかを選ぶ二択だった

これがCASHをして買取スキームを流用した少額融資モデルと表現された理由だ。

しかし結果は見ての通り、キャンセルして手数料を払った人は取引したユーザーのわずか2%に留まる。つまり、CASHは買取のモデルで事業成立させる必要に迫られた、とも言える。

では彼らがノールックで買い取った商品がどれほどの価格で売れるのか?

詳細は伏せられたものの、送られてきたものに偽物やゴミは驚くほど少なく、しっかりと次に流通させることのできる商品だった、という結果になったらしい。売却先についてもビジネスモデルの中心部分で詳細は非開示だが「十分に事業ができるスキームが構築できた」(光本氏)ということだった。

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ファッションアイテムが多く送られてきた

逆に言えば、少額融資モデルよりも当初期待していなかった買取モデルに相当のチャンスを見出したからこその再開と考えられる。STORES.jpを成功に導いたコマースのノウハウが役立ったのだろうか。

ちなみに、今回のバージョンアップから簡易な画像認識が導入されることになった。例えば靴のカテゴリに自分の顔を写して送信しようとしても今回からはできない。

更に運営側の評価システムによって、いたずらや悪質な偽物などの送付をするユーザーに対しては査定金額を著しく下げることや、最悪の場合は退会してその電話番号では二度と使えないようにするなどの措置を取るという話だった。

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毎日1000万円が買取資金として用意され、キャッシュ化されるにしたがって予算が減っていく

買取の上限は毎日1000万円まで

「世の中の少額資金ニーズをハードル低く、かつスピーディーに埋めていく。ここに応えられる企業はわずかです。この体験をユーザーにとってよい形で届けられるのであれば(買取でもキャンセル手数料でもビジネスモデルは)どちらでもいい。この莫大なマーケットを取ります」(光本氏)。

初日に驚くべき出金を経験した光本氏は、今回から毎日の設定金額を1000万円に設定し、シークバーでキャッシュ化を希望するユーザーに今日、支払える金額を明示することにした。この金額は向こう数カ月で上振れなどの調整をしていくという話だった。

また、一部で批判のあった買取による少額融資モデルというややグレーっぽいスキームが消滅したことで、純粋なリユースプラットフォームへ昇華したのも評価したい。

今日、再開を果たしたことでおそらく類似のサービスを手がける人も出てくるだろう。光本氏にその点を聞くとこうコメントしてくれた。

「資本力があるところじゃないとこのゲームに参加できないということは、大企業が前提になると思うんです。僕たちがどこよりも「スピード」感をもって展開をし、先駆者メリットを最大化し、ユーザーと認知をいかに早く取れるかが勝負かなと思っています」(光本氏)。

買取特化に振り切ったことで「メルカリ対抗」としての存在感が強まったCASH。彼らがどのように推移するのか、また新しい動きや数字などが出たらお伝えしたい。

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