バンコクで活動する連続起業家の神谷和輝氏、乗用車オーナーがラッピング広告でお金を稼げるサービス「Flare(フレア)」を正式ローンチ

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バンコクには日本人起業家のコミュニティが存在する。彼らは、自らのスタートアップに傾倒する傍ら、タイと日本のスタートアップ・コミュニティの橋渡しにも余念が無い。神谷和輝氏は、そんなコミュニティで以前からコアとなる存在だ。神谷氏は2013年11月にタイに移住し、2014年5月に Skype で学べるタイ語学校を立ち上げ。その後、翻訳・通訳のクラウドソーシング事業、タイのビジネスポータルサイト運営を経て、今回新たに立ち上げるのはオンデマンド型のリアルビジネスだ。

神谷和輝氏

神谷氏が運営するバンコク拠点のスタートアップ Flare は14日、自分の車のボディにラッピング広告を貼ることでお金を稼げるサービス「Flare(フレア)」を正式ローンチした。当面はタイ国内でサービスを提供し、事業の成長に合わせ他市場への展開を検討するとしている。

Flare では乗用車を持つオーナーがモバイルアプリ( iOS / Android )からログインし、広告主が提示しているキャンペーンの中から参加したいものを選択。自分の車と免許証の写真をアップロードして応募すると、ラッピング業者がオーナーのもとまで広告をラッピングしに来てくれる。広告をつけた状態で、その車がどのように道路を走行したかは、アプリを通じて GPS 情報が Flare に転送される。キャンペーンには広告主があらかじめ予算を設定しているが、当該の広告をつけた車が交通量の多い週末の大通りを走行すれば予算が多く消費され、逆に交通量の少ない地方では予算が消化されにくいシステムとなっている。広告主はダッシュボードにログインして、予算の消化状態やキャンペーンの進捗状態を確認できるしくみ。

15年位前からBTS(スカイトレイン)や地下鉄が走るようになり、公共交通機関を使うことの多い筆者は、バンコクが渋滞の多い街だと感じることはさほどなかったのだが、オランダのカーナビ会社 TomTom が毎年発表する世界の都市別交通渋滞ランキングでは、バンコクが世界の2位の座に君臨。渋滞を緩和することも大事だが、ここは現状を逆手に取った発想で「世界2位の渋滞都市で、運転中のストレスを軽減できるサービスが欲しい」というアイデアから Flare が生まれたのだそうだ。2017年7月にプレリリースしてからの1ヶ月で、既に500台以上の車が Flare のラッピング広告をつけて走るまでに登録するまでに成長しているそうだ。

キャンペーンラッピングカー その1
キャンペーンラッピングカー その2

さらに興味深いことに、Flare は意外に稼げるのである。平均的に車を運転するユーザだと、Flare から1ヶ月に得られる報酬は3,000バーツ〜5,000バーツ(1万円〜1.6万円程度)。タイの1人あたり月間 GDP は490ドル程度(5.4万円)なので、実に月の平均報酬の5分の1〜4分の1が稼げてしまう計算だ。この金額は、タイでアパートに相応の住居で暮らすのに十分な1ヶ月の家賃に相当し、車の維持費に充当してもお釣りがきてしまうほどのものだ。Flare を使えば、市民が本業を日常通りこなしつつ、追加の労力無しで生活を豊かにすることができるわけだ。

今は、Grab や UberX のドライバーもうちのアプリを利用しています。今後は、乗用車だけでなく、トゥクトゥクやバイタク(バイクタクシー)版もリリースしていきます!(神谷氏)

広告主向けのダッシュボード

世界を見てみると、Flare と似たようなサービスは、いくつか存在する。アメリカの10都市でサービス展開する Wrapify、デラウェア州最大の都市ウィルミントンを拠点に展開する Carvertise、インドネシア・ジャカルタを中心に展開する Sti-car などだ。タイ国内には今のところ競合は存在しないが、Grab や Uber などのカーシェアリング大手が、ドライバーへの追加的収入源の提供を意図して、同様のサービスを始める可能性は否めない。Flare がどれくらい市場を先取りできるかが見ものだ。

Flare はエンジェルラウンドで、日本人エンジェル投資家数名から資金調達を実施しているが、タイのスタートアップは、国内市場規模から言って、タイ国外のアジア諸国にサービス拡大することはデフォルトのコースなので、Flare が市場拡大のために追加の資金調達を実施するのはそう遠くない将来のことだろう。現状、ラッピング広告の掲出先はタイ国内を走行する乗用車が対象となるが、Flare ではタイ国内向けにサービスを営業展開している日本企業からも、積極的に広告出稿を募っていきたいとしている。

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