いよいよ今夜ICO開始、グルメアプリにトークン報酬の概念を持ち込む「SynchroLife」神谷知愛氏に聞く——エンジェルからの調達も明らかに

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THE BRIDGE では7月に、格付けグルメアプリの「SynchroLife(シンクロライフ)」が ICO を実施する計画であることをお伝えした。残念ながら、この ICO は予定通り8月中に実施されなかったが、スケジュールが改められ日本時間の今夜から ICO が実施されることが明らかになった。リスケの理由について、SynchroLife を運営する GINKAN 代表の神谷知愛氏は、ICO 実施のための体制の整備に時間を要したためとしている。

プロジェクト発表後に ICO がリスケや中止を余儀なくされるケースは少なくないが、SynchroLife ではこの準備を整える過程で、さらに彼らの動きを後押しする支援が周囲からもたらされた。元サイバードホールディングス代表取締役会長の小村富士夫氏ほか、エンジェル投資家2名からエンジェルラウンドで3,000万円の資金調達に成功したのだ。

CGM(コンシューマ・ジェネレイティッド・メディア)や UGC(ユーザ・ジェネレイティッド・コンテンツ)という表現を聞くことは以前に比べなくなったが、ある種のユーザの良心に依存した情報投稿型のメディアは、ここに来て岐路に立たされていると言っても過言ではない。フェイクニュースの横行、有名芸能人に対するデマの拡散グルメ店評価サイトからのレビュー削除など、情報投稿者への評価が正当な価値をもって還元されない現在のメディアの形には、まだ多くの課題が残存することが明らかになっている。

その点で、昨年アメリカで生まれた Steem や、Steem のアイデアにインスパイアされ日本市場向けのサービスを提供しようとする ALIS には、次世代メディアの姿があるのかもしれない。ALIS とて MVP(実用最小限の製品)の開発はまだこれからであるから、実態がどのようなものになるかは蓋を開けてみたいとわからないが、それでも ICO 開始から3週間で338万ドル以上の資金を集められたのは、単なる投機目的だけでなく、新しいメディアのしくみに可能性を感じるユーザが数多くいることを表しているのだろう。

インタビューに応じる GINKAN 代表取締役 神谷知愛氏(左)と、マーケティングを担当する Laura Symborski 氏(右)
Image credit: Masaru Ikeda

ユーザがグルメ情報を投稿する SynchroLife の場合、その情報の正確性や透明性をブロックチェーンのしくみを使って担保するしくみに作り変えようとしているようだ。投稿内容の評価に応じて、ユーザはトークンという(SynchroLife ユーザの間では)世界共通価値となるユニバーサルなインセンティブが得られる。この世界観を実現するために、SynchroLife は7月、モバイルアプリをバージョン3.0 に大幅改版、これまでの日本語・英語に加え韓国語と繁体中文対応を追加し、グルメ店舗に関する投稿も世界155カ国に対応させた。

モバイルアプリは今後のバージョンアップにより、投稿された情報の経験値に応じてユーザにトークンが付与される機能が追加される予定。神谷氏曰く、SynchroLife のコミュニティが自立分散し、運営者である GINKAN の手を離れ、有益な情報を投稿した人がトークンを稼いでくれる事例が多く出てくることを期待しているという。将来的には、トークンと連携するデビットカードを発行し、SynchroLife のユーザが稼いだトークンを市中での買い物や飲食に使えるような世界を構想しているそうだ。

フォトグラファー、ライター、ミュージシャン、アーティストなど、各種クリエイターに特化したトークンやそれを活用したメディアサイトも現れ始めた。ただ、その多くはまだ MVP の開発に着手したところで、すでにアプリがあって、一定のユーザベースを抱えているという点で SynchroLife は他のプレーヤーより先行していると言えるかもしれない。提供者サイドの圧力をほぼ受けず、投稿者が公正なインセンティブが得られる評価サイトというアイデアが、ICO を通じてどの程度の資金を集め、新たなファンを世界中から獲得できるか注目したい。

SynchroLife の ICO 実施にあたっては、暗号化トークンを使って、人材採用や給料支払のできるブロックチェーン・プラットフォーム「Starbase」の佐藤智陽氏がエスクロー兼アドバイザーとして協力している。

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