世界最大のスタートアップ・カンファレンス「Web Summit」が開幕——今年の参加者はのべ6万人超、AI・ロボティクス・シンギュラリティなど各分野のリーダーがリスボンに集結

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2017.11.8

Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、WebSummit 2017 の取材の一部である。

WebSummit 2017 がリスボンで開幕した。今年もここに来られたことをうれしく思う。今年の来場者は昨年の5.1万人を上回り、6万人を超えるそうだ。文字通り世界最大のスタートアップ・カンファレンスとなった WebSummit はこの3日間、市内に4本しか走っていないリスボンの地下鉄に普段は起きないラッシュアワーを引き起こし、地元市民に不便を強いているかもしれない。

2010年にローンチした WebSummit は2015年までの5年間をダブリンで、そして、ポルトガル政府が毎年130万ユーロ(1.7億円相当)を WebSummit に支払う3年間の契約で、昨年からリスボンで開催されている。ニューオーリンズの Collision、バンガロールの Surge、香港の RISE など姉妹イベントの成長も好調で、このイベントを切り盛りする WebSummit のチームメンバーは160人にまで増え、今年にはリスボンにオフィスも開設した。

ちなみに、ポルトガルで買い物をしてレシートを見てみると、何を買っても軽減税率で13%か通常税率で23%が課税されている(生鮮食料品や日用必需品は8%)。WebSummit の参加者数6万人はのべ人数なので、3日間にわけて1日あたり平均2万人。この2万人が1日平均100ユーロを消費したとしたら、3日間で少なく見積もっても約78万ユーロ(約1億円)の税収入があることになり、単純計算でも出費した額の半分を政府はすでに回収できたことになる。

リスボンの起業家のグローバルコネクション率比較
Image credit: Startup Genome

WebSummit の一連のイベントを見てみると、スタートアップの活動がさほど盛んでない場所に、新たなエコシステムを作るという戦略が功を奏しているようだ。リスボンにしても、他のヨーロッパの都市に比べ、スタートアップの数が突出しているというわけではないし、香港も東京やシンガポールに比べ極めてスタートアップが多いわけでもない。

しかし、今年からリスボンをモニタリングし始めた Startup Genome によれば、リスボンの起業家がグローバルなコネクションを持っている比率は、ヨーロッパの平均に比べて約2倍、世界平均に比べ約3.5倍になっており、少なからず WebSummit はこのトレンドに大きく貢献しているようだ。2011〜2012年のヨーロッパ経済危機で高い失業率を経験した若者の中には、就職を嫌って起業家を目指す人が増えつつもある。

Ecosystem Summit で。James Stafford 氏(Event & Project Manager, WebSummit)と Anne Driscoll 氏(Collision)
Image credit: Masaru Ikeda

今回は WebSummit に先立ち、Ecosystem Summit、Corporate Summit、Innovation Summit など、ラウンドテーブルを中心とした3つのサブカンファレンスが開催された。Ecosystem Summit は文字通り世界中のエコシステムリーダーやコミュニティビルダーが集まり、Corporate Summit はオープンイノベーションをはじめとしたスタートアップと付き合いたい大企業の水先案内、イノベーションサミットはテックに近いアカデミアの人々が顔を揃える、といった具合だ。

筆者はしばしば、WebSummit や RISE にスピーカーとして参加しているのだが、今回は Ecosystem Summit でいくつかのラウンドテーブルのモデレータを担当させてもらった。昨年の WebSummit でも、前日に世界中から20人ほどのエコシステムリーダーが集まり、「WebSummit Global Rising Startup Ecosystem Roundtable」という集まりで、世界がつながることの意義と今後の課題について議論したのだが、Ecosystem Summit はそれがバージョンアップしたもので、世界中から約100人ほどのスピーカーが参加した。

偶然にも Ecosystem Summit で Startup Genome の CEO と会話する機会を得られたのだが、Startup Compass として生まれ、Startup Genome に名を変え、現在に至るまでの過程でピボットし、最近では地元のスタートアップ・エコシステムを成長させたい地域政府などと提携することで、起業やスタートアップに関わるベンチマークのためのメトリクスを提供する形をとっている模様。Startup Genome が毎年発表するエコシステム・ランキングに東京が含まれないのは、言語障壁が理由というわけではないようだ。

<関連記事>

Image credit: Masaru Ikeda

WebSummit 2017 Day 0 の夜には Opening Night イベントが開催された。初めて、奥さんと生まれたばかりの息子を連れて訪れたという WebSummit CEO Paddy Cosgrave 氏の開会の辞に続き、ポルトガルの詐欺防止 AI スタートアップ Feedzai の創業者 Nuno Sebastião 氏に紹介される形で、スペシャルゲストとして物理学者スティーブン・ホーキング氏のスピーチビデオが上映された。ホーキング氏は4月に北京で開かれた GMIC のキーノートにもビデオ出演したが、スタートアップ界隈でも AI にフォーカスした文脈が増えると、彼の言葉に耳を傾けようとする人が増えるようだ。

AI は人類最高の発明になるかもしれないし、最悪の脅威にもなるかもしれない。我々は AI の危険を認識し、それを特定し、ベストプラクティスと管理する方法を取り入れ、AI がもたらす結果に対して、十分な進歩でもって準備をする必要がある。(中略)

AI をもってすれば、ついに病気や貧困の根絶も期待できる。生活のあらゆる側面は変容するだろう。これからの世代は AI がもたらす機会だけでなく、その可能性を広げ、全人類にとってよりよい世界を創造できるレベルに達するべく、科学研究にコミットするという決意を持つべきだ。

ホーキング氏の言葉に、会場は大きな拍手で包まれた。

Opening Night 2017 は、ポルトガル首相の António Costa 氏、前国連事務総長の António Guterres 氏、リスボン市長の Fernando Medina 氏によって、開会の宣言がなされ終了した。Web Summit 2017 は10日(金)までリスボンで開催される。THE BRIDGE では Day 1 以降の情報も追ってお伝えする。

EU コミッショナー Margrethe Vestager 氏(右)にインタビューする、Recode の共同創業者兼編集長 Kara Swisher 氏(左)
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中央に開会宣言をする Paddy Cosgrave 氏(WebSummit 創業者兼 CEO)、そこから左へ António Costa 氏(ポルトガル首相)、Fernando Medina 氏(リスボン市長)
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