Twilioのヨーロッパにおける競合MessageBird、シリーズAラウンドで6,000万ドルを調達——Accel、Atomico、Y Combinatorから

by Paul Sawers Paul Sawers on 2017.10.17

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MessageBird ホームページ
Image Credit: Paul Sawers / VentureBeat

Twilio のヨーロッパ版ライバル MessageBird は、Accel がリードしたシリーズ A ラウンドで6,000万米ドルを調達した。他にもロンドンの Atomico と Y Combinator が参加している。同社は初期の段階では収益化に向けて自己資金で運営してきたというが、今回のラウンドが同社初の大規模な資金調達となった。

MessageBird はアムステルダムで2011年に設立された。昨年、Y Combinator のアクセラレータプログラムに参加し、12万米ドルという少額の「シード」資金を受け取ったが、それが同社がこれまでに取得した唯一の資金である。本日(10月3日)の発表は、ヨーロッパのソフトウェアスタートアップがシリーズ A で調達した額としては最大のものだと評価されている。ただし、イギリスの決済会社 Powa は4年前に7,600万米ドルをシリーズ A で調達しており、それには一歩及ばない。Powa はその後徐々に業績を悪化させ、昨年破産した

衝突する2つの世界

MessageBird と Twilio にはいくつかの違いがあるが、大まかに言って両者は似通っている。双方ともクラウドベースのコミュニケーションプラットフォームを開発者と企業らに提供している。どちらのプラットフォームでも、独自の API(アプリケーションプログラミングインターフェース)を通じて自社製品にチャットとメッセージ送信機能を加えることが可能だ。ソフトウェア、クラウド、API を組み合わせることで、高価なハードウェアインフラへの投資を回避することができる。企業がテキストベースまたは音声ベースの機能を自社サービスに組み込みたい場合、コスト効率の高いソリューションとなる。

MessageBird はサンフランシスコの競合である Twilio ほどは話題になっていない。Twilio は2008年に設立され、2億3,000万米ドル以上の資金調達を行った後の昨年6月、ついにニューヨーク証券取引所(NYSE)で上場を果たした

Twilio と MessageBird は互いに競合だが、前者はアメリカで華々しいスタートを切っている。MessageBird もさらなる成長のためにアメリカ市場をターゲットに据える動きを見せている。さて、昨年 Twilio は IPO を行ったが、セクターの注目はさらに高まっただろうか?

MessageBird の設立者で CEO の Robert Vis 氏は VentureBeat へのインタビューで次のように説明した。

IPO により、アメリカにおけるクラウドコミュニケーションの認知度は総じて確実に高まりました。大企業の中には、世界各地で可能な限り多くの顧客にリーチしたいと考えている企業があります。主にこうした会社から我々への認知度が高まっています。

現在までに MessageBird はチャット API を提供している。このメッセージング API は、Telegram、Messenger、WeChat、Line といったチャットアプリの機能をサードパーティのアプリまたはウェブサイトに組み込むものだ。これを使うとアプリ内の SMS ベースのコミュニケーション手段を拡張することができる。また、現在はビデオ API のベータテストの最終段階が行われている最中だ。6,000万米ドルを調達した同社は、本日(10月3日)ボイス API を正式にローンチした。この機能はここ数週間にわたりベータ版として提供されていた。企業らは、自社サービスに音声通話の機能を持たせることができる。Twilio が数年前からすでに提供しているのと同等の機能だ。

Vis 氏はこのように述べる。

世界最大かつ最も信頼性の高い、企業向けのテキストメッセージ API サービスをすでに構築しています。今回弊社はシリコンバレーとヨーロッパの2大投資家から資金を調達しました。今後は音声インフラを拡充し、サービスをエンタープライズ市場に売り込んでいきたいと考えています。

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MessageBird の創業者で CEO の Robert Vis 氏

クラウドベースのコミュニケーションに特化した MessageBird としては、音声 API の提供の遅れは大きな痛手のようにも思える。おそらく、これまで成長の阻害要因となってきたのではないだろうか?

弊社の顧客は、音声 API が提供されていなかった頃は単に SMS を利用していました。音声 API は顧客の要望で導入されたものです。SMS で提供してきたものと同じ水準の、国境を超えたセキュリティとコストメリットを求める声がありました。ここ最近では SMS に加えて音声通話でも、通信各社と培ってきたコネクションを活かせるようになりました。自力で事業を運営するにあたっては、成長の源となる領域にフォーカスすることが重要です。弊社の場合、これまで SMS のサービスがそれにあたりました。しかし顧客から明確な要望があったため、追加で音声 API を作ることにしたのです。

数字のゲーム

MessageBird によると、同社は発足以来黒字が続いており、現状の成長が続けば今年中に収益1億米ドルを達成する見込みだという。大変素晴らしい数字だ。比較として Twilio は、2014年に1億米ドルの収益を達成したことを公表したが、それまでに1億米ドル以上を外部から資金調達している。また、収益額達成の直後には、追加の1億3,000万米ドルを調達している。

同社によると、世界のユーザ数は1万5,000に達するという。これには DoorDash、SAP、Huawei、Amber Alert、Heineken などが含まれる。注目すべきは、Twilio が長年同社の顧客としてきた Uber が、MessageBird の顧客リストに載っていることだ。Twilio によると、最近 Uber は Twilio の技術への依存を減らそうとしており、これは Twilio の株価が大きく下落した要因となっていた。

Uber をこれまでに利用したユーザも、同社アプリの高速なメッセージ機能のありがたみには気づいていないだろう。アプリではドライバーと直接音声通話することもできる。つまり、メッセージの送信を介して電話番号をやり取りする手間は不要だ。

Vis 氏はこうコメントしている。

クラウドコミュニケーションのおかげでこうしたやり取りは快適になっています。ドライバーと利用者の双方にバーチャルな電話番号が割り当てられているために可能になっているのです。番号を教える必要はなく匿名で通話可能なので、ドライバーと利用者はお互いの実際の電話番号を知ることはありません。

ユーザは全世界で数千万人にも及ぶため、信頼性の高いインフラが求められる。潤沢な資金を集めている Uber のような企業にとってさえ、システムの全てを内製するよりはアウトソースする方がはるかに簡単だ。

コミュニケーションに妥協できない大企業が弊社の顧客です。コミュニケーションの品質は、すなわちその企業のビジネスの水準です。セールスの電話を受けている最中に音声に不具合があれば、契約をしたいとは思わないでしょう。通話の不具合は機会の損失であり、客足が遠のくのです。

MessageBird の事業のもう一つのキーポイントは、通信会社との提携である。同社によると世界で220社のキャリアと連携を行っているという。MessageBird は音声通話の自社設備を持っており、Vis 氏によると「モバイルキャリアのまさに中心部と接続する」ことが可能だ。これによりレガシーなシステムを経由する必要がなくなり、複数のネットワークを経由した信頼性の低い通信回線を使わずに済む。一般に、ある地点から別の地点までに多くの通信業社を経由するほど、遅延や寸断の可能性は高くなる。Vis 氏は、伝言ゲーム(一部の地域では”Chinese whispers“とも言う)に例えて状況を説明した。メッセージを耳元で囁いては次の人に送っていくと、最後の人に伝わる頃には最初の人には理解不能な内容になってしまう。

コミュニケーションの世界でも同じです。弊社は通信会社に直接接続していますので、伝言ゲームの途中の人々を飛ばして最後の人に直接伝えているようなものです。他社はゲームの一人ひとりを経由しますので、セキュリティ、通話品質、スピードが低下してしまいます。また、メッセージを伝達するためには中間の人々にも費用を払わなければなりません。これがコミュニケーションの世界で起きていることです。

なぜ Y Combinator なのか?

ここ最近の MessageBird に関する興味深い一面として、同社がアメリカのシードステージのアクセラレータプログラム、Y Combinator(YC)に参加したことが挙げられる。MessageBird は確かに資金面ではシードステージだが、YC は通常アーリーステージのスタートアップを対象にしており、数百万米ドルもの収益を確立している企業は対象外だ。では、YC とのタイアップの背景は何だろうか?

急速に成長する弊社に対して、会社としてどこを目指したいかを今一度熟慮し、方向性を定める機会を YC は与えてくれました。また、YC のポートフォリオ企業のネットワークは巨大で、アメリカ進出にあたっての潜在顧客としても参考になりました。私にとって YC は多くの創業者を輩出したハーバード大学のようなものであり、どのステージの企業にとっても有益な、集中力と基礎を叩き込んでくれます。(Vis 氏)

YC との協業で Vis 氏が具体的に学んだのは、「成長」とは顧客を単に獲得することではなく、関係を保ち続けることだ——というスローガンである。

非常に論理的な響きのあるこの言葉は、私たちのカスタマーサクセスに関する捉え方を変えました。結果、YC 以前は140%だった収益の伸び率が170%まで向上したのです。どんなステージの会社であっても YC への参加を強くお勧めします。アメリカ進出を計画しているアメリカ以外の企業にとっては特に参考になるでしょう。(Vis 氏)

MessageBird は、Y Combinator が輩出した企業の中では最高額のシリーズ A 資金を獲得した企業であると自負している。

Y Combinator のパートナーである Ali Rowghani はこのように語っている。

YC に参加する際にすでに多くのトラクションを獲得している企業は数多くありますが、MessageBird はプログラム終了時の収益額という意味では最大の企業の一つでした。

MessageBird が語る未来

現在、MessageBird は創業の地であるアムステルダムの他にも、サンフランシスコ、シンガポール、シドニーにオフィスを構えている。今回調達した資金は音声分野の強化の他にも、カスタマーサポートなどの人材雇用のために使われるという。また、アメリカ、ヨーロッパ、アジアでの買収費用にも充当するようだ。

自己資金でスタートアップを立ち上げれば、イグジットについて心配しなくてよいことが大きなメリットになる。顧客を獲得し収益が上がっている限り、買収や株式公開などは必ずしも考慮しなくてよい。確かに今回の資金調達で、MessageBird はアメリカなどの主要マーケットで勢力を伸ばせることになる。しかし同時に、これまでになかった余計な心配をする必要も出てくるのではないだろうか?

我々は長期的なビジョンを持ち、かつ、当面の間はイグジットを強要しない投資家を厳選しています。幸運にも(AccelAtomico の)両投資家とも投資資金を調達したところですので、この先10年間はイグジットの心配をする必要はありません。また、クラウドコミュニケーションの時代は始まったばかりです。非常に大きなマーケットであり、現在は既存企業に独占されていますが、将来的に飛躍的な成長を遂げるまでに時間はたっぷりとあります。(Vis 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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