James Dyson Award 2017国内審査上位5作品が発表——今年のSXSWでも話題を集めたロボット義足「SuKnee(サニー)」が最優秀賞を獲得

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2017.12.11

James Dyson Award(JDA)は、個性ある掃除機や空気清浄機メーカーとして知られる Dyson が提携する James Dyson Foundation(JDF)が年に一度、世界23カ国で展開するアワードだ。問題発見と問題解決を革新的なアイデアで表現することをテーマとし、エンジニアリングを専攻する現役学生や卒業生を対象に実施している。国際最優秀賞受賞者には3万ポンド(約450万円)、受賞者を輩出した学部には5,000ポンド(約75万円)、国内最優秀賞受賞者には2,000ポンド(約30万円)が贈られる。

6日、都内で JDA 2017 の国内表彰式が行われ、国内上位5作品の作者が集まり、プロトタイプとともに作品が披露された。JDA 2017 では、デザインエンジニアの緒方壽人氏(takram)とフリージャーナリストの林信行氏が審査員を務めた。

以下に、国内上位5作品を紹介したい。

【国際TOP20/国内最優秀賞作品】SuKnee by Xiaojun Sun(孫小軍)氏、菅井文仁氏(東京大学大学院情報理工学研究科)、佐藤翔一氏(東京大学生産技術研究所研究員)

読者の中には、このチームが「BionicM」として、今年3月の SXSW で Interactive Innovation Awards の学生部門賞を受賞したことを記憶している人もいるだろう。

義足を利用する障害者の99%は(独自動力を持たない)パッシブな義足を装着しているが、「SuKnee(サニー)」は義足をロボット技術と融合し、装着者の歩行に合わせて制御を行うことで、より自然な動きができ疲れない義足を実現している。障害者のみならず、健常者向けのエンパワーメントデバイス、ファッション性の高い義足としての可能性も追求するという。

【国内準優秀賞作品】Digital Garden by Ben Berwick 氏(東京大学大学院工学研究科修了)

Ben Berwick 氏は出身地であるオーストラリアに帰国中とのことで授賞式への参加はならなかったが、窓に取り付け可能なソーラーパネル「Digital Garden」で準優秀賞を受賞した。都心には集合住宅が多くソーラーパネルを設置する余地がないことから、折り紙工学を応用し、太陽光が跳ね返るごとに発電できるしくみを考案した。

一般的なソーラーパネルと違い光を完全には遮断しないので、部屋の中に光を取り込みながら発電できるメリットがある。現時点では構想段階のようで、プロトタイプの完成が期待される作品だ。

【国際TOP20/国内審査3位作品】Cuboard by 寺嶋瑞仁氏、上脇優人氏、冨田青氏、Juan Padron 氏(長岡技術科学大学工学部電子情報工学課程 および 大学院工学研究科機会創造工学専攻、CuboRex 所属)

雪国の新潟にある長岡技術科学大学に通う寺嶋氏らは、積雪した状態で実質的に車以外の移動手段がなく、学生にはなかなか車が購入できないことを問題に提起。人が乗って移動でき、雪上を走行でき、一人でも持てる重量・サイズの電動クローラユニットを備えたスケートボード「Cuboard(キューボード)」を開発した。

インホイールモーターのコンセプトをクローラ機構に実装しており、また、クラッチやとトルクリミッタなどの機能も実装している。雪ゾリや手押し車などにも応用が可能とのことだ。

【国内審査4位作品】Telewheelchair by 橋爪智氏、高澤和希氏、鈴木一平氏(筑波大学デジタルネイチャー研究室)

Telewheelchair は、車椅子に 360度カメラ(リコー THETA)を備え、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着した操作者が車椅子を遠隔操作できるプラットフォームだ。高齢化社会を迎え介護者の人材不足が叫ばれる中、介護者が必ずしも車椅子につかなくても、遠隔で介護ができるしくみを実現する。

人間知能(VR による遠隔操作)にとどまらず、複数台車椅子の集中管理時に、人にとっての死角の補填や注意力分散を補うため、カメラの映像をもとに人工知能の支援で安全も確保する。人間検出(YOLO)、環境検出(SLAM)ができるのが特徴。

【国内審査5位作品】ReverseCAVE by 石井晃氏、鶴田真也氏、鈴木一平氏、中前秀太氏、皆川達也氏(筑波大学デジタルネイチャー研究室)

一般的なバーチャルリアリティ(VR)は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着した人だけが体験を楽しむことができ、周囲にいる人には何が起きているかわからない。近くに電話をしている人がいると、一方の声しか聞こえないために何が起きているのかわからず、周りの人にモヤモヤ感がたまるのと同じ効果で、VR においても HMD を装着していない周りの人にとってモヤモヤ感がたまるのだそう。

ReverseCAVE では蚊帳を使って半透明のスクリーンを作り、そこにプロジェクターを使って VR 映像を投影することで、周りの人も HMD 装着者と同じ体験をシェアできるようにする。SIGGRAPH Asia 2017 Bangkok に出展。


今回は、4位と5位の両方にメディアアーティストの落合陽一氏が筑波大学で主宰するデジタルネイチャー研究室から2つのプロジェクトが入賞することととなった。審査にあたった林信行氏は、例年と異なり社会問題と真面目に向き合った作品だけでなく、今年はエンターテイメント性のある作品も一部、入賞したことを指摘した。

来年以降も JDA は開催される予定だが、今後は大学の垣根を超えて革新的なイノベーションがその場で生まれるワークショップの開催など、さまざまな新しい提案をしていきたいとしている。JDA 2018 の募集テーマ、参加者条件はこれまでと同じで、2018年3月〜7月の間に募集を受け付ける予定だ。