メーカー横断で建材を比較できるサイト「truss(トラス)」、VCやエンジェル複数から総額1億円を資金調達

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トラスの共同創業者:左から、沖村徹也氏、久保田修司氏、平河広輝氏

建材比較ができるウェブサービス「truss」を展開するトラスは2日、直近のラウンドで1億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、DBJ キャピタル、みらい創造機構、GMO VenturePartners、SMBC ベンチャーキャピタル、元ラクスル副社⻑の守屋実氏、キープレイヤーズ代表取締役の⾼野秀敏氏、レオスキャピタルワークス代表取締役の藤野英⼈氏。なお、守屋氏は出資とあわせ、トラスの経営顧問に就任する。

トラスは2014年2月、久保田修司氏、沖村徹也氏、平河広輝氏により設立。創業者が3人共に東京工業大学出身ということで、東工大発ベンチャーの認証も受けている。創業以来、日本政策金融公庫の資本性ローンや補助金などで資金を調達しながらブートストラップモードで運営してきたので、外部からのエクイティファイナンスによる資金調達は、今回は初めてとなる。

truss は、複数建材メーカーの建材商品に関する情報を網羅するウェブサービスだ。通常、建材に関する情報は分厚い紙のカタログの形でメーカーから商社を通じて工務店に提供されるが、その情報内容は統一された指標などでは標準化されておらず、メーカー横断で情報比較することは難しい。したがって、建材の選択は施工者に記憶や習慣によることが多く、特定メーカーのサプライチェーンに依存したものになってしまう。

truss ではこれらの建材商品の情報をデータベース化し、ウェブサービスとして提供している。建材のうち現在は外皮を中心に情報をカバー、将来的には、設備、外構、内装などの建材に関する情報も追加する。法律で定められた耐火性などの基準情報のほか、メーカーの卸売価格が参考情報として掲載される。

興味深いことに、建材商品に関する情報は、商社のみならずメーカー自身もデータベースとして管理できておらず、すべては紙のカタログが頼りなのだそうだ。truss では、カタログをもとにメーカーから商品情報の提供を受けて、それらをほぼ手作業によりデータベース化している。truss はもともと建材メーカーが工務店に対して建材商品をマーケティングできるポータルという位置づけだが、商品情報をデータとして扱える利便性から、商品情報の出所であるメーカーや商社までもが利用を希望しているという。

ところで、インターネットの歴史を見てみると、商品比較のサイトは多くの場合、そこから一定の利幅が確保しやすいマーケットプレイスに変貌を遂げていくことが多い。その可能性について聞いてみたところ、トラスの久保田氏は truss がマーケットプレイスになるには、いくつかの課題があり、だいぶ先のことになるだろうと語った。

建設業の世界では資材に関する代金の支払が、施工後の施主への引き渡しをもとに実施される。メーカーと工務店の間には商社が居て、商社が工務店からの代金後払を許容しているのが実情だが、仮にマーケットプレイスを構築する場合、メーカーに後払を許容してもらうか工務店に前払を許容してもらう新たな商習慣の構築が必要になる。

また、材料や部品のマーケットプレイスとしては先行する、MonotaRO(東証:3064)や、800垓(1兆の800億倍)種ものパーツを扱うとされるミスミグループ(東証:9962)と異なり、建材は比較的大きな製品を施工現場のスケジュールに沿って、オンタイムで現場納品するロジスティクスが必要になる。これらのオペレーションを実現できているのは、現在のところ建材商社のみだ。

建材業界は保守的な産業であるため、デジタルトランスフォーメーションを図るには時間がかかりそうだが、一方で欧米に比べると、日本のそれは集約化や寡占化が進んでいるため、一部のメーカーに理解してもらうことができれば、そこから横並びにサービスを浸透させていくことは可能だろう、と久保田氏は語ってくれた。同社は今回の調達を通じて獲得した資金を使い、設計経験のある人材や建材メーカー業界に入っていける法人営業担当者を確保する考えだ。

久保田氏によれば、エンジェル投資に参画し経営顧問にも就任した守谷氏は以前ミスミに在籍していたとき、建材市場向けのマーケットプレイスのアイデアを思いついたことがあるそうだ。その際にはどのように作ればいいかわからず断念したそうだが、今回の出資参加や経営顧問への就任を通じて、かつての夢をトラスに託しているということだろう。

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