ロシアの仮想通貨スタートアップZeus Exchange、〝中国テック〟を利用したブロックチェーンによる株式取引サービスを立ち上げへ

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Image credit: Zeus Exchange

仮想通貨を用いることで、世界中のどこにいても匿名かつ安全に株式購入を行うことが間もなく可能になるだろう。小規模投資家も、ほぼ手数料を掛けることなく小口の株式取引を行うことが可能になる。TechCrunch Shanghai に出展したロシアのスタートアップ Zeus Exchange は、シンガポールの NEM 基金会が開発した世界初のスマートアセットブロックチェーンを用いた株式取引を運用するため、シンガポールで登記を行い、キプロスでライセンスを取得した。キプロスを経由して世界中との取引を可能にする同フレームワークは、匿名で小口ということもあって、とりわけ中国で成果を上げることが期待できる。

中国は世界で唯一、個人投資家の数が機関投資家をはるかに上回る国であり、その取引量は同国7.6兆米ドル市場の80%を占めている。中国の個人投資家は世界で最も活発なトレーダーであり、過去の経営陣によって市場で行われてきた非倫理的操作を知っていることから、ファンドに対しては懐疑的である。

Zeusのシステムにおけるプロセスは幾分複雑なものとなっている。長期間にわたり一企業の株式を保有する機関投資家は、保有する株式を一定期間定額で効率的に貸し出すことができる。ブローカーがこの実株を用いて仮想資産を創り出し、NEM のブロックチェーン台帳システムとその仮想通貨 XEM(仮想通貨トップ10の一つ。将来的には他の仮想通貨も使用可能となり、仮想通貨間のトレードも取引可能となる見込み)を経由することで、ブローカーのクライアントがこれらアセットを購入できるようになる。この取引が2018年3月に全面的に実用化されれば、証券取引の分散化が効率的に進められるようになるだろう。

NEM でなければなりませんでした。アセットブロックチェーンを提供しているのはNEMだけですから。Ethereum についても検討していましたが、それでは不可能であることがわかりましたし、Bitcoin がハッキングされていたことも明らかでした。

ポートフォリオマネージャーの Olga Duka 氏はそう語り、実際に起きた Bitcoin 盗難について言及している。NEM のシステムで用いられるマルチシグネチャセキュリティであれば、このような盗難は起こり得なかったはずだ。

Image credit: Zeus Exchange

Zeus Exchange を用いるバイヤーは期間終了時に実際の株式資産を購入するか選択することができるが、その際には通常の株式購入時と同様の身元確認資料が必要となる。

株式取引のインターフェースとしてブロックチェーンを用いることで、様々な可能性が生まれ、それらは特に中国に適したものとなるだろう。ICO は禁止されているが、ブロックチェーンは概念上は受け入れられている。中国国民は簡単には海外投資を行うことができないが、キプロスにアカウントを開設することは可能だ。そうすれば、キプロスのブローカーがクライアントに代わり、世界中との取引を行うサブアカウントを開設することができる。

これが確実に合法的手段となるよう私たちは努力してきました。

共同設立者の Alexander Tsyhlin 氏はそう語った。

Zeus Exchange はライセンスに関する法的側面への対処に9ヶ月以上を費やした。そして、この仮想通貨と従来の資産のブリッジングを許可した最初の国がキプロスであった。Zeus Exchange は他の国もこれに続くと見込んでおり、次は Gibraltar が仮想通貨による取引を実現するフレームワークを認可しそうであるという。スイス、リトアニア、米国でも同構想が検討されている。

このシステムでは、ユーザは参入費用を低く抑えられ、またコストも最小限に抑えることができる。取引は10米ドル相当から始まり、実質的な費用はほとんど無いようなもの(NEM のブロックチェーンはマイニングではなくハーベスト型のものであり、手数料は2~10米セントに設定されている)。Zeus Exchange は、100回程度の取引についてはおよそ2米ドルの月額料金を検討している。最低100株の購入を必要とする非常に高額な取引もあるが、より多くの仮想通貨が市場に参入し流動性が増すにつれ、その半分量、さらには10分の1、さらには1株からの購入も可能となると Zeus は見込んでいる。

しかし、中国の小売業者は古風であり、モバイルあるいは他のトレーディングプラットフォーム上で低コストの取引を行うよりも、生身のブローカーにはるかに高い手数料を支払う方を好んでいる。このことから、まったく新しいコンセプトへ切り替えていくという情熱が欠けていることが見てとれる。しかしそれでも、最終的に当局によって禁止されることとなった最近の ICO 騒動からは、欲求があるだろうことが示唆されている。中国が仮想通貨と従来の資産のブリッジングを認可しないのであれば、この需要は中国国民が国外に持ち出すことのできる5万米ドル相当という年間限度額によって妨げられることになるだろう。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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