「海運3.0」ーー5,000億ドル規模の海運業を変える人工衛星スタートアップたち

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2017.12.28

Image by  Randen Pederson

世界の海運市場規模は約55兆円(5,000億ドル) 。日本の物流市場が25兆円なので、約2倍の大きさを誇ります。

従来の海運業では電話やファックス、メールを使ったマニュアルベースのやり取りが常識でした。例えば、航行スピードが予想よりも遅れた場合、港で待機する貨物運び入れ業者や陸運業者に担当者が別々にマニュアルで連絡を入れて貨物運搬スケジュールを再調整する必要があったわけです。

そこで、旧来の慣習に囚われていた海運業界をデジタルデータ化をしようと考え市場参入しようとしたのが「 Flexport 」です。

これまでは貨物運搬業務を執り仕切る仲介業者(フレイト・フォワーダー)が各船舶業者との連絡・進捗情報を集約してマニュアルで行っていましたが、「Flexport」はシンプルに既存マニュアルプロセスをデジタル化しました。

ステークホルダー内で航行データの進捗をウェブ上で管理することができ、貨物の配送をオンラインで簡単にオーダーできるようにし、仮に輸送に問題が起きれば代替運搬手段と到着時間の更新データを随時共有します。

「Flexport」のサービスを簡単に言えば、郵便局で当たり前に手紙や封筒を出して、簡易書留で郵便物をトラッキングできるような仕組みを海運市場でも可能にしたわけです。

また「Flexport」はサービス運用を続けていくことで航行データの蓄積を可能にしています。そこから過去の海運データから貨物の到着予想時間の予想であったり、最速・最安値の運搬手段の提案までもやってくれるのです。

このようにして、市場の透明性の担保とビックデータ予測の2つを両立させることに成功したのが「Flexport」でした。

大手ECプラットフォームのアマゾンも「Flexport」の投資家リストに名を揃えています。同社は空運用の「 Amazon Prime Air 」を備えていますが海運には手を出していませんので、「Flexport」を通じて大型荷物のルート最適化を目指しているのでしょう。

では、ここまでを「海運1.0」から「海運2.0」への軌跡だとしましょう。すると今、起こりつつある 「海運3.0」では、海運市場に人工衛星の側面から参入を決めた企業が増え、新たな市場フェーズへ向かっていると言えます。今回は3社ほど簡単に紹介します。

Image by  Atmospheric Infrared Sounder

「 Spire 」:小型衛星ネットワークを構築し、船舶状況をモニタリング

海運業者に向けて人工衛星を通じて得た航行情報を提供するサービスを展開しています。 現在40機の小型衛星を運用しており、30万の船舶をモニタリングしています 。業者はAPIを利用することで運行船舶のリアルタイムデータへのアクセスが可能となります。また、過去の航行ルート、天候などの各属性データに対して機会学習を用いた解析を行い、最適な航行ルートの予測データを提供します。

海運業者はリアルタイムデータだけでなく、最適ルートの予測データまでも手にすることができます。また、大型衛星は打ち上げ・運用に数億円以上のコストがかかりますが、小型衛星網を作ることで低コストかつ豊富なモニタリングデータを獲得することに成功しています。

「 Satellogic」 :1m範囲の画像解像度技術を持った小型衛星

地表面1mまで画像キャプションすることができる高解像度レーダーを搭載した小型衛星を打ち上げています。 すでに6機の衛星を打ち上げて運用しています。 天候状況や細かい地表情報をモニタリングし、各種イベントデータの解析を行います。

「ICEYE」 :高解像度イメージレーダーを開発

小型衛星に搭載するSAR(合成開口レーダー)を開発しています。同レーダーは可視光・赤外線画像レーダーと比べて、太陽光の明るさや天候に左右されずに地表データを入手することができます。

主に災害・環境状況データを政府や大手民間リサーチ企業にデータを卸しているようです。例えば台風や悪天候の中で航行している船舶状況の把握に役立つかもしれません。

海運業へ参入する宇宙開発市場のプレーヤーたち

Image by  Alexander Savin

前述3つのスタートアップを見ると高コストな大型衛星ではなく小型衛星を多く打ち上げ、船舶の進路状況をリアルタイムで把握するデータサービスが目立ちます。 小型衛星は2025年までに3,600機が打ち上げられ、2015年には220億ドルの市場規模(過去10年比で76%の市場成長率)に至るそうです

一方で小型衛星の打ち上げ数が増え、企業が手軽に高質な画像解析データへアクセスできることは良い傾向かもしれませんが、衛星の運用面が複雑化してくるでしょう。この点、「 LeoLabs 」のように低起動を回る人工衛星が隕石や他の人工衛星との衝突を防ぐための衛星運用ネットワーク技術を提供するスタートアップも多く登場してくることが予想されます。

古い慣習に縛られていた海運業界は人工衛星を通じたデータ解析・ルート予測にまで進化を遂げています。陸運のように小型配達のトラッキングはできませんが、大型貨物を中心とした物流市場が、宇宙開発やAI画像解析企業によってディスラプトが起こっている状況が伺えます。市場規模や参入障壁も全く違ったものになってくるかもしれません。

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