自動車産業は「ハード」から「サービス」へ ーー配車サービス「Lyft」の魅力は自動運転プラットフォーム

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2017.11.14

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<ピックアップ :  Alphabet is leading a $1 billion round in Lyft that values the company at $11 billion

Googleの親会社「 Alphabet 」が北米で配車サービスを提供する「 Lyft 」へ10億ドル投資ラウンドのリード投資を実施した。Lyftは通算5億回の配車を達成、2018年度までの黒字化を目指している。

AlphabetはLyftの競合「 Uber 」にも投資をしている。しかし、かつてAlphabet傘下の自動運転車開発企業「 Waymo 」に所属していたUberの自動運転技術担当者が、転職前に自動運転技術ドキュメントをコピーし盗んだ疑いで訴訟問題にまで発展し、関係は悪化した。一連の流れを見ると単にAlphabetがUberを見限り、Lyftへのサポートへ回ったに過ぎないと感じるかもしれない。

しかしLyftが持つ豊富な自動運転企業とのネットワーク網も投資を決めた一因だろう。

「自動運転プラットフォーム」のLyftへ

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Lyftは今回の投資によって大きく6つの自動運転企業とのパイプラインを持つことになった。簡単に6社を紹介したい。

  • Drive AI  : 2015年にスタンフォード大学の人工知能ラボにいた研究員によって創設された企業。ディープラーニングを基とした自動運転ソフトウェアを自家用車から公共交通機関の車両にまで用いようとしている。現在は各種データを収集するために10-12の全く異なる車種をサンフランシスコエリアで試験走行中。Lyftのサービスプラットフォームでは約10車がDrive AIのシステムを使った自動運転・配車仕様となっている。アジア地域ではUberの競合「 Grab 」と提携をしているため、北米ではLyft、シンガポールではGrabを通じた試験実走を実施。
  • Ford  : デトロイト地区を拠点に2025年度までに自動運転車をリリースできるように試験走行を重ねている。これまで数々の自動運転スタートアップへ投資してきた経歴を持つ。LIDARセンサーを開発する「 Velodyne 」、画像認識及び機械学習システムを開発する「 SAIPS 」、マシン・ビジョンを開発する「 Nirenberg Neuroscience 」、3Dマッピングを開発する「 Civil Maps 」が挙げられる。
  • GM  : 自動運転車を開発する「 Cruise 」を10億ドル超で買収。2017年にCruiseは「すでに量産体制が整っておりGMのVoltとBolt EV車種で量産化できる」と コメント 。自動運転技術を搭載するため同車種の40%に当たる部品を入れ替え、年間数十万大の量産を今後目指すとのこと。
  • Jaguar  : イギリス拠点の自動車メーカーは2,500万ドルの資金をLyftへ投資している。台数は明らかにされていないが、同社の自動運転車をLyftの配車プラットフォームでテスト走行させることが大きな投資の目的であった。
  • Waymo  : Alphabet傘下の自動運転車開発企業。最近ではミシガンでの試験走行に取り組み、過酷な環境(吹雪や凍結道路)でも安全運転ができるのか、レベルを上げた自動運転試験に着手。

一方のUberは2社の自動車メーカー企業としか提携をしていない。2016年に Volvo と提携し、約100台のVolvo車を通じて自動運転技術を磨いている。メルセデス・ベンツを所有する Daimler 社とも提携している。

筆者はサンフランシスコ滞在中に何度かUberの自動運転車を見たが、カリフォルニア州からの許可を待たずに公道走行をしたため、一時取りやめになっていた。コーポレートガバナンスの視点から、Uberの無頓著ぶりが公になった形だ。

自動運転関連の提携企業数を見てもLyftはUberの3倍を誇っており、企業の振る舞いというビジネススタンスの視点からも大手自動車メーカーや新興自動運転スタートアップからの評価が高いのは今やLyftと言えよう。

徐々に凋落する大手Uberの寡占体制

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Image by  5chw4r7z

北米の配車サービス勢力図が徐々に変わりつつある。 具体的な数値事例を3つ挙げよう

  • ハッシュタグ「#deleteUber」が拡散され、Uberを利用しないように呼びかけるキャンペーンが2017年1月に発生。同キャンペーンのおかげもあり、以前のLyft利用率は配車サービス利用人口の内13%であったが、19%まで上昇。
  • Uberは2017年第2及び3四半期の売上成長率は15%である一方、Lyftは33%を誇っている。
  • 市場シェア率において、Uberは2017年1月以前は84%であったが、9月には74%まで大幅減となった。Lyftは同期間において20%以下から22%まで微増させ、着実な成長を遂げている。

シリコンバレーでは熱烈なLyftファンが多い。筆者の友人は「Uberはドライバーへの配当が少なく、単なる「規模の経済」を優先する低価格戦略を採用。一方、Lyftはコンプライアンスを重視してUberより質の高いドライバーの採用と高い配当をリターンする高品質サービス戦略を採っているLyftの方がブランド面からも好き」と語っていた。

グローバル展開しているUberに未だ及ばないとはいえ、Lyftは根強いコアファンを囲い込んでいる印象だ。各数字からも、#deleteUberキャンペーン以降、Lyftのブランド戦略がユーザーからも自動運転企業からも支持されていると言えるだろう。

自動車市場は「ハード」から「サービス」へ

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Image by  Simon_sees

従来の自動車製造メーカーが配車サービスと提携を始めた流れにおいて、Fordを語るのがいいだろう。

Fordは通勤用小型バンを運用する「 Chariot 」を買収している。Chariotはクラウド投票によって票数の多い路線から開通される、クラウドを通じて地域ニーズを反映させた配車ネットワークを提供する。また、サンフランシスコエリアでは貸し出しバイクネットワーク「 GoBike 」を展開。

「製造」からシェアリング時代に沿った形で「サービス業」へシフトしているのがFordの掲げるスマートシティ構想であり、今後の配車サービスプラットフォームと自動車メーカーを繋ぐ重要なキーワードとなる。

Fordは新しい自動車を製造し続ける「ハードウェア」の企業ではなく、市場に出回った車を通じた「サービス」を提供する企業へと変貌を遂げていると言っていい。

また日本でも自動車の「サービス業化」が進む兆しが見え始めた。中国の大手配車サービス「 滴滴出行 」が日本のタクシー会社「 第一交通 」と提携。相乗りサービス(白タク事業)ではなく、あくまでも中国人観光客むけに第一交通タクシーを通じた運送サービスを提供すると宣言したことで、改めて日本の法律の壁は高いと感じた。

しかし、ようやく自動車製造で名を挙げた日本へ、自動車産業の「サービス化」の流れがやってきたとも感じている。

via Recode

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