7500万ダウンロードのフリマアプリLetgo、必要なのは「信頼できるコミュニティ」ーー北米フリマアプリ出品体験全録(前編)

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北米の 中古品流通市場規模は3,000億ドル以上に至る とも言われています。非常に大きな市場規模に発展しているのは言うまでもありません。

現地で古くから使われている中古品売買サービスは 「Craigslist(クレイグスリスト)」「eBay(イーベイ)」 です。 Craigslistの30日以内にサイト訪問者数は2017年春の時点で5,000万ユーザー を超え、 eBayのアクティブユーザー数は2017年の第3四半期で1.6億ユーザーに至っています 。しかし両サービスともモバイル対応が完全に出来ておらず、古めかしいサイトデザイン・UXを持ち続けたまま使われ続けている印象です。

Craigslist・eBayが寡占していた中古品流通・販売市場をディスラプトしようと狙うスタートアップは5年ほど前から登場し始め、今ではFacebookも参入しています。

筆者は長年在住していた北米から日本へ帰国・転居する際、ちょうど多数の売り出し品が出てきたので幾つかの中古品販売アプリを利用しました。そこで今回は体験後日談として考察を交え、主に各フリマサービスの特徴と、利用する際に気づいた点や注意点、市場ポテンシャルについての考えを共有したいと思います。

eBay : 10年前のUX。使い勝手は最悪

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冒頭で説明した大手中古品流通プラットフォームとしてすぐに思い浮かぶのがCraigslistかeBayでしょう。Craigslistではモバイルでの出品ができないこともあり、今回はeBayでの出品をまず決めました。

販売したのはスタートアップガジェット、ラップトップケース、鞄、靴、古くなったiPhoneとMacbook Proの6点。最終的に売れたのはガジェット、iPhoneの2点でした。

最初にモバイル出品をする際に意外と使いやすいと思いましたが、取引相手とのコミュニケーションや細かい設定で出品者を困らせる・戸惑わせるポイントが幾つもあり、使い勝手の悪さを感じました。

例えば送料負担の設定。モバイルでは配送タイプ(配送スピード)、発送する商品の重さなどの最低限の設定は簡単にできます。一方で、送料を出品者負担にするか購入者負担にするかの設定が非常に難しいです。

デフォルトでは出品者負担になっており、もし購入者負担にする場合、「ハンドリングコスト」の項目に発送料を入力する必要があります(もし発送料が$15程度ならば、$15以上のハンドリングコストを入力しておく必要があります)。

普通であればワンクリックでどちらの負担にするか選択できそうな所をワザワザわかりにくい表現で設定の難易度を上げているのです。

私の場合、$40程度で売れたガジェットに$15の配送料を自己負担しなければいけないことに後で気付き、購入者の方に謝罪をした上で合計$55ほどを送金してもらい事なきを得ました。

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支払い手段にも問題を感じました。大手決済プラットフォーム 「PayPal(ペイパル)」 と連携をしていますが、オークション形式で出品をした際、受送金の面は自動化されていないため、購入者はマニュアルでPaypal経由での送金をしなければなりません。もし送金の確認が期日までに出来なかった場合、送金の催促をするのは出品者側です。

他にもUXに課題点があります。オークション形式で出品する際には、eBay側からオススメのオークション開始価格が提示されます。オークション市場の平均売買価格が$40-50ほどのガジェットを出品した際は約$5ほどだったので、提案された$5で開始しました。

しかし最終的に落札されたのは$10前後。さすがに低すぎるので、オークションが決まった後でも出品者側からキャンセル権もあることから、謝罪メールと共に販売を丁重にお断りしました。もちろんそのあとは低評価をもらって出品者レートが下がる苦い経験もしましたが、この時にオークション利用の難しさや、提案機能が出品者にとってのデメリットになっていることに気付きました。

このようにeBayは中古品市場では大手ではありながらも、モバイル出品設定のプロセスに難があったり、前述しませんでしたが過去の売買情報の確認するのが難しかったりと、大きくUX面で課題を持っています。

逆に言えば上記で述べた課題点を解決しているのが、これから説明するスタートアップ達と言えるでしょう。

Letgo : 打倒Craigslist/eBay

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「Letgo(レットゴー)」 は後述するメルカリ同様にフリマアプリを展開しています。商品はオンライン上では売買できず、ユーザー同士で直接会って取引を行ってもらうサービス形態を採用しています。

9月に入って Letgoが1億ドルの資金調達を行ったというニュース が流れました。企業価値は10億ドルとの試算が出ているので、晴れてユニコーンクラブの仲間入りとなった形です。アプリダウンロード数は7500万を超え、数千万アクティブユーザーがおり、合計リスティング数は2億を超えていると報じられています。

筆者はガジェットやMacbook、生活品を含めて約20の出品を行いました。最も特徴的なのは写真撮影だけで一発出品ができるとても便利な点です。写真をアップロードをして投稿して、後から商品詳細や価格の調整ができるので、「とりあえず出品してみる」という手軽なサービス利用体験を得られます。

商品タイトルの自動提案も非常に便利です。投稿をした後、画像データを基に最適な商品タイトルを提案してくれるので、説明情報のインプットプロセスの簡略化が可能です。

冒頭で説明した通り、Letgoは当事者同士で直接会って現金手渡しでのやり取りを推奨しているので、出品をするためだけのプラットフォームという位置付けです。そのため「売買」ではなく「出品」を行うことにフォーカスしているからこそ生み出されたUXと言えるでしょう。

ユーザーから見れば出品の簡易性は魅力的です。スマホを片手にソファで横になりながらでも出品できる利便性がLetgoのスケールを支えていると思われます。

一方で単なるマッチングプラットフォームになっていることから、詐欺の温床になっているのも事実です。

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私の場合は、古くなったMacbook Pro2台を出品した際、すぐに購入希望者から連絡が来ました。2台とも別々の方から連絡が来ましたが語り口調は同じで「今週、子供の誕生パーティーがあってプレゼント用にMacbookを贈りたいと思っている。すぐに携帯番号を教えて!そこでチャットをしながら話そう」と語ります(上記画像写真、左側を参照)。

筆者がすぐに疑うべきでしたが、出品して1時間もしないうちに最も高価な出品物に対してリアクションが来たので飛びついてしまったのが運の尽きでした。詐欺師が携帯のSMSでコミュニケーションをしようとするのはLetgoのチャットでは怪しいやり取りは強制的に閉じられてしまうからです(上記画像写真、右側がチャットのやり取りを閉じられたもの)。筆者の場合は運悪くLetgoがチャットを閉じる前に携帯でのやり取りに移行してしまったので、コミュニケーションが終わらず、最終的に詐欺に引っかかってしまいました。

コミュニケーションのやり口は振り込め詐欺と一緒で、現在の梱包プロセスや郵便局でしっかりと速達タイプで配送したのか領収書の画像を随時送信するようにせがんできます。

さておき、チャットを通じた商品に関する問い合わせは出品から1週間以内で30-40件ほどはもらったのでマッチングの成功数では他社アプリより一歩抜きに出ていると言えるでしょう。しかしユーザーを信頼できるか判断できず不透明さはかなり高い印象です。

実際、売れたものは無料で出品した大量の洋服以外になくLetgoでの収益はゼロ。ユーザー数がたとえ多くても無料の品を求めている気のいい地元の人と会える機会を得られる「無料の出品物プラットフォーム」という印象が拭えません。

「マッチング速度は非常に早いがユーザーを信頼ができない」、「高級品は即リアクションが来るが詐欺師の温床」と感じたサービス上の汚点を、テクノロジーで今後どのように改善できるかがLetgoの課題点と言えるでしょう。

ちなみに詐欺事件が起こった後、カスタマーサポートセンターに問い合わせを行いましたが、無料アプリということもあり一切の責任を持てないと言われてしまいました。しかし、今後取引手数料として数%を課金して収益化を図るモデルへ移行することは想像ができるので、例えばバックグラウンドチェックにAIを積極的に用いてユーザー・コミュニティーの価値を上げたり、Airbnbのように補償金制度を敷いたりする対応をしてもらいたいと感じました。

(後半『「メルカリの安全性」は北米攻略の鍵ーー北米フリマアプリ出品体験全録(後編)』へつづく)

 

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