「メルカリの安全性」は北米攻略の鍵になるーー北米フリマアプリ出品体験全録(後編)

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2017.12.19

前編では大手中古取引サイトeBayと、同社に対抗する形で急成長を遂げているLetgoについて書きました。本稿でも引き続き筆者が体験したフリマアプリについての考察を続けたいと思います。

メルカリ : 手軽な出品プロセスから決済までもカバーする高い信頼性

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北米版のメルカリ

日本のスタートアップの中で、海外で最も活躍しているのが「 メルカリ 」でしょう。

Letgoと同じく、企業価値1,000億円を超えるユニコーン入りをしています。筆者は北米版メルカリも利用しました。出品数はLetgoと同じく約20を出品しました。

現在では出品プロセスがかなり簡略化され、さらに洗練・北米向けにローカライズされているようですが筆者が利用した際は日本版メルカリと同じプロセスでした。チャットの問い合わせ数はLetgoの30-40件と比べて多少劣りますが、合計20件ほど。

最も印象的だったのはティーン層からの問い合わせもあった点です。筆者の体験では、eBayは40-50代のジェネレーションX世代、Letgoは20-30代を中心としたミレニアルズ世代のユーザーを囲っている印象。メルカリもLetgoと同じくミレニアルズ世代を中心にリアクションがあると想定していましたが、10代を中心としたジェネレーションZ世代も多少なりとも囲い込めている点にユーザー層の厚みを感じました。

残念ながら50ドルを超える家電製品や生活品に対してのリアクションやリスト視聴数は低かったのですが、安価な品はよく売れる印象でした。実際30ドル程度で売ったマイケルジョーダンの靴は出品から30分も経たずに10代の男の子から問い合わせがあって購入してくれました。

北米版メルカリの最大の特徴は配送から受送金までを綺麗なシームレス体験として実現している点です。Letgoとは違い、マッチングだけでなく決済システムも備えているため安心感を持ちながら取引成立まで利用できます。

配送の際はプリンターで発送ラベルを印刷して適当な箱に商品を詰めて配達キャリアに持っていくだけ。その後は日本版と同じく購入者からの満足度レートの入力を待って、自動送金されるのを待つシンプルな仕組みです。これは直接ユーザーと会うLetgoにはないフローです。

メルカリのサービス安全性やユーザー層の厚み、決済インフラを持っている点は競合と比べても大きな優位性なると感じ、今後日本のUXから北米版にローカライズしたUXへとブラッシュアップさせれば十分に戦っていけると感じました。欲を言えば高級品も買ってくれるユーザーが集まれば市場では強固なポジションを築けるのではないでしょうか。

Facebookマーケットプレイス : 中級品市場が魅力的

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日本では後発ローンチでしたが、 北米ではFacebookが2016年からフリマサービス を立ち上げています。サービスの謳い文句はLetgoと同じく直接会って売買するものなので、決済まではカバーされていません。

同プラットフォームで出品をしたのは10件程度。100ドルを超えるスマホや家電が1週間以内に2件ほど売れたので、中級品がよく売れるイメージです。また、人種のるつぼであるサンフランシスコでサービスを利用していたこともあり、メキシコ系やアジア系の人からの問い合わせが多く、印象としては地元のレストランや工場で働いている低所得者層の移民ユーザーが多い印象でした。

バックグラウンドチェックに関して、Facebookプロフィールがあるのでユーザーの顔や投稿状況を自分で確認できるのが良い点です。また、問い合わせから実際に会うまでのコンバージョン率はFacebookが他社サービスと比べて最も高く、韓国人留学生からメキシコ人、中国系の人までは幅広い層の3人のユーザーと近所で会いました。

正直、直接会う際に恐い人が待っているのではないのかと緊張したので、この点はLetgoを利用する際と同じように不安を持ちます。ですが、3人中2人が購入をしてくれて、サービス別の合計売買額で比較するとFacebookが一番高く収益を稼げたので、筆者にとって利用価値が一番高かったサービスとなりました。

Facebookのやり口として、市場が十分に成長してから後追いする形でサービスを立ち上げる点にスタートアップ精神を感じませんが、コンバージョン率の高さで言えば最も評価できるサービスでしょう。今後配送から決済プロセスまでをカバーすればメルカリの大きな脅威となりそうです。

OfferUp/5miles : 「ユニコーン」とは呼べないほど閑古鳥が鳴いている

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「OfferUp(オファーアップ)」はLetgoやメルカリ同様にユニコーンの仲間入りを果たしています。しかし実際に使ってみるとユーザーからの問い合わせ・リアクションがほとんどありません。ユニコーン企業としてのユーザー数の多さやリアクションの即効性はあまり感じませんでした。

また、ローカル特化のアプリ「5miles(ファイブマイルズ)」はユーザーの囲い込みに失敗しているのか、一切の問い合わせがありませんでした。

「詐欺」と「時間ロス」対策に新たな商機あり

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Image by  Matthias Ripp

どのサービスも安心して売買できるコミュニティーを作ろうとしていると思います。

しかし今回紹介したサービスの中で、eBayとメルカリを除いた全てのサービスが直接会って売買する形式です。「マッチングをするだけでその後はユーザー自身の責任になります」と標語し、詐欺のリスクや強盗に会う責任を一切背負わないビジネスモデルには、ユーザー視点で見ると特に北米では危険性があると感じます。一方、直接ユーザー同士で会って売買するモデルは企業側からすると運用コストが低いため、これから市場縮小することは考え難いでしょう。

この点、メルカリのサービス形態は北米主要フリマアプリの中でも抜きん出ていると考えます。メルカリの安全に売買できる姿勢はとても評価できるでしょうし、7500万もダウンロード数を持つLetgoですらユーザーのロイヤリティー・信頼度は薄いと感じるわけですから、メルカリが強いコミュニティーを囲っていければ大きな競合優位性になるでしょう。

このようなサービスインフラをしっかりと備えたサービスが生き残っていくとフリマアプリを体験しながら強く感じました。

加えて、LetgoやFacebookのように直接会う作業は非常に無駄で、心理的な障壁も高いことにも気付かされます。筆者の場合、Facebookマーケットプレイスで約束を取り交わして1時間待って連絡が来て、最終的にはアポイントをすっぽかされたりしました。

誰かが代理者として購入者候補に会って、交渉から決済までをこなしてくれる代行サービスが登場してきてもおかしくないと思います。

筆者の感覚であれば、もし代行交渉サービスがあれば8ドル程度は支払えたかなと思います。購入者に気に入ってもらうために商品を綺麗に見せるための手入れをして、約束をすっぽかされるかもしれないリスクを抱えながら片道30分ほどかけて交渉場所に行くような、多大な時間と労力を失うリスクを回避できるのならば十分10ドル前後は支払えます。

例えばLetgoでは2億品がリスティングされており、仮に実際にアポを取って会う確率が0.5%だとしても1,000万件の取引が発生します。1取引あたり3ドルの代行手数料をもらうモデルで展開すれば3000万ドルの収益を得られる計算になります。

類似サービスである配送代行スタートアップ「 Shyp(シップ) 」はeBayと連携して、販売者が箱詰めする必要なく、そのまま配達員に商品を渡すだけで発送できるサービスを提供しています。小さな商品発送でも約10ドルは費用がかかるので、よほど忙しくない限り費用対効果が薄く、筆者は使いませんでした。しかし、配送代行市場が大きく成長した事実もあることから代行交渉サービスにも成長の余地があると感じますし、スタートアップが登場してきても理にかなっていると考えます。

日本で言えば「 アッテ 」のようなサービスの登場を皮切りに、直接会うタイプのサービスモデルが浸透してきているので、日本での代行交渉サービスの市場ポテンシャルもあるのではないでしょうか。

直接会うことに対しての不安を払拭するための解決策としては実店舗も考えられるでしょう。

例えば女性服を扱う 「threadUP(スレッドアップ)」実店舗展開を行っており 、もしリアル店舗を利用して商品の受け渡しができれば非常にユーザーとしては嬉しいです。もしLetgoのような直接会うモデルが実店舗を持ち始めたら強いユニークポイントとなるかもしれません。

このように、オンライン上で売買を完結させるeBayやメルカリのモデルと、Letgoに代表される直接会うマッチングモデルの2種類にビジネスモデルは分かれますが、筆者の体験上メルカリのモデルの方が秀でていると感じました。逆に、直接会うフリマモデル拡大に伴い、代行交渉サービスの登場が期待されるでしょう。

フリマアプリ体験中、詐欺に遭って約20万円相当の愛機を2台盗られ帰国した筆者ですが、この記事を通して北米のフリマ市場を知っていただき、今後の新たなビジネス機会模索の参考になれば幸いです。

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