ドイツの航空スタートアップ Lilium は、シリーズ B ラウンドで9,000万米ドルの資金調達を完了させた。同ラウンドには中国巨大テクノロジー企業 Tencent（騰訊）をはじめ、既存投資家の Atomico（Skype の 共同設立者 Niklas Zennström 氏設立の VC）、Obvious Ventures（Twitter の共同設立者兼元 CEO、Evan Williams 氏設立の VC）、グローバル金融・資産管理グループ LGT など、少数の著名な投資家らが参加した。

2014年にミュンヘンで設立された Lilium（数ヶ月前に Lilium Aviation から社名変更）は、「誰でも好きな時に好きな場所へ飛んでいくことができる」ような世界の構築に向けて、垂直離着陸可能なフル電動コンパクトジェット機の製造に乗り出した。これがうまくいけば、高いコストと広いスペースが必要な滑走路が不要となり、Uber 方式の航空タクシーを10年以内に市場に投入するという Lilium の使命も実現可能となる。

実際、Lilium は4月に初のテストフライトを行い、2人乗り用ジェット機のプロトタイプをドイツ上空へと送り出している。その処女飛行中に、ホバリングから水平移動への移行時および水平移動からホバリングへの移行時の操作（同社はこれを「最も複雑な操作」としている）を実行した。

その際に、比較的大きめの5人乗り用航空機の製造を目指すことを発表しており、この目標の実現は、今回新たに9,000万米ドルを調達したことではるかに容易になるはずだ。

前回 Atomico がリードする1,070万米ドルのシリーズ A ラウンドを完了してから、今回のラウンドまでは1年も経っていない。同社は新たに手に入れた資金を利用して、地上輸送に匹敵する価格で最大時速300km の旅客輸送を実現し、「低コストの空の旅を大衆に提供する」という計画を「加速」させていく予定だと述べている。

Lilium の共同設立者兼 CEO である Daniel Wiegand 氏は語る。

今回の投資は Lilium にとって非常に重要なステップであり、これによって5人乗り用ジェット機を現実のものとすることができます。

これは、1つのアイデアから、世界中の都市内および都市間における移動手段に革命をもたらし、商業的に成功するような航空機の生産へと急速に進化を遂げる私たちにとって、次なるステージなのです。

都市における個人の航空輸送を現実のものにするという Lilium の使命は、今後数年間で規制当局の厳しい調査を受けることになるだろう。しかし、現在世界中で多くの航空スタートアップが同様の目標に向けて取り組みを行っており、そのおかげで Lilium の道のりは少しばかり容易なものになっている。

道路? 私たちが行くところに道路は要らない

現在、空飛ぶ車などの個人航空輸送の形態が、ある種のトレンドになっている。マサチューセッツに本拠を置く Terrafugia は、10年以上にわたり「空陸両用」航空機のプロトタイプの開発を行っている。また、Google の共同設立者である Larry Page 氏は航空スタートアップ2社を支援している。さらに、ブルームバーグの報道によると、Kitty Hawk は今年、超軽量パーソナル航空機を発表し、 Page 氏は「垂直離着陸可能なフル電動の小型航空機」を開発する Zee を2010年に設立している。

それ以外にも、スロバキアに本拠を置く AeroMobil が最近アジアに自社の航空機を導入するために新たな資金を調達し、ワシントンに本拠を置く Zunum Aero は稼働率の低い何千もの地方空港を利用する小型電動航空機を将来的に実現するために取り組んでいる。

また、Airbus は2017年末までに自動運転航空機のテストを行う計画を発表している。

5人乗り用ジェット機の開発強化に加えて、Lilium は採用に力を入れ、現在70人のチームを拡大させる計画を明かしている。先月（8月）にも、Airbus、Tesla、Gett（Uber 世代向けに設計された Lilium のオール電動航空機の計画をかなり具現化している3社）の元役員を引き入れたことを発表した。

Wiegand 氏はこのように語った。

航空工学、物理学、電気推進、コンピュータサイエンスの分野において世界で最も優秀な人材を採用し続け、この素晴らしい空の旅に参加してもらっています。ここでは、物理法則以外に限界はありません。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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