〝顔につけるIMAX〟を目指す、没入型映画鑑賞用ヘッドセット「Cinera」

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【編注】この記事は Elliott Zaagman 氏による寄稿である。氏は、トレーナー、コーチ、かつ変革管理マネジメントのコンサルタントであり、国際化する中国企業のサポートを専門としている。連絡を取りたい方は LinkedIn のプロフィールを参照するか、WeChat(微信)でユーザ名 ezaagman を友人に追加するとよい。


私はゲーム・オブ・スローンズの新シーズンをスマホやラップトップの画面で楽しんだが、似たような方も多いのではないだろうか。理由? もちろん便利だからだ。会議の合間にカフェで再生したり、1日の終わりにベッドで鑑賞したりできる。最高の視聴体験かというとそこまでではない。しかし我慢できる範囲内だ。

そこに変化をもたらそうとしている深圳のスタートアップがある。映画愛好者たちが集まって設立した企業だ。同社の Cinera はVRヘッドセットに似た外観だが、彼らの目の前で「VR」と呼ぼうものなら、即座に訂正されるだろう。VR はゲームに向いている。Cinera は映画向けだ。Cinera の設立者でCEOを務める Peter Lin 氏はこう説明する。

Cinera はパーソナルな映画体験をもたらします。

Lin 氏は、このヘッドセットを「顔につける IMAX」と表現する。彼によると、Cinera の視野角66度は IMAX の70度に迫る数字で、一般的な映画のスクリーンである54度をはるかに上回る。2.5kのスクリーンを2画面搭載しており、映画館のスクリーンよりも3倍鮮明な画像を楽しめるという。2D と 3D の両方に対応しており、映像の入力には、HDMI、USB、micro SD、または内蔵の Android システムを利用する。

Image credit: Cinera

製品のコンセプトはすでに口コミで広がっている。8月に終了した Kickstarter のクラウドファンディングキャンペーンは驚くほどの成功を収め、532人の支援者から25万米ドルの資金を集めた。当初は5万米ドルを目標としていたことから、予定の500%を達成した計算になる。

「第3の方法」を探して

Cinera の開発中、Peter Lin 氏が率いるチームはジレンマに陥ったという。この状況についてLin氏は次のように振り返る。

重いヘッドセットになってしまうと、ユーザの快適性が劣ります。しかし軽量化するならば、画質を損なうのです。

Cinera チームは妥協を良しとせず、ハンズフリーのアームを開発した。このアームにより、ユーザは重量感のあるヘッドセットを直接支えることなく映像を楽しむことができる。

Peter Lin 氏は言う。

2時間の映画を鑑賞するとしましょう。ヘッドセットの重さに関係なく、何かが頭に取り付けられているということは間違いなく不快です。

アームのおかげで、2つの問題を同時に解決できました。ヘッドセットの着脱が容易になるため、スマホをチェックしたり、飲み物を飲んだりといったことが簡単にできるのです。

Image credit: Cinera

経営学者らは、このような創造的なアプローチを「第3の発想法」と呼んでいる。価格か品質か、といった深みのない1か0かの思考を避け、全体的なユーザ体験を重視するものだ。

Peter Lin 氏は述べる。

GoPro のユーザとの関わり方を大いに参考にしてきました。

価格や品質で GoPro よりも優位なカメラもあります。そんな中で GoPro が成功を収めてきたのは、ユーザの文化と情熱を深く理解していたからなのです。映画愛好者向けという違いはあれど、Cinera も同じ方向を目指しています。

スタート、そしてクリティカルマスの突破

Kickstarter での Cinera のキャンペーンは大成功だったが、真の挑戦はこれからだ。エンターテイメント向けヘッドセットは世間の注目を集めているが、ヘビーユーザの支持を受けることのできた製品は限られている。Cinera がトレンドに乗るためには、熱心な映画ファンらのほか、資金的の余裕のある購買層と関係を育む必要があるだろう

Kickstarter の早期購入価格は449米ドルであったが、市販価格はその倍近くになると見られている。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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