これぞ中国政府がICOを禁止した本当の理由? アルパカコイン(馬勒戈幣)をはじめ、とんでもないICOの例を紹介

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中国が全ての ICO を禁止して以降ビットコインの価格は急落し、ICO を利用して資金調達を目論んでいたスタートアップ企業は大惨事に見舞われた。国家インターネット金融安全技術委員会(国家互聯網金融安全技術專家委員会)の報告によると、2017年1月から6月にかけて ICO に対し3億9,400万米ドルが拠出されている。しかし、規制がないため詐欺や投機が蔓延している。

どれだけ熱狂状態になっているのだろうか。我々は市場に出ているとんでもない ICO(または ICO になりすましたクラウドファンディングプロジェクト)の例を3件発見した。これらの例は、資金調達活動を完全に禁止するという決定への強い追い風となっている。

MLGBI(馬勒戈幣)

投資資料のスライドから
Image credit: MLGBI

2017年中頃に開始した MLGBI は、有名な暗号通貨である Ethereum を5,000単位調達しようとしているクラウドファンディングプロジェクトである。MLGBI チームは、「Massive Linked Grid Basic Infrastructure の頭文字をとって MLGBI としている」と述べており、彼らが構築しようとしているブロックチェーンプラットフォームを示している。

MLGBI へ投資したことを知らせる Charles Xue 氏の Weibo(微博)投稿
Image credit: Sina(新浪)

しかし、このクラウドファンディングキャンペーンは中国名「馬勒戈幣」(「媽了個屄(あなたのお母さんの性器を犯す)」という卑猥な言葉の同音異義語)で注目を集めた。信用するためには彼らの投資資料も見る必要があるが、そこには「アルパカ(草泥馬、中国語ではこの言葉も卑猥な言葉の同音異義語「肏你媽=f**k your mother」)標準人工知能」や「ブロックチェーン技術に基づいた初の現代的パフォーマンスアートワーク」とスライドに記載されていた。

確かにパフォーマンスアートだ。エンジェル投資家の Charles Xue(薛蛮子/薛蛮群)氏(成功したテック系企業の設立者で、Weibo=微博で多くのフォロワーを持つ)がこの ICO への投資に興味があることを表明するまでは、誰も本気で取り合うなんてことは信じられなかった。

9月13日現在、MLGBI の中国語ウェブサイトでは初期のパフォーマンスアート風の行いについての謝罪と、調達したおよそ5,000ETH を返金するよう求めた政府の命令に従うことが掲載されている。

GX Coin(万福幣)

中国語で吉兆コインを意味する「万福幣」として市場に出回っている GX Coin プロジェクトは、暗号通貨であり Ethereum に基づいて開発された取引プラットフォームだと主張している。GX Coin は Global Future City Holding, Inc. と関係が深いが、同社はウェブサイトやそれ以外で何をしているかについてあまり多くを公表していない。

GX Coin の特典還元スキーム
Image credit: Hao Xitong(好系統)

最初の1年で最大800%ものリターンが得られると主張しており、ここに投資家が惹きつけられている。2016年2月に GX Coin がローンチされてから2016年5月までに、GX Coin の価格は1コインあたり20人民元(約340円)から25人民元(約420円)へと25%上昇した。明確なビジネスモデルはなく、GX Coin の価格は純粋に投資家の流入だけによってつり上がったとみられる。言い換えれば、出資金詐欺である。

GX Coin の主宰とされる Samuel Liu 氏が、ジョージ・W・ブッシュ氏やバラク・オバマ氏、ヒラリー・クリントン氏と共に写真におさまっている
Image credit: Samue Liu

GX Coin は中国系アメリカ人実業家の Samuel Liu 氏がローンチした。彼はジョージ・W・ブッシュ氏やバラク・オバマ氏、ヒラリー・クリントン氏といったアメリカの政治家との関係を自慢気に語っている(写真が画像編集されたものかどうか議論されている)。GX Coin が出資金詐欺だと明らかになってから、彼は約20億人民元(約340億円)に値する額の詐欺容疑で、会社の60人の従業員とともに逮捕された。

Travelling Free Token(自由行)

この ICO はブロックチェーンを基にした消費や娯楽のエコシステムを構築するために資金調達を行っていた。しかし、Travelling Free Token の投資資料は中国メディアによってすでに詐欺であると酷評を受けていた。今では禁止されているため、Travelling Free Token は二進も三進も行かなくなっている。

Travelling Free Tokenの投資資料を見ると、キャセイパシフィックやカルフール、アマゾン、スターバックスといった複数の大企業とパートナーシップを結ぶ合意を得ていたと主張している。Beijing News(北京報)の取材に対しスターバックスは、Travelling Free Token とのいかなるパートナーシップについてもこれを否定した。カルフールも同様の回答だった。

Travelling Free Token のウェブサイトはしばらく更新されておらず、2017年9月に中国で ICO が禁止となった後も中東、ヨーロッパ、北米に拡大するという野心的な計画を概説したページが残っている。

出来すぎた話

ここでは、合法か否かに関わらず市場に氾濫しているたくさんあるICOのうちの3つだけを取り上げた。しかし、WeChat の ICO グループで広まっている格言以上に市場の熱狂状態を言い表す言葉はないだろう。

バカが多すぎて ICO が足りない。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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