インド最大のEコマースマーケットプレイスFlipkart、SoftBank Vision Fundから25億米ドルを調達——ソフトバンクは、Flipkartの最大株主に

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Image credit: Flipkart

バンガロールを拠点とする E コマースマーケットプレイスの Flipkart は、ソフトバンクが最近立ち上げた1,000億米ドル規模のファンド「SoftBank Vision Fund」から新ラウンドで資金調達したことを今日(原文掲載日:8月10日)発表した。

数日前、Flipkart は自分より小さい競合であるが、ソフトバンクが最大の投資家である Snapdeal の買収を中止していた。

調達額は正式には開示されていないが、インド Economic TImes の報道では25〜26億米ドルと見積もっている。今回の出資によって、ソフトバンクは Flipkart の最大株主となる。声明によれば、今回の Flipkart への投資は、第一次資本(primary capital)と第二次資本(secondary capital)の組み合わせによるものだ。今回の投資は、Flipkart が Tencent(騰訊)、eBay、マイクロソフトから調達した14億米ドルで始めた最近のラウンドの一部となる。報道によれば、今回の調達を受けて、Flipkart のこれまでの最大株主だった Tiger Global は部分的にイグジットする。

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Flipkart は、バランスシート上で、40億米ドル超のキャッシュを手にすることになる。

Flipkart の創業者 Sachin Bansal 氏と Binny Bansal 氏は共同声明の中で、次のように述べている。

今回の調達は、我々が持つ技術力、イノベーティブなマインドセット、そして、伝統的な市場をディスラプトすべき可能性を示唆している点で、Flipkart にとってもインドにとっても、画期的なものです。母国で生まれたテック・エコシステムが繁栄を続け、インドじゅうの人々の日常生活の問題解決に成功していることが明らかになりました。

ソフトバンクの孫正義氏は、次のようにコメントしている。

インドは、莫大な機会に満ちた国です。我々は、インドで明らかに勝者となるイノベーティブな企業をサポートしたいと思います。彼らこそ、技術を活用して人々がより良い毎日を送れるようにできる最良の立場にあるからです。Flipkart は、インドの e コマースのパイオニアとして、毎日それを実践しています。

Flipkart の次なる動き

Flipkart は Amazon が2012年に進出するまで、一人勝ちの状態を謳歌していた。しかし、Amazon 進出後は激しい競争にされされ、Amazon に敗北した。Amazon は組織的なマーケティング戦略を通じて、優れたユーザエクスペリエンスとサービスを提供することで、驚異的なマーケットシェアと数万人の消費者を獲得した。Amazon の騒動は Snapdeal にも影響を与え、インド・ノイダを拠点とする同社は崩壊寸前にまで追いやられた。

かつて、インドのスタートアップエコシステムの象徴だった Flipkart の状況は、この2年間ほどは良いものではなかった。同社は2016年、マイノリティ投資家の Morgan Stanley に数度バリュエーションを切り下げられた。近接する競合で世界的な E コマース大手である Amazon でも払っていないような給料額が、Flipkart ではトップ従業員に不当に支払われているとの報道がなされ、Flipkart は業界関係者からの激しい応酬にさらされることとなった。

しかし、今年初めに Tiger Global Management のマネージングディレクターだった Kalyan Krishnamurthy 氏が CEO に就任すると、物事が変化し始めた。彼のリーダーシップのもと、同社は黒字化の兆しを見せ始めた。Krishnamurthy 氏はゆっくりと行動に移し、財布の紐を締め、その紐をさらに弾き始めた。彼のリーダーシップのもと、Flipkart は顧客、業界、投資家、ステークホルダーの信頼を取り戻した。数ヶ月後には彼の献身により、同社は eBay India、Microsoft、Tencent からの資金調達契約に至った。ソフトバンクからの調達の実現は、彼がもたらしたもう一つの大きな手柄だ。

ソフトバンクによる投資は、Flipcart にとって明らかに士気を高める力となる。同社は今、Amazon の首を奪うべく多額の軍資金を手にしたことになる。競合の最大投資家から巨額の調達を得たことは、Flipkart にとって格好の刺激材料となる。多額の資金を確保して、同社はカスタマーエクスペリエンスの大幅な改善や、サプライチェーンのさらなる効率化を見出せるようになる。今回の調達は、Flipkart に倉庫ロボットや配達ドローンのような最新技術の導入を促すだろう。また、Flipkart がインドの北部や北東部市場にさらに浸透すべく、この地域で強いプレゼンスを持つ Snapdeal を買収することも、近い将来には展望できるだろう。

Flipkart の大まかな歴史

Flipkart は2007年、元 Amazon 社員の Sachin Bansal 氏と Binney Bensal 氏が創業(二人の姓は同じだが、家族や親戚ではない)。同社はのちに、エレクトロニクス、アパレル、家具などのプロダクトを取扱商品に追加。2009年には、同社最初の主要ラウンド(シリーズ A ラウンド)で1,000万米ドルを Accel Partners から調達した。

2013年、Flipkart はマーケットプレイス専業モデルにピボットした。10年以上に及ぶ存在を通じて、同社は総額46億米ドルを Naspers、DTS Global、Morgan Stanley、カタール投資庁といった高名な投資家から調達した。これまでい、ファッション小売大手の Myntra、eBay India、Letsbuy、ngpay、MapMyIndia など9社を買収している。

SoftBank Vision Fund について

昨年10月にローンチした SoftBank Vision Fund は、次世代の情報革命を実現する世界中のビジネスやテクノロジーに投資。テクノロジー分野の成長に長期かつ大規模な投資が可能で、今後5年間で最大1,000億米ドルを投資する予定。同ファンドは、1億米ドル以上の小規模株式取得、過半数株式取得、プライベートエクイティ投資を通じて出資する。最低投資期間は10年間を目指しており、企業に対して、長期的な成長向けたコミットできるパートナーを提供する。

【via e27】 @e27co

【原文】

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